【高2生必見】来年の共通テストは覚悟が必要!!

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2024/1/15

■2025年1月に実施される共通テストは警戒が必要

2024年の共通テストは、直前期には易化の予想もありましたが、受験を終えた受験生たちの多くは「難化したどころじゃないぞコレ」という感想が大半でした。確かに、本当に難化していなくても、受験生は本番というプレッシャーの中で初見の問題を解くので、実際よりも難しく感じてしまうのは事実です。しかし、今年度はどうやらそれだけではなかったようです。


今回は、2024年とそれ以前の共通テストのデータを振り返りながら、来年(2025年)に向けた対策のポイントについて解説していきます。


■来年受験するみなさんに重要なお知らせ


これまで通りの対策だけでは全く通用しなくなります。


出題される単語数について

来年度は指導要領改訂後、初の試験となります。指導要領の改訂で最も影響の大きな部分、それは目標とする単語数です。従来の指導要領では中学校1200語、高校1800語の計3000語が目標とされていました。しかし、小学校でも正式科目となり、改定後の指導要領では小学校600語~700語、中学校1600語~1800語、高校1800語~2500語で、合計4000語~5000語が目標となりました。つまり、出題される可能性のある英単語が1000~2000単語増えることになります。

「でも小学校で正式科目になったってことは、小学校で習うような簡単な単語が増えるだけでしょ?」

そう思った人は、長い説明ですが、もう一度読んでみてください。高校でも最大2500単語までに増加しています。ということは高校生レベルの単語でも700単語は増えるのです。わかりやすく言えば、今市販されている多くの単語集が約1.5倍近い分厚さになるということです。


出題形式について

すでに公開されている試作問題を見てみましょう。2つの大問があります。

第A問

本文に使用されている単語数は1328語でした。高校生の平均的なWPM(1分に読める単語数)が75であることを考えると全文を読むだけでも約17分かかる計算になります。内容面で見ても、まず5人の意見をそれぞれ読み、その後に追加で文章とグラフの読み取りがあります。英文を読むだけでなく、自分の意見を構成する力が問われます。この出題形式は、実際に一部の総合型選抜で課される英語プレゼンや、英作文でもよくある意見の組み立て順序に基づいていることからも、英語を発信する力を問われていることが分かります。

※今年の第4問は、現状の問題形式を維持しつつも、この形式にかなり近いものでした。

第B問

こちらは自分が書いたエッセイについて先生からのコメントをもとに修正する問題です。英作文の授業ではよく見かける光景ですが、従来の共通テスト対策ではなかった形式です。大A問と同様に、英語での発信力が求められます。個人的に難しいと感じるのは、本当の英作文指導であれば、自由に修正が可能ですが、正しい内容を選択肢から選ぶという点です。そもそも本当に自分が書いた文章ではないので、前後の流れや言いたいこと等もわからない状態です。つまり、文章全体の論理展開を追う力がなければ対応は難しい問題です。


■これまでの共通テストを振り返ってみる

最もわかりやすい部分で単語数だけを見てみましょう。参考データとして先ほどご紹介した高校生の平均的な英文読解速度75WPMで読んだ場合、問題と選択肢を読むだけで要する時間も記載しておきます。

※WPMは英文を読む速さの目安としての数字であり実際の読解力の厳密な指標となるものではありません。

  • 【2021年実施】総単語数5495words(73分)平均点58.80
  • 【2022年実施】総単語数6066words(81分)平均点61.80
  • 【2023年実施】総単語数6127words(82分)平均点53.81
  • 【2024年実施】総単語数6338words(85分)平均点未発表

言うまでもありませんが試験時間は80分です。しかも、繰り返しになりますが、上記の数字は問題と選択肢を読むのにかかる時間のみです。解答を考える時間は含まれていません。ちなみに約20年前の2003年は3115wordsでした。また、共通テストでは当初から平均点を50点にすることが目標とされています。センター試験が60%(200点満点中120点)であったことからも、センター試験よりも難しいのは仕方がないと言えそうです。

