学校の英語授業編第2回:公立と中高一貫の差
2025/9/5
📚 はじめに
「公立と中高一貫って、やっぱり差があるんですか?」
家庭教師をしていると、保護者の方から必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
僕自身、公立中学の生徒さんも、中高一貫校の生徒さんも両方教えてきました。もちろん学校ごとの方針や生徒さん自身の努力によって差はあります。ただ、それでも 全体としての傾向 にははっきりと違いがあると感じています。
ここで大事なのは、これは学校や先生方を批判したいわけではない、ということです。あくまで僕が家庭教師として接してきた生徒のノートや授業態度、テストの結果などの「事実」をもとにお伝えしているだけです。現場の先生方は限られた時間やカリキュラムの中で最大限の工夫をされています。
その前提で、実際にどんな違いがあるのかを整理してみたいと思います。
⏱️ 授業時間と進度の圧倒的な差
最初に感じるのは、授業時間の違いです。
公立中学を「1」とした場合、中高一貫は体感で「1.5〜2倍」の時間を英語に割いています。
公立中学では、週の授業数が限られているため、どうしても英語に触れる機会は少なくなります。1コマで文法もリーディングもライティングもリスニングも……とすべて詰め込もうとするため、結果的に「広く浅く」になりがちです。
一方、中高一貫校では時間に余裕がある分、
◉ 文法専門の授業
◉ リーディング専用の授業
◉ ライティングやスピーキングの実践授業
など、分野ごとに独立した形で学べるようになっています。
同じ「週に英語を学んでいる」という表現をしても、その密度や中身はまるで違います。これがまず、両者の差を大きく分ける要因になっています。
📖 学び方の違い
授業の時間数が多いだけでなく、学び方そのものにも大きな違いがあります。
公立中学では、1コマの授業の中で文法もリーディングもライティングも、さらにはリスニングやスピーキングまで「全部まとめて」扱おうとする傾向があります。結果、内容がごちゃ混ぜになりやすく、それぞれの分野が中途半端になってしまうことが少なくありません。
一方、中高一貫校では「大学受験を見据えて最短距離で力をつける」ことを目的に、授業が細分化されています。
◉ 文法は文法だけを体系的に
◉ リーディングはリーディングでじっくり
◉ ライティングやスピーキングはアウトプットに集中
このように、それぞれの分野を切り分けて深く学ぶため、全体的なバランスが崩れにくいのです。
🧑🎓 生徒の理解度・伸び方
この差は、生徒の理解度や伸び方に直結します。
◉ 中高一貫の生徒
例えば、文法をしっかり体系的に学んでいるので、長文読解や英作文に取り組むときも少ない説明で理解が進むケースが多いです。分野ごとに授業があるため、「文法は得意だけどライティングは苦手」といった弱点も発見しやすく、改善につなげやすい特徴があります。
◉ 公立の生徒
ごちゃ混ぜ授業の影響で「自分の弱点がどこか」すら把握できていないことが多いです。そのため、教える側としても「どこから補強すべきか」を探るところから始めなくてはいけません。学びの効率で比べると、中高一貫との差はどうしても大きくなってしまいます。
🧑🏫 二度手間になった実例
特に印象的だったのは、公立中学に通う中学3年生のケースです。
「夏から高校受験に向けて長文読解を勉強したい」と相談を受けたのですが、実際に授業を始めてみると、長文どころか 文法がほとんど理解できていない 状態でした。さらに単語の定着も不十分で、品詞の区別すら曖昧…。
「もしかすると学校で触れてはいたのかもしれない。でも“文法の授業”として体系的に学んでいなかったのでは?」と感じました。
結局、高校受験勉強に入る前に、文法や品詞をゼロからやり直すことになりました。本人にとっては「遠回り」であり、まさに二度手間の典型例です。
📝 一言まとめ
僕が感じる最大の違いを一言で表すなら、
「体系的に積み上げられるか、ごちゃ混ぜのまま進んでしまうか」。
中高一貫校は授業時間と構成を活かして多方面から英語力を伸ばす仕組みがあります。
一方、公立中学は時間不足の中で全てを詰め込もうとするため、生徒の理解に抜けや偏りが生じやすい。
もちろん、公立中学でも努力して伸びる生徒さんはたくさんいます。ただし「仕組み上の差」は確実に存在し、それが学びの効率や成績に大きな影響を与えているのは事実です。
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