適性検査の算数対策|特殊算より「割合×資料」で点を取れ

適性検査の算数対策として、中学受験の特殊算をひと通り仕込んでいるご家庭は少なくありません。ところが全国の公立中高一貫校の適性検査を大問単位で数えてみると、つるかめ算や旅人算がそのままの顔で出てくる問題は、ほんの一握りでした。
武器庫は満杯なのに、戦場が違う。適性検査で算数の点が伸びない子の多くは、能力が足りないのではなく、準備している武器の種類がずれています。今回は、全国の適性検査を1問ずつ記録して見えてきた「本当に出ているもの」と、そこから逆算した戦術をお話しします。
適性検査の算数は何が出ているのか(全国421大問を数えた結果)
素材にしたのは、みくに出版の『栄冠2020年度受検用 公立中高一貫校 適性検査問題集 全国版』です。2019年度に実施された私立3校・公立約130校の問題が収録されています。共通問題の重複を除くと421大問。これを1問ずつ、分野・単元・題材・解答形式・難度に分けて記録しました。
421大問のうち、算数を含む大問は177。全体の42%です。この177大問を単元で数えると、上位はこう並びます。
割合・比:78大問(44%)
条件整理・論理:73大問(41%)
資料(グラフ・表)の読み取り:57大問(32%)
平面図形:56大問(32%)
規則性:38大問(21%)、速さ:37大問(21%)

1つの大問に複数の単元が入るので、合計は100%を超えます。注目してほしいのは上位3つです。割合、条件整理、資料の読み取り。適性検査の算数は、この三本柱で半分以上が組み立てられています。
一方で、特殊算の名前がついた問題はどうか。徳島・高松北・沖縄のように、比や過不足算、通過算、仕事算がほぼそのまま出る地域もあります。ただし全国で見れば少数派です。多くの学校では、特殊算は「資料から割合を出す」「条件を満たすものを探す」という形に化けて出てきます。
なぜ特殊算を仕込んでも適性検査で点が取れないのか
理由は3つあります。
計算は易しい。難しいのは「どの数字を使うか」
適性検査の算数は、計算そのものはたいてい易しい。そのかわり、資料が5点から10点ほど並び、その中から必要な数値を自分で拾ってこなければなりません。さらに「小数第1位を四捨五入」「上から2けたの概数で」といった指定が、驚くほど多い。
つまり問われているのは計算力ではなく、情報の取捨選択です。面積図でつるかめ算を美しく解ける子が、資料の山の前で固まる。これは珍しい光景ではありません。
答えだけでは点にならない
算数を含む177大問のうち、41%で途中の式や考え方の記述を求めています。作図を求める大問は28%。理由を長く説明させる大問も22%あります。

中学受験の塾のテストのように、答えの数字だけを書いて丸をもらう、という勝ち方は通用しません。正しい答えにたどり着いても、そこまでの道筋を相手に伝えられなければ、点数は目減りします。
「新しいきまり」をその場で読んで使わせる
適性検査の定番は、問題文の中で初めて出てくるきまりを読み、その場で使わせる問題です。並べかえの手順、暗証番号の記録の仕方、ロボットへの命令、ゲームの必勝法。どれも事前に覚えておける解法はありません。
しかも「答えが一つでない」問題が多い。「1つ答えなさい」と言われても、その答えが条件をすべて満たしていることの説明まで求められます。解法を暗記して当てはめる学習だけでは、ここで手が止まります。
結局、土台は読解力と作文力
身もふたもないことを言えば、適性検査のいちばんの柱は読解力と作文力です。421大問のうち約半分が会話文形式で、算数の問題でさえ、会話の中から条件を拾い、理由を文章で書かせます。しかも毎年題材が変わり、問題の予想がしにくい。ヤマを張る行為は、適性検査ではほぼ賭博です。だから当てにいくのではなく、どの題材が来ても崩れない「読む型」と「書く型」を先に持たせる。以下の戦術は、すべてこの前提の上に立っています。
地域で大きく変わる適性検査の算数の重さ
同じ適性検査でも、地域によって算数の重さはかなり違います。難度を中学受験算数の目安で3段階(★2=基礎、★3=標準、★4=応用)に分けて推定したところ、算数の平均は全国でおおむね★3.1から★3.4の間に収まりました。
ひとつだけ飛び抜けているのが東京です。東京の算数は平均★3.7、★4の大問が15大問中10。富士・武蔵・両国・白鷗・大泉・小石川の適性検査IIIのような独自問題は、並べかえ、折って切る、暗号化、天びんといった「新しいきまりを読んで使う」型が中心で、中学受験の上位校にも見劣りしません。

