第2回:声かけ・励まし方(やる気を育てる言葉)
2025/9/14
🌱 はじめに
子どもの勉強をサポートするとき、多くの保護者が「声かけ」をしています。
「がんばってね」「もっと集中しなさい」「次は90点とろうね」――言葉自体はシンプルですが、その一言で子どものやる気がぐっと高まることもあれば、逆にしぼんでしまうこともあります。
僕自身、家庭教師として多くのご家庭を見てきました。そこで気づいたのは、「言葉の内容」だけでなく「子どもの受け取り方」や「タイミング」がとても大きな影響を与える ということです。
今回は、保護者の声かけでよく見かけるパターンをもとに「やる気を育てる言葉」についてまとめます。
⚠️ 逆効果になってしまう声かけ
「親だから子どものことは全部わかっている」――そう考えて接してしまうと、思わぬ逆効果になることがあります。
例えば実際にあったケース。
生徒にとってはプレッシャーになるような言葉を、保護者が「励まし」と思ってかけていました。第三者から見れば「これでは子どものやる気が削がれる」と一目でわかるのですが、ご家庭の中ではなかなか気づけないのです。
結果的に、その生徒さんは成績が下がってしまいました。
しかし保護者の方は「まさか自分の声かけが原因だとは思っていなかった」のです。
子どもは大人以上に言葉の裏を敏感に受け取ります。だからこそ「親の期待」と「子どもの気持ち」がずれてしまうと、勉強への前向きさを失わせてしまうことがあります。
✅ 効果的な声かけのポイント
逆に、子どもが「もっとやろう」と思える声かけには特徴があります。
◉ 結果だけを褒めない
「90点とれてすごいね」よりも、「この前つまずいていた問題、今は自分の言葉で説明できるようになったね!」といった具体的な成長を伝える方が響きます。
◉ 強みを見つけて伝える
「何回やってもコツコツ取り組むのがすごい」「計算は早くできるね」など、子どもの長所を認めてあげる。大人が思う以上に、子どもは自分の得意・不得意を冷静に分析しています。だからこそ、適当な褒め言葉や嘘っぽい励ましはすぐに見抜かれます。
◉ 過去との比較を示す
「前はできなかったけど、今はできるようになった」――このように過去からの成長を具体的に示すと、子どもは「ちゃんと見てもらえている」と感じ、やる気が増します。
⏰ 声かけのタイミング
「何を言うか」だけでなく「いつ言うか」もとても大切です。
◉ 子どもが失敗して落ち込んでいるときに、すぐに叱るのは逆効果。
一度自分で振り返る時間を与えてから、冷静に声をかける方が前向きに受け取ってもらえます。
◉ 無意識のミスや小さなつまずきに関しては、すぐに声をかけても問題ありません。
ただし「なんでできないの?」ではなく「どうしたら次はうまくいくかな?」と考えさせるような声かけが効果的です。
子どもの性格によってもベストなタイミングは変わります。普段の様子をよく観察して「この子は今どんな気持ちでいるだろう?」を想像しながら声をかけることが大切です。
⚠️ 保護者がやりがちな失敗
応援のつもりが、逆にプレッシャーになってしまうこともあります。
◉ 結果だけで評価する
「点数が悪いときは叱る、良いときだけ褒める」――これでは子どもは努力を見てもらえていないと感じてしまいます。
◉ 子どもの言葉を待たずに、親が先回りして結論を出してしまう
せっかく考えるチャンスがあっても、その時間が奪われてしまいます。
◉ 知識が曖昧なままアドバイスしてしまう
勉強の内容に詳しくない場合、無理に助言するよりも「どう思う?」と問いかけてあげる方が効果的なことも多いです。
🌟 成功体験から学ぶ
実際に「声かけ」がうまくいって、生徒が大きく伸びたケースがあります。
ある生徒は、ミスをするとすぐに自己否定してしまうタイプでした。
そこで「間違えたこと自体が次の勉強の材料だよ」「できなかったことをメモしておけば、次のテストの武器になるね」と伝え続けました。
最初は時間がかかりましたが、少しずつ「失敗=悪いこと」ではなく「成長のきっかけ」と捉えられるようになり、結果として点数が大幅にアップしました。
声かけは魔法の言葉ではありません。
でも、日々の小さな積み重ねが子どもの意識を変え、学びへの姿勢を前向きにするのです。
📝 第2回まとめ
◉ 声かけは「結果」よりも「過程」や「成長」を認めることが大切。
◉ タイミングは子どもの気持ちに寄り添って選ぶ。
◉ 応援しているつもりの言葉がプレッシャーになっていないか、常に振り返る。
保護者ができる一番のサポートは「正しい答えを与えること」ではなく、子どもが自分で考えて成長していける環境を整えること です。
声かけは、そのための大切なきっかけになるのだと思います。
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