中学受験の直前期に範囲を絞るのは、万馬券を買うのと同じ

中学受験の直前期に、出そうなところだけに絞りたい。6年生の秋になると、この相談が一気に増えます。
先に結論を言います。絞ってもいい。ただし、範囲を絞るのは万馬券を買うのと同じ賭けです。そしてその馬券を買う資格があるのは、残りを何があってもやり切ると腹をくくった家庭だけです。
直前期に「絞る」とは、出ない方に賭けることでもある
範囲を絞るとは、ここは出やすいからやる、と決めることです。裏を返せば、ここは出ないはずだからやらない、と決めることでもあります。問題は、後者を保証してくれる人がどこにもいないことです。
高校受験や大学受験なら、出題範囲がはっきりしていて、頻出単元を押さえれば戦える場面もあるでしょう。しかし中学受験は、限られた席を大勢で奪い合う、かなり過酷な競争です。
学校側の立場で考えてみてください。毎年同じ単元を出し、受験生全員がそこを対策してきたら、点数に差がつきません。差がつかない問題は、選抜の道具として役に立たない。だから学校は、受験生が手薄にしている単元をあえて出したり、傾向そのものを変えたりします。まんべんなく勉強してきた子が拾えて、山を張った子が落とす問題。入試問題は、そういう方向に作り替えられても何の不思議もないのです。
つまり、頻出単元のリストを信じて絞った家庭ほど、本番で見たことのない形に刺される可能性がある。これが中学受験の直前期に絞ることの、一つ目の危うさです。
「絞って逆転合格」の体験談は、当たり馬券の報告書
ネットを探せば、間に合わないから出る単元だけに絞って受かった、という体験談が見つかります。嘘ではないのでしょう。
ただ、それは競馬で万馬券を当てた人の報告と同じです。当たった人は喜んで書く。外れた人は書かない。同じ作戦で散った家庭の数は、ネットには一行も残りません。
面白い話と、真似していい話は別物です。レアケースを再現性のある作戦だと勘違いした瞬間、親子そろって良質な養分の仲間入りです。
6年の秋に「4教科すべてが不安」は、すでに黄信号
直前期の追い込みとは、本来、理科と社会はこのままで大丈夫、あとは算数だけ、という状態で、1〜2教科に時間を集中させることです。
ところが面談でよく聞くのは、こういう声です。算数の量が足りないのはわかっている。でも国語も理科も社会もあるし、塾のカリキュラムもあるから、算数の復習に時間を回せない。
気持ちはわかります。しかしこれは、4教科すべてが不安だという告白でもあります。4教科全部を同時に追い込まなければならない時点で、戦況はかなり厳しい。だから絞りたくなる。ここまでは理解できます。問題はその先です。
絞ってもいい。ただし「やり切る覚悟」が先
絞った後に残る量は、想像以上に多いのです。算数で言えば、立体図形の切断や込み入った場合の数を後回しにしたとしても、比・割合・速さ・平面図形の典型問題は丸ごと残ります。過去問の解き直しも残ります。範囲を半分に減らしたつもりでも、やるべきことはまだ山のようにある。
ここで家庭は二種類に分かれます。
何があっても残りをやり切ると決めて、戦略として絞る家庭
どうせ全部はできないと諦めて、気持ちを楽にするために絞る家庭
前者の絞り込みは、賭けではあっても勝負になります。後者は、絞った範囲すらやり切れずに終わることが多い。同じ「絞る」でも、中身はまったくの別物です。
そして、やらない理由を「他教科があるから」「カリキュラムがあるから」と並べ始めた時点で、その家庭は後者に近づいています。足りないことは分かっている。それでも理由をつけて手をつけない。これが直前期で一番危ない状態です。
「できない」と線を引いているのは誰か
もう一つ確認させてください。うちの子には無理だから、と線を引いているのは、子どもでしょうか。それとも親でしょうか。
受験するのは子どもです。子どもが弱音を吐くのは当然です。まだ12歳ですから。しかし親が先に無理だと決めてしまったら、子どもが踏ん張る理由はなくなります。
完璧にできないからやらない、ではなく、少しでも追いつくためにやる。完璧主義の保護者ほど、この切り替えが苦手です。全部できないなら意味がない、と考えた瞬間に手が止まる。子どもが無理だと感じている場面でも、親だけは最後までやり切る側に立っていてください。それが直前期の親の、ほとんど唯一の仕事です。
明日から親がすべき非情な決断
まず、4教科のうち、このまま放っておいても崩れない教科を親子で一つ決めてください。そこに使っていた時間を、思い切って削る。浮いた時間を、足りないと分かっている教科に回す。
この決断ができないなら、範囲を絞る資格はまだありません。万馬券を買うのは自由です。ただし買うなら、残りの時間を全部その馬に注ぎ込む覚悟とセットでどうぞ。
中学受験の直前期に範囲を絞るのは、やり切る覚悟を決めた家庭がやって初めて勝負になります。何を残し、何を捨てるかを志望校の過去問から逆算して決めたい場合は、僕のマナリンクのプロフィールにある「【小6直前期】過去問分析×得点設計|志望校別の算数戦略」をご覧ください。事前のご相談やお試しの診断から始めることもできますので、まずは現状を一緒に確認するところからどうぞ。
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