単位換算が覚えられない子に暗記表を渡すのは逆効果

単位換算が覚えられない、と子どもが言い出したとき、多くのご家庭は換算表を印刷して机の前に貼ります。残念ながら、その表は1週間後には壁紙の一部になり、テストでは相変わらず 1ha を 1000m² と書いてきます。
単位換算は、覚えられないものではありません。覚えるものを間違えているだけです。
単位換算が覚えられない子が暗記しているもの
面積と体積の単位換算は、中学受験算数の中で最も地味で、最も失点が多い分野の1つです。計算自体はかけ算と割り算だけなのに、0の個数を1つ間違えただけで答えは10倍、100倍とずれます。部分点はありません。
単位換算が覚えられないと訴える子の暗記の中身を聞くと、たいてい次のような「結果の一覧」です。
1m² = 10000cm²、1a = 100m²、1ha = 10000m²、1km² = 1000000m²、1L = 1000cm³ ……
これを10行も20行も、互いに無関係な呪文として覚えようとしています。人間の頭は、意味のつながらない数字の羅列を覚えるようにはできていません。覚えられないのは、子どもの記憶力の問題ではなく、覚え方の設計ミスです。
単位換算は「長さの0の個数」を2倍、3倍するだけ
覚えるべきは結果ではなく、たった1つの仕組みです。
1km = 1000m。0が3個です。面積は長さ × 長さなので、0の個数は2倍の6個。1km² = 1000000m² です。体積は長さ × 長さ × 長さなので、0の個数は3倍の9個。1km³ = 1000000000m³ です。
同じように 1m = 100cm は0が2個。面積なら4個で 1m² = 10000cm²、体積なら6個で 1m³ = 1000000cm³。
長さの換算は、m、cm、km、mm の4つを知っていれば足ります。そこから先は、平方なら2倍、立方なら3倍。覚える量は一覧表の数分の1になり、しかも忘れても自分で作り直せます。
a と ha だけは、仕組みとあわせて形で覚えさせます。1a は1辺10mの正方形、1ha は1辺100mの正方形。10 × 10 = 100m²、100 × 100 = 10000m²。名前だけ覚えるより、正方形の絵が1枚頭にあるほうが、はるかに崩れにくいのです。
縮尺の面積で差がつく理由
単位換算がいちばん牙をむくのは、縮尺と組み合わさったときです。
縮尺25000分の1の地図で、面積が4cm²の土地があります。実際の面積は何haですか。
ここで 4 × 25000 = 100000 とやってしまう子が、偏差値50台には大勢います。長さを25000倍したら、面積は 25000 × 25000 倍です。しかし、この巨大な数を直接かけにいくのも下策です。
僕が教えている手順はこうです。
4cm² を 2cm × 2cm の正方形とみなす
長さだけを実際の長さに直す:2 × 25000 = 50000cm = 500m
最後に面積を出す:500 × 500 = 250000m² = 25ha
面積のまま換算しようとするから0の個数を見失うのです。長さに戻して換算し、最後にかける。単位換算の作業を長さの世界だけで済ませてしまえば、0を数える回数は激減します。
体積とリットルの単位換算も同じ仕組みで解ける
体積の単位換算で子どもを混乱させるのは、L、dL、mL という「かさ」の単位が混ざってくることです。ここも、結果の一覧を覚える必要はありません。
基準は1つだけです。1L は1辺10cmの立方体の体積、つまり 10 × 10 × 10 = 1000cm³。これさえ押さえれば、あとは長さの感覚で下ろしていけます。1L = 10dL なので 1dL = 100cm³。1L = 1000mL なので 1mL = 1cm³。
容器に水を入れる問題、水そうのグラフの問題では、cm³ と L の行き来が頻繁に起こります。途中の式が cm³ で進み、最後の答えだけ L で求められる。ここで1000で割り忘れる子が実に多い。計算は完璧なのに、最後の1行で答えが1000倍にふくらむのです。
対策は単純で、問題を読んだ段階で「答えの単位」に丸をつけさせることです。最後に何の単位で答えるのかを先に決めておけば、割り忘れはほぼ防げます。単位換算のミスの多くは、換算の知識不足ではなく、換算すべき場所に気づいていないことから生まれます。
単位換算の練習は「マス」に書かせる
最後に、練習の仕方です。単位換算の練習では、数字を横に並べたマスを使います。km、m、cm などの単位を上に並べ、長さなら1マス、面積なら2マス、体積なら3マスずつ位を動かします。0を頭の中で数えず、マスの数で数える。これで「0を1個書き忘れた」というミスが目に見えるようになります。
単位換算が覚えられない、という言葉は、多くの場合「覚えるまでやっていない」という意味です。仕組みを1つ覚え、マスで毎日5分練習する。1週間で決着がつく単元に、半年も悩み続ける必要はありません。
ちなみに、机の前の換算表はそのまま貼っておいて構いません。子どもが見なくなった頃に、壁のしみ隠しくらいの役には立ちます。
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