英単語帳使ってはいけない

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2025/3/23

英語の勉強というと、とりあえず単語や熟語の意味を結構な数単語帳や熟語で覚えながら文法もおさらいし、読解演習もするというのが相場でしょう。私も遠い昔受験生だった時にそこから始めました。なかなか覚えられなくてイライラしたり、覚えたのに、言われたように訳しているのに、内容が全然頭に入ってこない。当然点数も低迷している。或いは学校の定期テストでは何とか対応できるけど模試や過去問になると全然対応できない。なぜでしょう?それはネイティブが言語習得する際に自然にやっている最も大切なことが全くやれていない上に、ネイティブが言語習得する際に絶対にやらない無駄なこと或いは有害なことをやってはいけないことを勘違いしてやってしまっているからなのです。また、単語帳や熟語帳、文法書に本質的な致命的な欠陥があるからです。その秘訣とは何か?はるか昔若い時に、私も或る優秀な先生に教わる機会を得て、それまでの悩みが嘘みたいに一気に解消し、語学力が爆上がりした経験があります。低迷は自分のせいではなかったんだとはっきり自覚できました。長い年月を経て、今は私が先生として縁のある生徒たちに同じような体験を味わってもらうようになりました。皆さんもこの秘密に触れてみませんか?


必須動詞300を覚えさえすればよく、覚えない限り何もできない


単語帳って何だろう。単語帳をつくろうとするとき、全国の大学の入試問題を過去10年分解析して一般的に繰り返しよく出てくるものをまずは選びだすことから始めるでしょう。それを出題頻度順に並べたうえで動詞、名詞、形容詞、副詞といった具合に分類する。更には、それぞれを必須動詞と上級動詞、必須名詞と上級名詞、必須形容詞と上級形容詞、必須副詞と上級副詞といった具合により細かく分類する。それに予備校講師や出版社の担当者が日本語訳をつけていく。とまあ、大体こういうことでしょう。


私の目から見ると、この過程には三つの大きな問題点があります。これらの問題点故に単語帳で「英語を勉強」してはいけないと私は言っているのです。

(1)   例えば早稲田大学を志望している人の場合、全国の大学の入試問題に一般的に取り上げられている単語を勉強しても、出題される単語を端的に勉強していることにはならないでしょう。一般的に勉強するのではなく、的を絞って勉強すべきです。志望校の入試問題を10年分直接自分の目で確かめておく方がはるかに合理的です。

(2)   予備校講師や出版社の単語帳制作担当者は問題をつくっている大学の先生のような英語力を持っていません。例えば京都大学の場合、受験業界で「優秀」といわれている腕に覚えのある受験生が競い合うわけですが、その入試で受験生のではなく合格者の平均点が8割9割ではなく5割前後に毎年なっている。このことを見さえすれば、予備校の先生の実力などどの程度なのか容易に推察されるでしょう。実際、各予備校から毎年発表される「模範」解答例を私が採点すると大体6割でしかない。これは、上の認識を明確に裏付けています。彼らの英語力は正直言って、私が教えている受験生の英語力よりも劣っています。そんな人たちが訳例をつけた単語帳で勉強しても、もちろんほぼ全員が単語帳で英語を勉強するという現状がある限りは相対的合格ということもあるにはあるのだけど、その人に大学入試の本質が見えているはずがありません。そうなると受験勉強の際に必要以上の苦労を強要されることになる。現状は、そのような無駄な苦痛に耐え抜いた比較的忍耐力のある人が京大に合格しているだけなのです。彼らは決して英語が精確に読めているわけではありません。

