【帰国子女の高校受験⑥】帰国生入試がない都道府県ではどうする? ――「帰国生枠がない=高校受験できない」ではありません。帰国子女が確認したい現実的な選択肢
ここまでの記事では、
帰国生の高校受験制度
「特別措置」と「特別入学枠」の違い
都道府県による制度の違い
出願資格
実際の試験内容
について解説してきました。
ここまで読んで、
「では、自分の住む地域に帰国生の特別枠がなかったらどうすればいいの?」
と疑問に思った方もいるかもしれません。
また、
「志望している高校に帰国生枠がない場合は、もう受験できないのでしょうか?」
と心配になる方もいるでしょう。
結論から言えば、
「帰国生専用の選抜がない」ことと、「帰国生がその高校を受験できない」ことは同じではありません。
帰国生向けの独立した選抜がなくても、
一般選抜を利用する
出願資格を教育委員会に確認する
学校ごとの対応を確認する
国立高校を検討する
私立高校の帰国生入試を検討する
など、複数のルートがあります。
今回は、帰国生専用の枠が見つからない場合に、何を確認し、どのように受験ルートを組み立てればよいのかを整理します。
1.まず「帰国生枠がない=受験できない」と考えない
帰国生の高校受験で、最初に避けたいのが、
「帰国生入試がないから、この地域では高校受験できない」
という思い込みです。
公立高校の場合、そもそもすべての都道府県・すべての高校が同じ形式の帰国生選抜を実施しているわけではありません。
一方で、帰国生向けの独立した選抜がなくても、一般選抜の出願資格を満たしていれば一般入試を受験できる場合があります。
また、海外から帰国してそのまま受験する場合には、
「そもそも一般選抜の出願資格を満たしているのか」
という別の確認が必要になることもあります。
したがって、
「帰国生枠があるか?」
だけを見るのではなく、
「帰国生としての特別選抜がなくても、一般選抜で受験できるか?」
まで確認することが重要です。
2.第1の選択肢――一般選抜を利用する
帰国生専用の選抜がない場合、まず確認したいのが、
一般選抜による受験
です。
たとえば、帰国生向けの特別枠がない高校であっても、一般選抜の出願資格を満たしていれば、一般の受験生と同じ選抜を受けるという方法があります。
この場合、
・国語
・数学
・英語
・理科
・社会
など、地域の一般入試で必要とされる教科を学習する必要があります。
ここで注意したいのは、
「帰国生なのだから、英語ができれば大丈夫」
とは限らないことです。
帰国生向けの選抜がない場合、基本的には一般選抜の試験内容に合わせる必要があります。
つまり、
帰国生入試がない
↓
一般選抜を利用する
↓
一般選抜で必要な教科・検査を確認する
↓
その試験に合わせて学習する
という流れになります。
3.一般選抜を受ける場合に注意したい「出願資格」
ただし、海外から帰国する生徒の場合、
一般選抜を受けたいと思っても、出願資格の確認が必要になることがあります。
例えば愛知県では、県外・海外から公立高校へ出願する場合の案内が用意されています。
愛知県教育委員会は、海外日本人学校や海外現地校からの出願について、それぞれ必要な手続きを案内しています。 (pref.aichi.jp)
大阪府でも、大阪府外から公立高校へ出願する場合には「応募資格審査」が必要となるケースがあります。 (pref.osaka.lg.jp)
つまり、
「帰国生枠がないから一般入試を受けよう」
と決めるだけではなく、
「自分の学校歴・居住地・帰国時期で一般選抜の出願資格があるのか」
を確認する必要があります。
4.海外の現地校に通っていた場合は、さらに早めの確認を
特に注意したいのが、
海外の現地校に通っていた生徒
です。
日本人学校に在籍していた場合と比べて、
・学校制度
・学年
・修了資格
・成績資料
・卒業証明
などが日本と異なる場合があります。
そのため、
「中学3年生相当まで海外の現地校に通っていました」
という場合でも、
そのまま日本の公立高校の出願資格を満たすのか
を事前に確認したほうが安心です。
例えば埼玉県では、海外の中学校を卒業して帰国し、帰国生徒特別選抜を希望する場合、まず公立高校への出願資格を確認したうえで、帰国生徒特別選抜の受検資格を確認する手続きが案内されています。 (pref.saitama.lg.jp)
ここからも、
「帰国生かどうか」と「高校への出願資格があるか」は別々に確認する必要がある
ことが分かります。
5.第2の選択肢――教育委員会に相談する
帰国生の受験で、もっと活用してほしいのが、
教育委員会への相談
です。
特に、
・海外の現地校に通っている
・日本の中学校には在籍していない
