【大学受験】「嘘」か、「分かりやすい」か、人気講師にぶつけられる批判を考察してみる
2023/4/9
大学受験生向けの「神授業」なる言葉がある。
CMなどを見ると、難解そうなテーマをたった15秒ほどでシンプルかつインパクトを持って説明している。
実際、かなりの高評価がなされている先生も多いようだ。
一方で、「あいつの説明は嘘、インチキだ」と批判する声もある。
もちろん、数多くある批判の中には単なる嫉妬や言いがかりもあるようだが(そんなものは批判ではなく誹謗中傷と言った方が正しいかもしれないが)、なるほどと思わせるものもあるので、今日はそれらの批判について少し語ってみようと思う。
そもそも、分かりやすい授業とはどんなものか。
今回は英語の教科で考えてみる。
例えば、「to不定詞は未来指向で未来に向けたもの、明るく前向きな表現があるよ。逆に動名詞は過去指向でマイナスで後ろ向きな要素が強いんだ」という説明があるとしよう。
この説明は私も使っているが(ただし私はもう少し補足して掘り下げる)、
want to V(⇒これからやることだから未来指向)
hope to V(⇒同じく未来指向、しかも希望なのだから前向き)
finish Ving(⇒既にやっていることを終えるのだから過去指向)
give up Ving(⇒同じく過去指向、しかも諦めてしまうのだから後ろ向き)
なるほど、これなら覚えやすいというわけである。
しかし、批判者はこう言う。
refuse to V とか hesitate to V はどうなる?「拒否する」「ためらう」はマイナスな表現なのに、to不定詞が来るじゃないか。
分かりやすい授業とは過度な単純化が生じて、法則にそぐわないもの(いわゆる「例外」)が多くなりやすい。
そのあたりの穴をごまかして、分かりやすい授業と豪語するのはおかしいのではないか。
ということである。
もう一つ例を挙げてみよう。
「分かりやすい」先生はこう言う。
onの意味は「上に」じゃなくて「接触」だ。だからハエが天井に止まっているときも、天井の「上」じゃないのにonを使うんだ。
それに対し、批判者は、
じゃあconcentrate onはどうなの?「接触」なんて覚えててもピンと来ない。
結局は「集中する」って暗記しないといけないじゃん。
ほら、やっぱり嘘付いてるじゃないか。
さて、皆さんはどちらの先生から教わりたいだろうか。
果たして、どちらの側が合理的なのだろうか。
私の答えは、断然「分かりやすい」側の先生である。
ただし、ここまでの話の流れでは、「お前も嘘つきの仲間だな!」となってしまいかねないので、もう少し考えていってみよう。
結論をいえば、目的の問題だと思う。
仮に、生徒が大学の英文学部で英文学を究めんとする研究者の卵というのであれば、単純化は避け、徹底的に詳細まで突き詰めていくのがいいかもしれない。
しかし、大学受験向けの講義でそのような学生が来ることは稀である。
大半の学生は大学受験突破レベルまで理解できれば十分なはずである。
学生が知りたいこと、教わりたいことは文法書にかいてある枝葉末節ではなく、英語を通じて考える力であるはずだ。
さらにいえば、勉強の苦手な子は細かいことなど教えられても(そして、膨大な量の知識を暗記しなさいと押し付けられても)、成績は上がらないし、ましてや勉強を好きになんてならない。
「なるほど、そういうことだったのね」と納得させられることが重要である。
もちろん、嘘を教えるのは歓迎されないだろうが、例外のないルールはない。
例外だらけのルールは使い物にならないし、かといって一つでも例外があると許さない姿勢では何もルールが作れず、勉強の効率が悪くなる。
要するに、バランスが大事ということだ。
私は常に悩みながら指導する。
細かく教えてしまうとこの子は分からないだろうな、けどどうしてもここはもっと深く理解してほしいな。
難解な用語はたくさん知っているけど、どうもこの子は本質が分かっていないな。
などなど、自分の頭の中で模索しながら、日々格闘し、自分独自のスタイルを構築しているのである。
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