(3)   単語帳には動詞と名詞、形容詞、副詞が横一線に同等に扱われているきらいがあります。ところが実際は以下のような偏りを認識する必要があるのです。すなわち、名詞は、抽象名詞以外は英語そのままで読むべきであり、日本語訳をつける必要がありません。またある意味、日本語訳をつけてはいけないのです。抽象名詞は、「もともと文」ということですから、動詞や形容詞を中心に必ず元の文に戻して理解すべきですから、これも名詞としての訳をつけるべきではありません。副詞は多くが形容詞の変化したものですから、それ自体の訳例を覚える必要がありません。形容詞さえ覚えていたら大丈夫なのですから。更にはこの形容詞も、もともとは名詞や動詞ですから、この名詞や動詞から加工されて出てくる単語生成の過程の認識こそが重要です。形容詞としての訳例を覚えるだけで満足する人がいるけど、それは大変危険なのです。…このように考えると、結局、覚えなければならないのは、また覚えさえすればいいのはまさに、動詞だけということになるのです。このような動詞、名詞、形容詞、副詞の間の序列が全く意識されていないのが単語帳ですから、単語帳を使ってはいけないと言われるのです。


私は、必須動詞300を、一般的に出回っている訳例を捨てて、大学入試問題で用いられている把握法と同じ形で正しく詳しく深く理解しさえすれば、上級動詞を中心に出してくる早稲田大学など一部の大学を除いて、東大や京大、阪大、同志社大学など、大方の大学の入試問題に十分に対応できることを確認しています。また、これらの大学入試問題では、必須動詞300を、一般的に出回っている訳例を捨てて、大学入試問題で用いられている把握法と同じ形で正しく詳しく深く理解するのでない限り決してその問題の本質は見抜けないと断言しているのです。


単語帳の訳例はどれくらい間違えているのでしょうか。それこそほとんどすべての単語に関して逐一詳しくそれを指摘できますが、今は一つだけ代表的な例を以下に示します。


「engage」は、受験生の中には「従事する」と覚えて済ましている人がいます。その間違いを受けて単語帳では「従事させる」と提示しています。ところが、受験生の間違いを訂正するつもりで提示されたこの訳例が二重三重に間違えているのです。例えば、「She is engaged in apparel business.」(彼女はアパレル業に従事している)において、「従事している」と訳しているのは実は「is engaged」ではないのです。それは「in」なのです。前置詞なのに他動詞の訳をするのと多くの人が考えることでしょうが、これは事実です。これは辞書にも一般的に「従事のin」として記載されています。前置詞は主に他動詞として機能するのであり、前置詞句を構成して副詞句をつくるのは全体の5パーセントもありません。時、所、程度をあらわすときに限定されるとちゃんとした文法書にも明記されています。


よく、


「She is engaged 〈in apparel business〉.」

    S   V     M


などと書く教師がいますが、これは完全に間違えています。私はこの間違いを始めた人の固有名詞すら知っていますし、その人に直接英語を習っていました。でも、間違いは間違いなのです。正しくは、


「She (is engaged) in apparel business.」

  S                Vt           O


と考えるべきなのです。この「in」は「apparel business」についているのではなく、「is engaged」についているのです。そして「is engaged in」において中核は「is engaged」ではなく「in」なのです。「is engaged」は副詞化して他動詞的前置詞「in」を修飾しているのです。通常は無視して訳さないのですが、あえて訳すなら「もっぱら」とか「他をなげうって」となります。


ところが、入試ではこの「is engaged in」が「従事する」の意味で出ることがありません。例えば、「She is engaged in learning English.」(彼女は今ちょうど英語の習得に専念しているところだ)という形で出題されるのです。「in」が「従事する」と訳されるのは後ろに業種が来る時です。今は動名詞句「learning English」が来ている。これはいったい何なのでしょうか。


実は、中学の時に皆習って知っている現在進行形は「She is learning English.」だけではないのです。「She is in learning English.」もまた現在進行形のもうひとつの形なのです。現在進行形を「している最中」と訳すことがあることを念頭に置くとこの「in」は十分に納得できるはずです。更には、「She is …… learning English.」や「She is …… in learning English.」と「……」が入っても基本の意味に変更はありません。これも現在進行形なのです。ですから例えば、「She is busy in learning English.」を「彼女は英語習得に忙しい」と訳すのは完全な誤訳なのです。正しくは「彼女は今(忙しそうに)英語習得に専念している最中です」です。これは現在進行形なのです。


