お金で買える大学? 不公平な入試制度の実態
2025/5/6
選ばれし者だけが通る門:大学入試制度の現実
駅前の大手予備校。日付は2月4日、センター試験の結果が返ってきた直後だ。雪が舞う寒い夜、自習室の明かりは深夜まで消えることがない。
「今日もこんな時間まで...」
地方から上京して一人暮らしをする高校3年生は、疲れた表情で問題集をめくる。志望校は東京の名門私立大学。地元の公立高校からの挑戦は険しい。
同じ頃、都内の某有名私立大学付属高校では、3年生たちが卒業旅行の計画を立てていた。彼らのほとんどは、一般入試を受けることなく系列大学への進学が約束されている。
「マジで楽でよかったー。高3なのに毎日部活できるし」
エスカレーター校の特権を享受する生徒たちは、センター試験すら受けずに、偏差値65の大学進学が決まっていた。
数字に見る不公平の実態
文部科学省の調査によれば、都市部の有名私立大学では、付属校からの内部進学者が全入学者の30%以上を占める大学も少なくない。ある都内有名私立大学では、入学者の実に42%が系列校出身者だという。彼らの中には、一般入試では到底合格できないレベルの学力の学生も含まれている。
「同じゼミに入った付属出身の子が、基本的な英語も怪しかった...」と、一般入試で苦労して入学した学生は首をかしげる。「何のために私は睡眠時間を削って勉強したんだろう」
大学付属校からの内部進学の両面性
生徒側のメリット
付属校の生徒にとって、内部進学制度のメリットは明白だ。過酷な受験戦争を回避でき、高校時代に部活動や特別活動に打ち込める。精神的なストレスが少なく、多様な経験を積むことができる。
あるエスカレーター校出身の大学生は「高3の秋から冬にかけて、友人たちが受験勉強に追われる中、自分は好きな研究に没頭できた。心に余裕があったからこそ、大学での専門分野を見つけられた」と語る。
大学側のメリット
一方、大学側にもこの制度を維持する明確なメリットがある。
「安定した入学者数の確保はもちろん、系列校からのエスカレーター進学は大学経営を支える重要な収入源です」と語るのは、ある私立大学の元理事。「付属校生は6年間の学費を納めるため、一般入試組よりも総収入が大きい。また、中退率も低いのです」
教育コンサルタントによれば、「学費の前納制度や入学金の早期徴収により、大学は安定した資金計画を立てられる。また、付属校からの進学者は大学への帰属意識も高く、卒業後の寄付なども期待できる」という側面もある。
さらに、付属校と大学間の教育連携により、「6年間または7年間一貫教育」というブランド価値を高められる点も見逃せない。ある大学関係者は「付属校を持つことで、幼稚園から大学までの一貫した教育体制を宣伝できる。これは受験生家族への強力なセールスポイントとなる」と説明する。
しかし、この経営優先の考え方には疑問の声も。「学力が不十分な内部進学者が増えれば、大学全体の教育水準低下を招く恐れがある」と警鐘を鳴らす大学教授もいる。
日米のスポーツ特待生制度の差
アメリカのNCAAでは「No Pass, No Play」という明確なルールがある。どれだけスポーツで優れた才能を持っていても、学業成績が一定レベルに達していなければ大学スポーツに参加できないのだ。
あるアメリカの有名大学でバスケットボール奨学金を得た日本人留学生は驚いたという。「練習前に必ず勉強時間があり、GPA(成績平均値)が2.0を下回ると試合に出られない。週に20時間以上は勉強することが義務付けられています」
彼の友人は優秀なスポーツ選手だったが、成績不振で奨学金を失った。「世界レベルの選手でも、学業を怠れば容赦なくベンチ入りすら認められない。それがアメリカのシステム」
一方、日本の大学スポーツはどうだろうか。
ある有名私立大学のスポーツ科学部教授は匿名を条件に語る。「日本の場合、スポーツ特待生は学力がほぼ問われないケースも多い。入学後も授業出席さえしていれば、テストの点数に関係なく単位がもらえる『暗黙の了解』がある学部も存在します」
実際、日本のある有名スポーツ大学では、一般入試の偏差値が55程度の学部に、偏差値30台の高校からスポーツ推薦で進学するケースも珍しくない。某スポーツ強豪大学の元教員は「授業中に堂々と居眠りする特待生に対して、厳しく指導できない空気がある」と告白する。
入試格差がもたらす教室内の断層
あるゼミの風景。一般入試組の学生はノートを取り、活発に質問する。一方でスマホをいじったり、居眠りをしたりする内部進学組やスポーツ推薦組。この光景は珍しくない。
「同じ授業料を払っているのに、授業内容の理解度に大きな差がある。だから教員は誰に合わせて授業をすべきか悩む」と、ある大学教員は打ち明ける。「結果的に、上位層も下位層も満足できない中途半端な授業になりがちです」
成功例と失敗例
アメリカの制度では、スタンフォード大学の水泳チームに所属しながらオリンピックで金メダルを獲得した選手や、プリンストン大学で経済学を学びながらNBAでプレーする選手など、学業とスポーツを両立させた例が多数存在する。
「アメリカでは『スチューデント・アスリート』という言葉があるように、『学生であること』が第一条件。アスリートは二番目」と語るスポーツジャーナリスト。
一方、日本では学業を疎かにしたスポーツ特待生が卒業後に苦労するケースも。ある元プロ野球選手は引退後、「大学時代にもっと勉強しておけば」と後悔している。怪我で選手生命を絶たれた後、学歴は残っても実質的な学力がなく、再就職に苦労したという。
制度改革への具体的提言
今後の大学入試制度の改革として、以下のような具体策が考えられる:
1. 付属校・系列校からの内部進学者にも一定水準の学力検査を課す
2. スポーツ特待生にも最低限の学力基準を設ける(アメリカのNCAA方式)
3. 入学後も定期的に学業成績を確認し、一定水準を下回る場合は競技参加を制限
4. 地方出身者への特別枠の拡大と経済支援の強化
5. オンライン教育の充実による地理的格差の是正
ある国立大学では、すでにこうした制度を一部導入し始めている。「多様性を尊重しつつも、大学としての学問的水準は確保したい」と担当者は語る。
希望の光
変化の兆しも見えている。いくつかの大学では、付属校からの進学者にも学力試験を課し始めた。あるエスカレーター校では、高校3年間の成績が一定基準に達しない場合、内部進学ができないシステムを導入している。
「生徒全員が大学で学ぶ準備をしてから進学してほしい。それが本当の意味での教育機関の責任」と、そのシステムを導入した学校関係者は語る。
すべての若者に公平なチャンスを与え、同時に大学教育の質を確保する。この二つの目標は、決して両立不可能ではない。18歳という多感な時期に感じる不公平感は、その後の人生観にも影響を与える。
より多くの若者が「頑張れば報われる」と信じられる入試制度の構築が、日本の教育の未来を明るくするだろう。
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