あの有名なTOEICのリーディングパートは解答時間が75分で単語数は約6000語、全問解答できる速度の目安は150WPMと言われています。共通テストは全問解答せざるを得ない試験であることを考えると大学受験に求める水準として正しいのかとさえ疑ってしまいそうです。



■今から取り組むべき3つのポイント

①単語力を強化する

新指導要領に対応している単語集が今後どんどん出版されていくことでしょう。しかし、そのような単語集の発売を待っていては間に合わなくなってしまいます。「学校の勉強は受験勉強じゃないから」「教科書なんて意味がない」という意見もありますが、教科書に掲載されている単語がすべて答えられない状態では共通テストに対応できるわけがありません。まずは学校の教科書に出てくる単語をしっかりと覚えて、可能であれば単語集で知らない語句を補うようにしましょう。(科学的根拠に基づいた単語の覚え方については別の記事で紹介予定です。)

②読解速度を上げる

これは今でも十分すぎるほどに言われていることですが、これについても誤解が多いようです。長文をたくさん読めば読解速度が上がるわけではありません。ましてや速読テクニックというのがないとは言いませんが、翻訳や試験問題作成、解説の執筆などを手掛け、英語を仕事とする私でさえ受験に対応できる速読テクニックは知りません。ただ、間違いなく言えるのは、確かな語彙力と文法力をもって英文を正確に読める能力が必須であるということです。

③問題を解く技術を身につける

設問で何を問われているのかを迅速かつ正確にとらえて、それらを本文から見つけ出す能力は必須条件です。設問と選択肢にはそれぞれのキーワードがあります。まずキーワードを的確に見つけて、読むべき情報を絞って考えないことには、本文を漠然と読み直さないといけなくなります。共通テストは時間との闘いです。ただでさえ読むのに時間のかかる本文を何度も読み直す余裕はありません。本文を読む技術だけでなく、設問を読む技術も忘れてはいけない部分です。


■最後に(個人的な感想ですが)

もともとは英語が苦手で、大学で英語を専攻したわけでもなければ留学経験があるわけでもない私ですが、今では英語が好きです。そして英語を使って仕事をしたり、生徒さんたちに教えたりしています。こんな立場からすると「英語の文章が読めるようになれば問題だって解けるようになる!大丈夫!」というべきなのだろうと思いますが、実際はそうも言ってられなくなってきています。近年の共通テスト英語のリーディングは、英文読解問題というよりも英語情報処理問題ではないかとさえ思います。

英語教育界において、問題を先読みし本文を飛ばし読みすることは好ましくないこととされる場面が非常に多いです。私自身も同意します。しかし、共通テストに限定して言えば、可能な限り本文読まないで解くことも戦略の一つとして有効なのではないかと思います。一部の授業では、こういった解法も紹介はしています。これまでは「こういう解き方もあるよ」という程度でしたが、もしかすると「これが解き方だよ」に変わっていくかもしれません。ただ、この解き方は実際に有効な場面も多いのですが、前提条件として語彙力と文法力は必須事項です。

英語を教える身としては非常に葛藤のある部分ですが、英語力という理想よりも共通テスト通過のためだけの技術と割り切ってもよいのかと思い始めています。本文を読んでみてもどこか不自然で、その原因が設問のために用意された英文だからというのは明らかでしょう。それだけではありません。本文と選択肢で言い換えられた表現を見つけるというのは鉄則ですが、(昨年の第6問Bのように)言いかえが適切には思えないケースも増えてきています。同じく問題作成者として、受験生への配慮や意図というものがあってそうなるのだと理解はできるのですが、賛同はできない状態です。そんな中でも受験生たちは挑戦せざるを得ないので「問題作成者の意図」を裏読みして単語探しゲームのように解いていく方がむしろ正攻法なのではないかと思わずにはいられません。自分の中の葛藤は残りますが、今年の受験生たちにはこういった解き方も知っておいて欲しいです。

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