観測史上、最大級の変動。2026年度中学入試「サンデーショック」の仕組みと歩き方。
こんにちは。神奈川で塾経営に携わりつつ、オンラインで個別指導を行っているヒロユキです。
受験業界には、まるで周期的に訪れる天体ショーのように、決まった年にだけ話題になる言葉があります。それが「サンデーショック」です。
昨年度(2025年入試)は2月2日が日曜日で、一部の学校が動く「プチ」なものでしたが、今年度、つまり2026年度入試は様子が違います。カレンダーをご覧いただくと分かりますが、2026年2月1日は、日曜日。
これこそが、7年に一度(※)訪れる「本家」のサンデーショックです。 (※厳密には6年、5年、6年、11年のサイクルですが、おおむね6〜7年に一度と認識されています)
僕が大手塾で最上位クラスを担当していた頃も、この「本家」の年は、保護者説明会の資料が分厚くなり、教室の空気も独特の緊張感を帯びたものでした。併願パターンという名のパズルが、根本から組み替えを迫られるからです。
しかし、毎度のことながら、まずは冷静に「仕組み」を理解することが大切です。「ショック」という言葉に、必要以上に振り回される必要はありません。
なぜ「日曜日」が「ショック」なのか(原理)
この現象の原理は、非常にシンプルです。
一部のミッションスクール(特にプロテスタント系の学校)は、日曜日を「礼拝の日」として大切にしています。そのため、伝統的に2月1日が入試日であっても、その日が日曜日に重なった場合、試験日を翌日の2月2日(月)にずらす、というルールが発動します。
これが、すべての始まりです。
2026年度に観測される「巨大なドミノ倒し」(分析)
たった1日ずれるだけ。そう思うかもしれません。 しかし、中学受験、特に最上位層の併願戦略は、この「1日」のズレによって、根底から覆ります。
例えば、女子最上位層。 例年であれば、2月1日は「桜蔭」か「女子学院(JG)」のどちらかを選ぶ、という究極の選択を迫られます。試験日が重なっているからです。
ところが、今年度(2026年)は違います。 女子学院さんは、例年通りであれば2月1日入試ですが、この日が日曜日のため、入試日を2月2日(月)に移動します。(※正式な発表は各学校の募集要項を必ずご確認ください)
すると、どうなるか。 「2月1日 桜蔭 → 2月2日 女子学院」 という、普段ならあり得ない「最難関校の連続受験」が可能になるわけです。
これは、最上位層だけの話ではありません。 女子学院さんという巨大な惑星の軌道が1日ずれることで、その引力に引かれ、2月2日や2月3日に試験を行っていた他の学校(衛星)も、多大な影響を受けます。
2月2日の変動: 例年2月2日に入試を行っていた学校(例えば豊島岡女子さんの1回目など)は、移動してきた女子学院さんと、真っ向から競合することになります。
玉突き現象: 女子学院さんを志望していた層が、2月1日の受験先として、本来なら併願しなかった学校(桜蔭さんや、他の2/1校)に流入する可能性も出てきます。
これは女子だけの話ではなく、男子校や共学校でも、2月1日が日曜日のために日程を動かす学校(例えば、立教池袋さんなど)が存在し、それらが連鎖的に併願地図全体を塗り替えていくのです。
まさに、巨大なドミノ倒しの最初の一枚が倒れる瞬間。それが2026年2月1日なのです。
我々の「実行可能」な対策(プロセス)
さて、この数年に一度の「お祭り」あるいは「大嵐」を、我々はどう乗り切るべきでしょうか。 やるべきことは、実はいつもと同じです。ただ、その「精度」をいつも以上に高める必要があります。
1. 事実の「確定」作業 これが最優先です。噂や去年の情報に頼らず、志望する可能性のあるすべての学校の公式サイトを訪問し、2026年度の「確定した入試日程」を自分の目で確認してください。そして、それを一覧表やカレンダーに、手で書き写すことをお勧めします。視覚化することで、思考は整理されます。
2. 併願パターンの「再シミュレーション」 書き出した日程を見ながら、A案、B案、C案…と、複数の併願パターンを紙の上で組み立てます。 「もし、2/1に桜蔭を受けて、2/2にJGを受けるとしたら、体力的にどうか?」「2/2にJGと豊島岡が重なるなら、我が家はどちらを優先すべきか?」 このシミュレーションの「解像度」が、合否を分けると言っても過言ではありません。
3. 「なぜ、その学校か」という原理への回帰 シミュレーションの結果、必ず「どちらも受けたいのに、受けられない」あるいは「例年と違うから、どちらを優先すべきか分からない」という壁にぶつかります。
その時こそ、ご家庭で**「志望校選びの原理原則」**に立ち返る時です。 なぜ、その学校に行かせたい(行きたい)のか。校風か、進学実績か、あるいは通学の利便性か。 この「ご家庭にとっての優先順位」を、もう一度、冷静に対話して確認すること。日程の混乱は、そのための良い機会を与えてくれた、と考えることもできます。
結局のところ、日程がどう変わろうと、試験当日に合格最低点を1点でも超える、というゲームのルールは変わりません。そして、そのために必要な日々の学習「プロセス」も、何も変わらないのです。
サンデーショックは、災害ではありません。カレンダーの巡り合わせによって発生する、予測可能な「現象」です。
遠い未来、AIが完璧な併願戦略と、当日の体調管理まで含めた最適解を提案してくれる日が来るかもしれません。しかし、そのAIに「本当に、このパターンで後悔はありませんね?」と最終確認されたとき、迷いなく「はい」と答えるためには、やはりご家庭での「対話」と「覚悟」が必要なのでしょう。
まずは目の前の過去問を、一枚ずつ、淡々と解き進めること。それが、どんな「ショック」にも動じない、一番の備えだと僕は思いますよ。