北海道・東北は、地元の題材と割合の組み合わせが目立ちます。仙台青陵は地下鉄東西線、宮城はやませと冷害、青森の三本木はりんご園。社会の資料の中で割合や概数を計算させる形です。算数単体では、札幌開成のカード推理や花だんの計画、仙台二華のスライドパズルのように、試行錯誤させる問題が出ています。作文は400字から500字の段落指定型が中心でした。
神奈川は、2019年度の相模原・平塚が4問構成で資料が多く、作文は120字から150字と短め。川崎はグラフの読み取りが中心で、横浜サイエンスフロンティアの適性検査IIは理科寄りの応用(速さと時間のグラフの面積など)が出ています。ただし相模原・平塚は2025年度からマークシート方式に変わり、式を書かせる記述は消えました。同じ「適性検査」でも、答え方まで地域で違う。ここを確かめずに対策を始めるのは、地図を見ずに走り出すのと同じです。
適性検査の波は国立にも届いています。広島大学附属福山中学校は2027年4月に中等教育学校(仮称)へ移行する予定で、選抜は4教科の学力検査から、読解(適性検査I)・資料と表現(II)・資料と思考判断(III)の3つの適性検査へ切り替わります。各50分、書類240点と適性検査240点の計480点。特殊算で鍛えた4教科型の受験生にとっては、戦場がまるごと変わる話です。
念のため、東京都立・神奈川・川崎・横浜・千葉などの2025〜2026年度の最新問題と公式資料も確認しました。都立の共同作成問題は今も算数・社会・理科の3大問で、毎年のように理科で対照実験、算数で条件整理と説明記述が出ています。全体の傾向は崩れていません。
なお、今回の数字は2019年度の1年分を横断して数えたものです。難度の★も僕の推定であり、公式なものではありません。地図としては十分に使えますが、最終的な確認は志望校の最新の過去問で行ってください。
適性検査の算数で点を取る3つの戦術
ここからが本題です。出ているものがわかれば、準備の優先順位は自動的に決まります。
戦術1 割合×資料の計算を反射にする
増加率、前年比、構成比、ポイント差。この4つを、指定どおりの四捨五入で出す練習を、毎日の計算練習に組み込みます。大事なのは計算の部分ではなく、資料から数字を拾う手順まで含めて練習することです。
典型的な失点は「%」と「ポイント」の取り違えです。たとえば、ある資料で全体に占める割合が約13%から約20%に増えたとき、増えたのは「約7ポイント」です。「約7%増えた」と書くと意味が変わってしまう。こうした言葉の精度が、そのまま点数の差になります。
教材は、東京学参の『公立中高一貫校 適性検査対策問題集 資料問題編』で型を覚え、あとは新聞のグラフで毎日の素振りをする。この組み合わせが、費用対効果では最強です。
戦術2 「式と言葉」を3行で書く型を決める
記述を求められて手が止まる子は、何を書けばいいのかが決まっていないだけのことが多い。そこで答案の型を先に決めてしまいます。
1行目に使った数値、2行目に式、3行目に言葉で一文。たとえば定価1200円の品物が15%引きなら、1行目は「定価1200円、15%引き」、2行目は「1200 × (1 − 0.15) = 1020」、3行目は「定価の85%にあたる金額を払うので、1020円になる」。
この3行を、算数の標準問題を解くたびに毎回つけさせる。最初は面倒くさがりますが、続けるうちに手が勝手に書くようになっていきます。答えまでの道筋を言葉にする習慣は、適性検査の算数だけでなく、理科の実験考察や社会の資料問題にもそのまま効いてきます。
ちなみに理科で最も頻出だったのは対照実験です。変える条件を1つ、そろえる条件、結果の比べ方、の3文で書く型を持っているかどうかで、確かめる実験を考えなさい、という問題の得点はほぼ決まります。算数の3行答案と同じ発想です。
新しい問題集は要りません。いま手元にある算数の問題集が、そのまま3行答案の練習帳になります。理科・社会が混ざった適性検査らしい問題で練習したいなら、東京学参の『攻略!公立中高一貫校適性検査対策問題集 総合編』が考え方の解説まで付いていて使いやすい一冊です。
戦術3 条件整理は「1つ見つける→全部確かめる→理由を書く」
条件整理や場合の数の問題では、表を作って書き出す習慣をつけます。手順は3段階です。まず条件を満たしそうなものを1つ見つける。次に、それがすべての条件を満たしているかを1つずつ確かめる。最後に、なぜそれでよいのかを書く。
あわせて、作図と空間把握を毎週の練習に入れてください。展開図、投影図、折って切る、コンパスでの作図。都立の共同作成問題と独自問題で繰り返し出ている分野です。面積や角度を求める問題より、手を動かして形を作る問題の方が多く出ている点は、意外に知られていません。
