なぜ、あの子は復習が終わるのか? 上位層だけが知っている「作業速度」という武器
みなさん、こんにちは。ヒロユキです。
神奈川で塾の経営に携わりながら、オンラインで個別指導をしています。 かつては大手の中学受験塾で、最上位クラスの生徒たちを眺めていた時期もありました。
今日は、中学受験の算数において、多くの人が見落としている、しかし極めて物理的で残酷な真実についてお話ししようと思います。
記事のタイトルは、少し極端かもしれませんが、真理です。
「頭の良さ」の正体は、ただの手の動きかもしれません
成績が伸び悩むご家庭から相談を受ける際、よく耳にする言葉があります。 「うちの子は計算ミスが多くて」 「思考力が足りなくて応用問題が解けなくて」 「センスがないんでしょうか」
親御さんの心配は尽きないものですが、僕から見ると、原因はもっと単純なところにあることが多いのです。
それは、**「作業速度」**です。
「作業」とは何か
ここで言う「作業速度」とは、単に計算をする速さのことだけを指すのではありません。もっと泥臭く、物理的な動作のスピードのことです。
問題文を目で追い、ページをめくる速度
数字や文字を紙に書く速度
定規を使わず、フリーハンドで表や図形を描く速度
消しゴムで消す速度
「あ、これは解けない」と判断して次の問題へ移る速度
答え合わせの際、解説の該当箇所を探し当てる速度
これらすべてが「作業」です。
大手塾のトップ層にいる生徒たちを観察していると、ある共通点に気づきます。彼らは、天才的に頭の回転が速いというよりも、「物理的な処理速度」が異常に速いのです。
例えるなら、彼らは料理の手際が良いシェフのようなものです。 レシピ(解法)を知っているかどうか以前に、玉ねぎを刻む速さ、フライパンを振る速さ、皿を出す速さが圧倒的に違う。だから、同じ時間でより多くの料理(解答)を作り出せるのです。
成績が良い子のメカニズム
なぜ、作業速度が成績に直結するのか。論理的に分解してみましょう。
成績が良い、つまり偏差値が高い状態を作るには、質の高い復習が不可欠です。 では、質の高い復習をするには何が必要か。それは**「試行回数」**です。
作業速度が速い
同じ時間内で、人の倍の量の問題を解ける(あるいは倍の回数、復習ができる)
圧倒的な演習量が確保される
結果として、質が向上し、成績が上がる
この単純な図式です。
逆に、作業が遅い子はこうなります。
字を書くのが遅い、図を描くのに迷う
1問に時間がかかりすぎて、宿題が終わらない
復習に手が回らず、解きっぱなしになる
定着しないまま次の単元へ進む
これでは、どんなに高尚な思考力を持っていても、宝の持ち腐れです。 思考をするためには、まず手を動かし、図を描き、仮説を立てて検証しなければなりません。その検証サイクルを回す速度こそが、算数の実力と言っても過言ではないのです。
「捨てる」という作業
また、作業速度には「判断の速度」も含まれます。
「この問題は今の自分には解けない」と瞬時に判断し、飛ばすこと。これもまた、合格点を取るための重要な作業の一つです。
悩んで手が止まっている時間は、何も生み出しません。 算数が得意な子は、問題を解くのが速いのではなく、**「解ける問題と解けない問題を仕分けする作業」**が速いとも言えます。
まず、手を速く動かすことから
「思考力を鍛えたい」と願う前に、まずは一度、お子様の「手」を見てあげてください。
数字を丁寧に書きすぎていませんか? 定規を使って綺麗に線を引こうとしていませんか? 答え合わせの時、のんびりと解説を読んでいませんか?
もしそうなら、まずはそこを変えるべきです。
「字は汚くてもいいから(読める範囲で)、とにかく速く書く」 「図はフリーハンドで、3秒で描く」
そんな即物的なトレーニングが、結果として思考の時間を生み出し、偏差値を押し上げる要因になります。
算数は、スポーツです。 フォームを気にする前に、まずはグラウンドを全力で走れる体力がなければ、試合にはなりません。
思考するのは、手が勝手に動くようになってからでも、遅くはないのです。
ヒロユキからのご提案
【お子様の「筆記速度」を一度計測してみませんか?】
もしよろしければ、普段の学習でお子様が「計算問題の1行を書き写して解き終わるまで」に何秒かかっているか、あるいは「ページをめくって次の問題に取り掛かるまで」に何秒のラグがあるか、ストップウォッチで計ってみてください。
もしそこに「もたつき」があるのなら、計算ドリル以前に、数字を速く書く練習をするだけで、成績が変わるきっかけになるかもしれません。
何か具体的な改善策が必要であれば、いつでもご相談ください。淡々と、解決策を提示します。