■この指導コースの特徴
海外在住の生徒さんのための国語のコースです。たとえば、サタデースクールなど日本人学校の授業が中学3年生までで終了してしまい、国語の勉強を続けたいけれどできない、といった方を想定しています。現代文のほかに、古文漢文、小論文も指導可能です。教師は米国ノースカロライナ州(EST 東部標準時)におりますので、米国にいらっしゃる生徒さんは、時間帯が合いやすいかもしれません。
■授業のすすめ方
オンラインまたは電子書籍化されているものをのぞき、全てこちらでスキャンした教材(問題集でない場合は、教師のオリジナル設問付き)をお送りします。宿題として、それらの教材を、設問をガイドに授業前までに読んできていただきます。60分の対面授業では、こちらで生徒さんの解答をもとに解説を加えながら、一緒に精読します。様子をみながら、応用問題や小論文にも取り組みます。
■教材例
海外在住の生徒さんが興味を持って読み続けられる(かつ内容が濃い)ものをいくつかこちらで提案いたします。なお、以下にあげた書籍はほんのわずかな例にすぎず、実際には生徒さん一人一人のご興味や必要性に合わせて、ほかのものを使用する場合もございます。
1. 物語・随筆
橋本治『桃尻語訳 枕草子』<上・中・下>(河出書房新社、文庫版あり)――清少納言を、現代にも通じる社会の中で生きているひとりの人間として瑞々しく蘇らせ、沢山笑わせてくれる名訳です。橋本治さんが2019年に亡くなられた際の『ユリイカ』の特集や新聞記事、動画資料等も参照します。
樋口一葉「たけくらべ」(新潮文庫『たけくらべ・にごりえ』より抜粋)――キャラクターたちの切なさに思わず胸がきゅんとし、10代で作品にふれることができれば(主人公の子供達は実際より大人びて見えることもありますが同年代です)一生の宝物になります。池澤夏樹の日本文学全集より、川上未映子訳(河出書房新社、2015)も参照します。すずき大和の『まんが たけくらべ』は絵が非常にかわいらしく、物語を細部まで描写しているので、そちらも併用します。
2. 評論
川端康成 ノーベル文学賞記念講演「美しい日本の私」(講談社現代新書)――原文・英訳ともに美しいので、日英バイリンガルの方がお読みになると、より一層インスピレーションを受けられることと思います。
水村美苗『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』(筑摩書房)
河合隼雄『日本文化のゆくえ』(岩波現代文庫)
3. 問題集
代々木ゼミナール『新小論文ノート』(日本入試センター、2020)――こちらも日本文化について取り上げた評論からの抜粋など、扱われている文章自体が面白く、実際に帰国子女の予備校でも使用されているようです。
4. その他時事トピック(2021年3月17日現在)
4日前に、国際的にも知られる米文学者、巽孝之教授の最終講義「慶應義塾とアメリカ」“The Last Lesson: or the Origins of Keio Transnational American Studies”がありました。全部で2時間弱ありますが、YouTubeで閲覧可能です(日本語講演)。巽先生に関して、日本国内においてはNHK「チコちゃんに叱られる!」や朝日新聞の記事でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。講演では「トランスナショナル」と英語タイトルにあるように、米文学(英語)/日本文学(国語)といった垣根をこえて、文学そのもののきらめきについて論じていらっしゃいます。トランプ大統領的ポスト・トゥルース(オルタナティヴ・ファクト)や、歴史修正主義に陥る危険性を元来はらみながらもなお、「失われた大義」“Lost Cause”という思想の中に、福沢諭吉の「やせがまん」にも通ずる抵抗の力を見出し、文学的想像力や物語化を積極的に再評価されていました。新型コロナウイルスという国境をこえた危機に接する現代社会において、いままさに国語の授業で取り上げるべき内容(受験の評論文対策にも有効)で、丁寧な解説さえあれば中高生でも十分に理解しうる教材であると思います。
■お問い合わせの際に知りたいこと
ご家庭のバックグラウンド、生徒さんの直近の課題感、性格、その他指導の際に配慮してほしいこと