ですから、これは問題としてもよく取り上げられる話なのですが、「She is busy in learning English.」=「She is busy learning English.」なのです。「in」は入っていても入っていなくても同じ意味になるのです。なぜだろうと不思議に思ってはいませんでしたか?その明確な理由が今ここで解明されました。


「She is engaged in learning English.」もですから、実は、現在進行形だったのです。ただ、だからと言って「She is engaged learning English.」はさすがの私も目撃したことがないので使用することはありません。ですが、ここである重要な法則が抽出されていることにはちゃんと気づく必要があります。すなわち「She is …… in ~ing ……」となっていたら「……」の部分に何が入っていてもすべて、「もっぱら~している最中です」と訳せる同義文になるという法則です。すなわち、


「She is busy in learning English.」

「She is engaged in learning English.」

「She is committed in learning English.」

「She is involved in learning English.」


これらはすべて同義なのです。そしていずれも最近10年間の大学入試に頻出しているのです。この認識が何よりも大切なのです。そして単語帳で勉強しているとこの認識を妨害されてしまうのです。この「専念する」は、大学入試の実態に合わせて次のように拡大表記することもできます。


「She is busy in learning English.」

「She is engaged in learning English.」

「She is committed in learning English.」

「She is involved in learning English.」

「She is devoted to learning English.」

「She is dedicated to learning English.」


このように「engage」は正しく詳しく深く理解しておく必要があるのです。この話を聞いて、「engage」だけでこれだけの厚みがあるなら、それが300になったら、たとえ300と比較的少数に限定されていても、それでもものすごい時間と労力になるのでは、と考える人もいるでしょう。ところがよく見てください。「engage」を正しく詳しく深く理解する場合、「commit」や「involve」、「devote」、「dedicate」まで正しく詳しく深く理解することになっていませんか?例文によって正しく詳しく深く理解しているので、これらの動詞と共に用いられる名詞や形容詞、副詞とのコロケーションまで習得できています。つまり、絶対に間違った使用法に陥ることがない上に、いったんは捨てたはずの名詞や形容詞、副詞の正しく詳しく深い習得までできています。これは時間と労力の大きな節約になるのではないでしょうか。


必須動詞300とは言いますが、動詞は動詞型で分類すると実際は29種類しかないことが分かっています。動詞型は提示された文の形を見れば分かる。ということは、この29動詞型を習得すれば、初めて見る単語も、文の形を読み取りさえすれできればその意味が分かるということになるのです。単語には実は意味などなく、文の形に意味があるということです。ですから、必須動詞300の意味を覚えるのではなく、大学入試問題で用いられている把握法と同じ形で正しく詳しく深く理解すると私は表現するのです。


単語帳で意味を覚えていくことがいかに危険なことか、これで皆さんも十分に理解していただけるのではないでしょうか。


ところで、このような単語帳にも唯一取り上げるべき利点があります。すなわち、入試に出てくる単語が頻度順にリストアップされている点です。これだけは大いに利用価値があります。単語帳は必動300をリストアップしてくれています。このリストアップが有効であることは私が実際に入試問題を詳しく見て確認済みです。この必動300を先ずは、上記のように勧めておきながらいかにも逆説的に聞こえるかもしれませんが、発音アクセントと綴りに焦点を絞ってマスターしてください。これなしで正しく詳しく深く理解しようとしても本当は意味がないからです。逆にこれを先にやってから正しく詳しく深い認識の獲得に向かうと、能率が何十倍にも上がります。また短期間で発音アクセントと綴りをマスターした必須動詞は、必須動詞ですから英語の授業で取り扱われる教材に毎回登場してきます。登場してくるたびに発音アクセントと綴りが一瞬で想起される単語は登場してきたその場で、その瞬間に即してある程度は習得できます。必動300の発音アクセントと綴りをマスターしておくことで英語の勉強がすべて自動的に必動300習得の側面を帯びてくることになるのです。


どうですか?単語帳を英語学習に使用してはいけないということや、必須動詞300に焦点を絞って正しく詳しく深く習得する必要があるということが、十分に分かっていただけましたか?


興味がわいてきたら、是非私の門をたたいてください。

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