【心が不安定な中学生の保護者の皆さまへ】
2025/6/6
今、ちょっと心が不安定なお子さんへ、そっと寄り添ってほしい理由
新学年が始まり、少しずつ新しい環境にも慣れてきたこの時期。中学生のお子さんたちの中には、なんとなく元気がなかったり、感情が不安定になったり、やる気がないように見える子が増えてきます。これは決して珍しいことではありません。
思春期を迎えるこの時期は、心も体も大きく変化する真っ只中。ホルモンバランスの変化によって、心と体のバランスがうまく取れず、本人自身も「どうしてこんな気持ちになるのか分からない」と戸惑っていることが多いのです。
ある女の子のエピソード
私が以前受け持っていた生徒さんにも、まさにそんな時期を経験した子がいました。その子は、小学校低学年のころから私の塾に通ってくれていて、いつも明るく陽気で、教室のムードメーカーのような存在でした。冗談を言ってはみんなを笑わせてくれる、素直で元気な女の子でした。
ところが、中学生になってしばらくすると、少しずつ様子が変わっていきました。授業中にウトウトしてしまったり、突然家族や友達の悪口を言い出したり。さらには、ふとした瞬間に涙が止まらなくなってしまうこともありました。ある日、「なんでか分からないけどイライラする!」と大声で泣き出してしまったこともあります。
ここで大切なのは、眠いのもやる気がないからではなく、ホルモンバランスの変化による身体の影響であるということです。本人も心も体も調整が難しい時期なのだと理解してあげることが必要です。
彼女は仲の良いAちゃんと二人で授業を受けていたのですが、Aちゃんも彼女の変化に戸惑っているようでしたので、私は双方のお母さんにも相談のうえ、グループクラスから個別指導に変更してもらいました。
個別授業に変わってからも状況はすぐには変わりませんでしたが、眠くて集中できないときは5分だけ休憩するなど、彼女の気持ちを最優先にしながら過ごすように心がけました。また、愚痴を言いたいときはじっくり聞いてあげました。ただ、ご両親については、「ご両親がどれだけあなたのことを大切に思っているか、愛しているか」ということだけは伝え続けました。
そうしているうちに、少しずつ彼女の心は落ち着きを取り戻し、また以前のような明るく前向きな女の子に戻っていったのです。本人の希望もあり、再び二人クラスに戻りました(もちろんAちゃんも喜んでいました)。
今では「いや〜あのとき反抗期やばかったよね!」なんて、彼女と笑いながら話すこともあるくらいです。あのとき、無理に元気づけようとしたり、正そうとせず、ただそばにいてよかったな…と心から思います。
大人にできることは「寄り添う」ことだけ
お子さんが急にイライラしたり、理由もなく涙を流したりすると、親としてはとても心配になりますよね。「どうしてこんな態度をとるの?」と感じることもあるかもしれません。
でも、そんなときこそ焦らず、「大丈夫、今はそういう時期」と信じて、そっと寄り添ってあげてください。叱ったり、問い詰めたりするのではなく、余計な口出しをせず、ただそばで話を聞いてあげる——それだけで、お子さんは「自分を受け入れてもらえている」と感じ、安心するものです。
この時期を乗り越えた先に、きっとまた一回り成長したお子さんの姿が見られるはずです。長い人生の中の、ほんの短い通過点。どうか、見えない成長を信じて、あたたかく見守ってあげてくださいね。
「反抗」は、安心しているからこそ出てくるもの
塾で子どもたちと関わっていると、本当にいろいろな親子の姿を見かけます。その中で強く感じるのは、どんなときでもおうちの方が「わが子の気持ち」にちゃんと目を向けているご家庭ほど、子どもたちは安心して自分を出せている、ということ。
安心しているからこそ、時には甘えや反発、わけの分からないイライラとして表に出てくることもあります。でも、それは心がちゃんと動いている証であり、信頼のある関係の中だからこそできることなのだと思います。
すぐに状況がよくならなくても、大丈夫。心にしっかりと愛のまなざしが注がれていれば、子どもは自分のペースでちゃんと前に進んでいきます。あたたかく見守ることで、子どもは自分で「立ち直る力」を育てていくのだと、日々感じています。
いま、揺れているその心も、やがてちゃんと落ち着く場所を見つけていきます。「ありがとう」「あのとき見守ってくれてうれしかった」——そんな言葉をきっと、いつかお子さんがそう感じてくれる日が来るはずです。
だからこそ、どうか今日も、静かに、あたたかく、寄り添ってあげてくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。