・帰国時期が遅い
・保護者だけ先に帰国している
・日本と海外を何度も行き来している
・海外で中学校を卒業した
・県外・海外から出願する
といったケースでは、一般的な説明だけでは判断できないことがあります。
このような場合、
自分の状況を具体的に伝えて確認する
ことが重要です。
6.問い合わせるときは「帰国子女です」だけでは足りない
教育委員会や学校に相談するとき、
「帰国子女ですが、受験できますか?」
だけでは、回答する側も判断しにくい場合があります。
できれば、次の情報を整理してから問い合わせましょう。
① 現在住んでいる国
例:
「現在アメリカに住んでいます。」
② 海外在住期間
「2022年4月から2026年10月まで在住予定です。」
③ 帰国予定日
「2026年11月に帰国予定です。」
④ 学校歴
「現地校の8~9年生に在籍しています。」
⑤ 日本での学校歴
「小学校6年生までは日本の公立小学校に在籍していました。」
⑥ 保護者の居住予定
「帰国後は大阪府内に居住する予定です。」
⑦ 希望する高校
「○○高校を志望しています。」
このように情報を整理すると、
「どの制度を利用できるのか」
を具体的に確認しやすくなります。
7.「学校に直接相談する」ことも大切
公立高校の場合は教育委員会の制度確認が基本ですが、
志望校そのものに確認すること
も重要です。
特に、
・帰国生徒の受験実績
・海外からの出願
・面接
・学校生活への適応
・日本語・英語の学習支援
・入学後のサポート
などは、学校ごとに確認したい部分です。
制度上受験できるかどうかと、
「その学校が帰国生をどのように受け入れているか」
は別の問題だからです。
8.「受験できる」と「入学後に安心できる」は別
ここは意外と重要です。
例えば、
一般選抜で受験できる
ことが分かったとしても、
入学後に、
日本語での授業についていけるか
日本の定期テストに対応できるか
課題の量に対応できるか
日本の学校生活に適応できるか
英語力を生かせる環境があるか
などは別に考える必要があります。
帰国生の場合、
「入試に合格すること」だけで高校選びを終わらせない
ことも大切です。
特に海外生活が長かった生徒の場合は、
入学後の学習環境や学校生活
まで確認しておくと安心です。
9.第3の選択肢――国立高校を検討する
公立高校の帰国生枠が見つからない場合、
国立大学附属高校
も選択肢になります。
代表的な例として、筑波大学附属高等学校には、
「海外帰国枠」があります。
令和9年度についても、一般の募集要項とは別に「海外帰国枠」の募集要項が公開されています。
さらに、海外帰国枠での出願には、
事前の出願資格確認
が必要とされています。 (high-s.tsukuba.ac.jp)
つまり、
「公立高校の帰国生枠が見つからない」
からといって、
「帰国生としての特別な受験ルートがなくなった」
とは限りません。
国立高校まで視野を広げることで、別の選択肢が見つかる場合があります。
10.ただし「国立なら全国どこからでも簡単に受けられる」わけではない
ここも注意が必要です。
国立高校にも、
出願資格
居住条件
海外在住期間
帰国時期
学校歴
事前資格確認
などがあります。
例えば筑波大学附属高等学校の海外帰国枠でも、出願資格の事前確認が必要です。 (high-s.tsukuba.ac.jp)
したがって、
「国立高校だから帰国生なら誰でも受験できる」
というわけではありません。
むしろ、
国立・私立も含めて、学校ごとに条件を確認する
という姿勢が必要です。
11.第4の選択肢――私立高校の帰国生入試
帰国生にとって、非常に重要なのが、
私立高校
です。
公立高校と違い、私立高校では学校ごとに特色ある入試制度が設定されている場合があります。
例えば、
帰国生入試
帰国生専用日程
英語重視型
英語資格利用型
3教科型
面接重視型
海外在住経験を考慮した選抜
などがあります。
そのため、
「住んでいる都道府県の公立高校に帰国枠がない」
という場合でも、
私立高校まで視野を広げる
ことで選択肢が増える可能性があります。
12.私立高校のメリットは「日程の違い」にもある
私立高校を検討するメリットの一つが、公立高校とは異なる入試日程
です。
地域によって異なりますが、私立高校では公立高校とは別の日程で入試を行う学校があります。
そのため、
公立高校の帰国生選抜
+
私立高校の帰国生入試
という組み合わせを検討できる場合があります。
ただし、
すべての私立高校が帰国生入試を実施しているわけではありません。
また、
・帰国時期
・海外在住期間
・英語資格
・学校成績
・試験科目
・面接
