本当の英文法とは

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2025/3/22

「文法書や辞書の解説はある意味ほとんどすべて間違えている。が、文法書や辞書に収録されている例文そのものには間違いはなく、十分に価値のあるものとなっている。勉強のコツは、例文理解にのみ意識を集中することだ。辞書や文法書の解説部分はすべて無視したほうがいい」とは、受験生だった遠い昔に、ある大学教授が言ってくれた言葉です。


今私は、プロの英語教師として、この言葉こそ英語力飛躍のカギと理解しています。その上で、間違いのない本当に正しい解説も詳細に提供できるようになりました。文法書や辞書の解説が相変わらず受験生の足を引っ張り続ける中、全く異なる正しい解説を提供することで、多くの生徒を難関大学上位合格レベルに引き上げてきました。全く異なる正しい英文法、暗記に頼らない考える英文法、大学入試の秘密が見える英文法は、本当に存在しているのです。


例えば、ほんの一例をあげましょう。to不定詞の名詞用法。「She wants to go there.」の「to go there」は全体として名詞的で「wants」の目的語になっている。to不定詞は名詞として機能することがある。と、学校文法ではまことしやかに解説されます。ではなぜ、同じ意味をあらわす英文「She is to go there.」が存在しているのか。「is」は自動詞であり目的語を取る動詞ではないので「to go there」を目的語に取っているとは絶対に言えない。従って「wants」も「to go there」を目的語にとってはいるなどとは絶対に言えないのです。


すると、「is」は補語を取る動詞だから「to go there」は補語だ。だから名詞用法だ。などと「説明」して、知った顔をしている輩が数多く出てくる。この人たちは、そう言い張ることで受験生と社会全体が被る悪影響を、気にすることが全くないのではないのでしょうか。


残念ながら補語とは、be動詞の後ろに来れば全部補語になるというような安易なものではありません。例えば、「She is a fool.」(不定冠詞付き名詞) や 「She is fool.」(無冠詞名詞)

、「She is foolish.」(接尾辞付き名詞=形容詞)などという具合に、きわめて限定して語るべきものなのです。この人たちの上記のようなアドホックな態度は、この補語の基本原則の理解にすら悪影響を及ぼしてしまう。こうなるともう、初学者の頭の中は大混乱でしょう。


文法軽視の風潮が広がり、「スラッシュ読み」などという、学術の英文読解で絶対にやってはいけない類の読解法が学校教育に蔓延して久しいけれど、それもこれもすべてこのアドホックな「文法解説」をばらまいてきた輩達のせいなのです。


皆さんはきっと驚かれると思いますが、実はto不定詞などというものをそもそも、存在していると考えるのがすべての元凶なのです。文法書にも、注意深いものにはちゃんと、「to付きの不定詞」と慎重な言い方をしています。すなわちここでは、「不定詞とはひとえに原形不定詞のことで、to原形はひとまとまりとみる場合は常に前置詞句で副詞ととらえるべきである。to不定詞の名詞用法という言い方は二重三重の間違い」ということが示唆されているのです。toと原形との結びつきも世間で考えられているよりはるかに弱い。このことが分かっていない場合、例えば「to thoroughly examine」などと出てくると、どうしていいのかわからなくなってしまうわけです。


ではどう考えるのが合理的なのか?実は、「S

V to 原形 ……」は、次の三つのうちのいずれかで捉えるのが最も合理的です。


①「[S V] [to 原形……]」:副詞用法(「ために」或いは「を見て」)

②「S (V to) 原形 ……」=「S (助動詞) 原形 ……」

③「S (V to) 原形 ……」=「S (V and) V2 ……」:結果


これは「V」と「to」の間に「……」が入って「S V …… to 原形 ……」となっても、全く同様に捉えることができるので便利です。なぜなら、「……」の部分に何が来ようと「V to」の時と全く同じように取り扱い、「……」の部分は無視してよいことになるからです。すなわち、いわゆる「熟語」をただ丸暗記するのではなく系統的に理解し、正しく使いこなせるようになるということの一例となっているのです。


①「[S V……] [to 原形……]」:副詞用法(「ために」或いは「を見て」)