この分野は東京学参の『公立中高一貫校 適性検査対策問題集 数と図形編』で適性検査の形に慣れるのが近道です。そして折り紙、方眼紙、コンパス、立方体の積み木を机の横に置いておく。頭の中で回して間違えるより、手で回して一発で当てる方が、よほど合理的です。低学年のうちなら、思考力系のパズル教材(『なぞぺー』や『きらめき算数脳』など)で条件整理の下地を作っておく手もあります。
捨て問の見極めについて
東京の独自問題のように★4が並ぶ検査では、最後の小問にこだわりすぎないことも戦術の一つです。答えまでたどり着けなくても、途中の考え方や条件の確認を書けば部分点が残る可能性があります。白紙で時間切れになるより、取れる記述を拾いにいく方が合理的です。
過去問は「志望校+同じ型の他校」で量を稼ぐ
志望校の過去問だけでは、演習量がすぐに尽きます。今回見たとおり、型は学校をまたいで繰り返し出ています。みくに出版の『公立中高一貫校適性検査問題集 全国版』は毎年出ており、最新の2027年度受検用には2026年度の問題が収録されています。志望校と同じ型を他校から拾って解く。これで演習量は数倍になります。6年の夏以降は、ここに重心を移してください。
年間設計は「小5の1月に小6範囲を終える」から逆算する
最後に時間軸の話をしておきます。適性検査は私立の入試と違って出題範囲がやたらと広い。そのかわり、一つひとつは教科書レベルで解けます。ならば最初にやるべきは、小学校範囲の市販ワークを4教科とも一周して、知らない場所を潰すことです。1周目は雑でかまいません。完璧主義でワークの1ページ目に3日かける方が、よほど損です。
教材の順番も単純です。教科書ワークで基礎固め、東京学参の『資料問題編』か好学出版の『アインストーン』(塾向け教材)で単元学習、最後に過去問で完成。この3段階を守るだけで、教材選びに迷う時間がそのまま勉強時間に変わります。
目安は、小5の1月までに小6の範囲を終えること。そうすれば最後の1年を、過去問と、本番と同じ50〜60分の演習、そして答案の添削と書き直しのループに丸ごと使えます。算数の記述では単位の書き忘れを、作文では空欄を、この1年で徹底的に潰します。式も答えも合っているのに単位がないだけで点を落とす。採点者にとってはありがたい、受検生にとってはあまりにも安い失点です。
明日から親がすべき非情な決断
特殊算の問題集を「全部やる」のは、今日でやめてください。適性検査が主戦場なら、その時間の半分を、新聞やパンフレットのグラフ1枚から増加率を出す練習に回した方が、点数への換算効率ははるかに高い。
問題集を最後のページまで解き切った達成感は、親子の心をたいへん温めてくれます。ただし、検査会場では1点にもなりません。温まるのは心だけで、合格最低点は冷えたままです。
適性検査の算数は、特殊算の暗記勝負ではなく、割合と資料と条件整理の「作業の精度」の勝負です。出ているものに合わせて準備の順番を入れ替えるだけで、同じ勉強時間でも結果は変わってきます。
僕のマナリンクのプロフィールにある「【東北の中学受験】仙台二華・青陵・秀光へ|算数対策」では、仙台二華・仙台青陵をはじめとする公立中高一貫校の適性検査について、算数・数理分野の対策を担当しています(作文分野は対象外です)。ほかの地域の公立中高一貫校をお考えの方も、対応できる範囲をまずご相談の段階でお伝えします。
無料で相談できますので、いまの勉強の配分が適性検査に合っているかどうか、確認するつもりで気軽に声をかけてください。
この先生のおすすめコース
- 仙台二華・青陵など、公立中高一貫の適性検査に挑むお子様
- 秀光・東北学院など、私立中学を目指すお子様
- 予習シリーズ(四谷大塚NET)の家庭学習が回らないご家庭
このブログに関連するオンライン家庭教師はこちら
中学受験におすすめの指導コース
- 算数を入試の武器にしたい方
- 算数センス・発想力を身につけたい方
- 根底から子供の頭を良くしたい方
- 中学受験に向けた作文対策をしたい
- 志望校に合わせた課題で記述対策をしたい
- 添削指導で自分の意見をまとめるコツを学びたい
- 工業分布問題ができない
- 省エネでポイントを押さえたい
- 中村のレッスンを一度試してみたい
- 記述問題を中心に、点数の取れる答案の作り方が分からない方
- 中学受験に向けて、国語の点数を上げたい方
- 進学塾で中学受験コースの指導経験がある、やさしい女性の先生に教わりたい方
- おっちょこちょいと言われる、時間内に解けるのにミスが多い、途中式が読めない、計算ミスが減らない・多い
- 計算ミスにも種類があります。生徒さんのミスタイプを確認し、それを補う授業をします。
- 理系×女性、優しい先生、怒らない、わかるまでつきあう、「解ける!よりわかる!」重視