・保護者の居住地
など、条件も学校ごとに異なります。
したがって、私立高校を探す場合も、
「帰国生入試があるか」だけでなく「自分が受験できるか」
を確認することが重要です。
13.「帰国生枠がない地域」だからこそ、受験ルートを複線化する
帰国生の高校受験では、
1校だけにすべてを賭ける
という考え方はできるだけ避けたいところです。
例えば、
第1候補
公立高校・帰国生選抜
第2候補
公立高校・一般選抜
第3候補
私立高校・帰国生入試
第4候補
国立高校・海外帰国枠
というように、
複数の受験ルート
を考えておく方法があります。
もちろん、すべてを実際に受験する必要はありません。
重要なのは、
「もしこの制度が利用できなかったらどうするか」
をあらかじめ考えておくことです。
14.「帰国生選抜」と「一般選抜」を同時に考える
例えば、
「第一志望の公立高校には帰国生選抜がある」
というケースでも、
一般選抜をどうするか
を考えておくと安心です。
実際、埼玉県の令和9年度帰国生徒特別選抜では、帰国生徒特別選抜から一般募集への志願先変更は可能とされています。一方、一般募集から帰国生徒特別選抜への志願先変更はできません。 (pref.saitama.lg.jp)
このように、
制度同士の関係
まで確認する必要があります。
「帰国枠があるから、一般入試は考えなくていい」
ではなく、
帰国生選抜を軸にしながら、一般選抜も含めて受験戦略を考える
ことが重要です。
15.「帰国生枠がない学校」を志望する場合
では、
「どうしても帰国生枠のない高校に行きたい」
という場合はどうでしょうか。
この場合は、基本的に、
その学校の一般選抜で受験できるか
を確認します。
そして、受験できるのであれば、
一般入試に必要な学力をつける
ことになります。
例えば5教科型の入試なら、
国語
数学
英語
理科
社会
を準備します。
ここで帰国生にとって重要なのが、
「日本の中学校で学んでいない範囲」
を確認することです。
16.帰国生の一般入試対策では「学習範囲のズレ」を確認する
海外の学校では、日本とカリキュラムが異なる場合があります。
そのため、
「英語は得意だけれど、日本の数学は未習範囲がある」
「社会の日本史・地理をほとんど学んでいない」
「国語の漢字や文法に不安がある」
といったケースがあります。
この場合、
「偏差値が低いから苦手」
と考える必要はありません。
単純に、
「日本の高校入試に必要な範囲をまだ学習していない」
だけかもしれません。
そこで、帰国後の最初の段階では、
① 日本の中学校範囲を確認
↓
② 未習単元を発見
↓
③ 入試頻出分野から優先的に学習
↓
④ 過去問で形式に慣れる
という流れがおすすめです。
17.英語が得意な帰国生ほど「他教科の時間配分」に注意
帰国生によくあるのが、
英語がかなり得意
というケースです。
例えば、
英語:90点
数学:55点
国語:50点
理科:45点
社会:40点
という状態だったとします。
この場合、
「英語をさらに90→100点にする」
よりも、
数学・国語・理科・社会の底上げ
のほうが合格可能性を高める場合があります。
もちろん具体的な戦略は志望校の配点や選抜方法によります。
しかし、
「得意だから勉強する」だけでなく、「合否に必要だから勉強する」
という視点を持つことが重要です。
これは帰国生に限らず、高校受験全般に通じる考え方です。
18.「学校・教育委員会・中学校」の3方向から確認する
帰国生の受験では、情報源を一つに絞らないことも大切です。
教育委員会
→ 出願資格・制度・必要書類
志望校
→ 学校ごとの募集・検査・入学後の環境
中学校
→ 調査書・学校歴・出願手続き
というように、それぞれ役割が違います。
特に海外から帰国する場合は、
「誰に何を聞けばいいのか」
を整理しておくとスムーズです。
19.相談するときの質問リスト
実際に問い合わせる際には、次の質問を準備しておくとよいでしょう。
教育委員会へ
海外の学校を卒業した場合、出願資格はありますか?
一般選抜に出願できますか?
帰国生特別選抜の対象になりますか?
海外在住期間の証明には何が必要ですか?
帰国日はどのように確認しますか?
事前の資格審査は必要ですか?
志望校へ
海外から帰国した生徒の受験実績はありますか?
一般選抜で受験できますか?
面接はありますか?
入学後に日本語・学習面のサポートはありますか?
海外での学校成績はどのように扱われますか?
中学校へ
調査書はどのように作成されますか?
海外の学校の成績資料は必要ですか?
出願書類は何が必要ですか?
帰国後の在籍期間が短い場合、学校からどのような書類を出してもらえますか?