②「S (V…… to) 原形 ……」=「S (助動詞) 原形 ……」

③「S (V…… to) 原形 ……」=「S (V…… and) V2 ……」:結果


初めに例示した「She wants to go there.」の場合、「She (wants to) go there.」=「She (will) go there.」と捉えるのが正解です。「to」は「go」に付いているのではなく、「wants」の方に付き、意志・願望表現を構成すると考えるべきだったのです。「She is to go there.」も「She (is to) go there.」=「She (will) go there.」と捉えるのが正解です。「to」は「go」に付いているのではなく、「is」の方に付き、意志・願望表現を構成すると考えるべきです。「to go there」を目的語と考え、to不定詞に名詞用法があると考えるのも、「to go there」を補語と考えるのも、どれだけいい加減で有害な考え方だったか、皆さんにはこれで十分に伝わったはずです。


「to 原形」を上記のように新しくとらえるようになるとどんないいことが起こるのでしょうか?例えば「remember」の場合、「to不定詞も動名詞もどちらも目的語に取る他動詞」のひとつと覚えて済ますのでは、なぜダメなのでしょうか?「I remember playing with him when I was a child.」(子供の時に彼と遊んだことを今でも覚えている)や「Remember to go there.」(そこに行くことを覚えていなさい)でダメな理由は何なのでしょうか?


それは「Remember to go there.」を「必ずそこに行きなさい」と正しく訳す人が現れた時に、「きれいな訳だけど飽くまでも意訳でしかない。覚えておいたらいいだろうけど、文法的には間違えている」などという、間違った整理の仕方をしてしまうからです。そうなると、同じ調子で他の多くの表現も整理していく中で、他の多くの表現と同様にその暗記を、暗記であるがゆえに維持できなくなる。奇跡的に辛うじて覚えていてもいざ使おうとした時に正しく使いこなすことができない。ましてや知識を発展させて学習そのものを楽しむということにもなるはずがない。その結果苦しくなって、英語学習そのものに絶望してしまう。実際、こんな感じで英語学習に挫折してしまっている学生を私はこれまで数多く目撃してきました。彼らはアドホックな解説でお茶を濁す英語教育の紛れもない犠牲者なのです。


実は、「Remember to go there.」は、上記の原則の内の③に従って


「Remember to go there.」=「(Remember to) go there.」=「(Don’t forget to) go there.」=「(Never fail to) go there.」=「(Don’t fail and) go there.」=「Go there (without fail).」


と分析し、「忘れずにそこに行きなさい」「必ずそこに行きなさい」と訳すのが、文法上正しいのです。これは決して意訳などではありません。そもそも意訳などというものはあり得ないのです。意訳という言葉を用いる時、それだけで、その人の持っている文法が実は間違えた文法であることを端的に表しているのです。それに対して、上記のような正しい理解なら、自分で使用しようとするときに間違った使い方になることなど絶対にありえません。その上、他の類似表現との連携を認識することにもなり、ひとつ覚えることで同時に複数の表現まで発展的に覚えることになります。更には、何か全く見たことのない表現が出てきたときにも、形が似ているし、類似表現だろう。文脈上もそれで意味が通じると、正しく判断して訳すことすらできるようになるのです。更には、何よりも、考えながら連想しながら覚えていくことで、大いに楽しく勉強できる。記憶が劣化することもほとんどない。これはいいことづくめではないでしょうか?


ここで上げた例は、本当に一例でしかありません。今ここで皆さんにすべてを伝えることは物理的に不可能ですし、皆さんが信じてくれるか分かりませんが、英文法のほぼすべての項目で、上記の改善と同じような改善が可能であり、必要なのは事実です。改善することで一見それぞれが複雑になり全体として大変になりそうと考える人もいるでしょうが、実際は全く逆で、ひとつひとつを改善し深めていくことで、すべての項目が互いに有機的に結びつきあって連携しあい、全体としては比較的コンパクトになるのです。更には、大学入試問題も、ここで一端を述べた本当の文法に基づいて作成されているので、根底から理解して、出題者の意図も的確にとらえて、まるで出題者と対話するかのように解答していくことができるようになります。


そんな本当の英文法を習得してみたくはありませんか?


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