20.「制度がない」ではなく「別のルートを探す」
ここまでを整理すると、帰国生の高校受験は次のように考えられます。
パターン①
公立高校に帰国生選抜がある
→ 帰国生選抜を検討
パターン②
公立高校に帰国生選抜がない
→ 一般選抜を検討
パターン③
公立高校の出願資格が複雑
→ 教育委員会に資格確認
パターン④
国立高校に帰国枠がある
→ 国立高校の出願資格を確認
パターン⑤
私立高校に帰国生入試がある
→ 私立の制度・日程・条件を確認
このように、
「帰国生枠がない=終わり」ではありません。
むしろ、
「自分に利用できるルートはどれか」
を探すことが大切です。
21.受験ルートを決める前に「3つの条件」を整理する
帰国生のご家庭には、次の3つを一度整理することをおすすめします。
条件① 帰国時期
中2で帰国
中3春に帰国
中3夏に帰国
中3秋に帰国
中3冬に帰国
条件② 学校歴
日本の公立中学校
日本人学校
海外現地校
インターナショナルスクール
条件③ 志望地域
公立高校
国立高校
私立高校
この3つが分かると、
「どの制度を調べるべきか」
がかなり明確になります。
22.特に「帰国時期が遅い場合」は早めに動く
中3の秋以降に帰国する予定なら、
「帰国してから高校を探す」
という考え方はおすすめできません。
理由は、
出願資格の確認
必要書類の準備
学校への問い合わせ
志望校決定
入試科目の確認
出願
を短期間で進める必要があるからです。
特に海外現地校から帰国する場合は、
学校関係の書類を準備する時間
も考えておく必要があります。
帰国が遅いほど、
制度確認を前倒しする
ことが重要になります。
23.帰国生の受験は「一本道」にしない
高校受験では、
「この学校に行きたい」
という第一志望を持つことはもちろん大切です。
しかし帰国生の場合、
制度上の条件
という別の要素があります。
そのため、
第一志望
↓
もし帰国生枠が使えなかったら?
↓
一般選抜は?
↓
私立は?
↓
国立は?
というように、
複数のルートを持っておく
ことが安心につながります。
これは「弱気になる」ということではありません。
むしろ、
自分の選択肢を増やしておくための準備
です。
24.今回のまとめ
今回のポイントをまとめます。
POINT 1
帰国生枠がない=高校受験できない、ではない。
一般選抜で受験できる可能性があります。
POINT 2
一般選抜を利用する場合も、出願資格を確認する。
海外の学校歴や居住地によって、事前確認が必要になる場合があります。
POINT 3
教育委員会に相談する。
特に海外現地校・県外・海外からの出願など、特殊なケースでは早めの確認が重要です。
POINT 4
国立・私立も選択肢に入れる。
例えば筑波大学附属高校では令和9年度も海外帰国枠が設けられ、出願資格の事前確認が必要とされています。 (high-s.tsukuba.ac.jp)
POINT 5
受験ルートは一つに絞りすぎない。
公立帰国生選抜・公立一般選抜・国立・私立などを比較し、自分の条件に合うルートを探しましょう。
次回は「国立大学附属高校の帰国枠」を詳しく解説します
第6回では、
「公立高校に帰国生枠がない場合、どんな選択肢があるのか」
を整理しました。
次回、第7回では、その中でも特に気になる方が多い、
「国立大学附属高校の帰国枠という選択肢」
について詳しく解説します。
例えば、
筑波大学附属高等学校
その他の国立大学附属高校
公立高校との違い
出願資格
帰国生枠の考え方
事前の資格確認
試験内容
国立附属高校を選ぶ際の注意点
などを整理していきます。
国立大学附属高校の帰国枠は、「全国の帰国生が誰でも受験できる共通制度」ではなく、学校ごとに制度が設定されています。
だからこそ、次回は具体的な学校の募集要項を確認しながら、
「どんな生徒に向いている選択肢なのか」
まで考えていきます。
【重要】本記事の内容について
本記事で紹介している制度・出願資格・学校・試験内容などは、帰国生の高校受験制度を理解するための具体例です。
帰国生向けの制度は、都道府県・学校・学科によって異なり、年度によって変更される場合があります。
また、「帰国生選抜がない」という場合でも、一般選抜の出願資格や県外・海外からの出願手続きについて、別途確認が必要になることがあります。
そのため、本記事の内容だけで受験資格を判断することは避けてください。
実際に受験を検討する際には、
受験年度の最新の募集要項
都道府県教育委員会の公式情報
志望校の公式募集要項
必要に応じて在籍中学校や教育委員会への確認
を必ず行ってください。
特に、
海外在住期間・帰国日・学校歴・居住地・保護者の状況・出願時期
などによって扱いが変わる場合があります。
帰国生の高校受験では、「受験勉強を始めること」と同じくらい、「自分がどの制度を利用できるのかを確認すること」が大切です。