私立高校入試から見る東京都高校入試制度 ※主観的で少々偏りのある内容です(学校などは多摩地域向け内容になってます)

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2023/9/20

~はじめに~

【私立高校入試制度から見る高校入試の意味】

東京都の高校入試を理解するうえで、実は重要になってくるのは「私立高校の入試制度」への知識です。

というお話をすると、「うちは都立志望なので、私立はあまり考えていない」というようなお返事が返ってくることもままあります。

 私(塾側)からすると、「だからこそ私立入試について調べておくべき」といつも感じています。というのも、都立高校の入試制度は耳にする機会が多いのに比べ、私立高校入試について詳しく説明している資料やサイトは少ないのが現状だからです。つまり、意識して調べていかないと押さえておくべき情報を取りこぼしやすいと言えるでしょう。

 もう一つ、現在のトレンドとして、実は東京都で見ると私立高校志望の生徒は増加傾向にあります。これは、「大学付属の魅力」「推薦入試の魅力」「指導の手厚さ」「東京都からの補助金」など様々な要因があります。地域によっては(特に都心部)、私立志向が強く、早い段階で入試制度や学校を調べています。多摩地域(特に日野・八王子・青梅など周辺)にいると、そういった話題はあまり挙がりません。(東京全体から見ると、この地域がむしろ特殊と言えるかもしれません)

 逆に言えば、この地域では、学校情報や入試制度について少し詳しく知ることで、選択肢の幅を大きくすることが出来るとも言えます。(他の地域で指導していた時「日野地域はもったいないなぁ…」と例年思っていました。)

 興味関心の薄い話かもしれません。あまり聞かないような、異なった視点からの情報はなかなか受容しにくいとも思いますが、少しでも参考にしてもらえるとありがたいと思っています。


《私立高校入試制度概要》 ~入試形態は学校によって様々。ポイントを押さえることが大切~

■日程・選抜方法

① 推薦入試:1月22~24日

⇒単願推薦は大きく分けて2タイプ・

(a)内申基準をクリアすればほぼ100%合格の学校

(b)内申基準をクリアしても不合格になる学校


② 一般入試:2月10~13日(他県はもっと早い入試日。13日以降の日程も存在)

⇒多様な入試制度があるが、大きく分けて2タイプ

(a)併願優遇:この制度を理解することが高校入試の最重要ポイント

(b)フリー受験:挑戦する価値は十分ある


【各選抜方法についての説明】

①(単願)推薦入試について

推薦入試とは「その学校が第一志望であり、合格したらその学校に進学する」ことが前提となります。(つまり合格したら他校は受験できない)各高校によって、内申や特記事項の基準が定められ、その基準をクリアしていれば推薦を受けることが可能となります。試験内容は「作文・面接」が多く、基準をクリアしていればほぼ100%合格出来る学校がほとんどです。「基準重視型(基準クリアでほぼ100%)」

 ここまではイメージしやすい内容ですが、実は、推薦入試には「基準をクリアしていても不合格になる」タイプの学校があります。例えば、明治大学付属明治高校は、HPなどで確認すると、推薦入試の倍率が2倍以上あります。この学校の推薦入試では、一定の内申基準をクリアすると適性検査(試験問題)を受けることになります。その時の得点次第で合否が決まります。つまり

■出願基準を満たす

■適性検査(入試問題。ただし一般受験のものより簡単な場合が多い)で得点する

この2つを満たして初めて合格できます。推薦入試と言っても、簡単には合格できないということです。

こういった「出願基準型(基準クリアでも高倍率)」の推薦入試制度は、近隣では中大付属、明大八王子、法政大学高校など、難関上位校に多く見られます。

 この「出願基準型(基準クリアでも高倍率)」の学校の推薦入試を受験し不合格になった場合、一般入試で再度受験すると、その際に優遇措置がある学校が多いです。また、都立入試を受験することも可能です。


(私立高校推薦入試まとめ)

・内申と特記事項などで基準が設定

・基準重視型(基準クリアでほぼ100%)と、出願基準型(基準クリアでも高倍率)がある


②一般入試について

(a)併願優遇制度について ※高校入試で最も重要なポイント

この制度の理解が、高校入試における最重要ポイントの一つになります。少しでも早くこの制度を理解しておくことで、選択肢の幅を広げることが出来ます。

まず、「併願優遇制度」とは、「第一志望の都立高校や他の私立高校が不合格だった時の保険」と思ってください。極端な例えですが、もし、受験した学校が全て不合格だったとすると高校生になることが出来ません。この制度はそれを防ぐための制度です。「併願優遇制度」を使えば、その私立高校の入試において、ほぼ100%の合格が約束されると思ってください。

 実際、高校受験をする生徒のほぼ100%が、この「併願優遇制度」を利用します。中学三年生になると、中学校や塾での進路相談があります。誤解を恐れずに書くと、進路相談においては「どの都立高校を受験するか?」よりも「きちんと併願優遇校があるか?」の方が重要なポイントです。

※担任の先生の立場を想像して下さい。「併願優遇制度を利用する受験校が無い」=「保険が無い」

つまり、「その生徒は、もし入試で不合格だったら、高校生になれない可能性が生まれる」ということになります。これは絶対避けたいと考えますよね。


ここからは具体的に説明していきます。「併願優遇制度」は各私立高校で内申基準が設けられています。その基準を満たすことで「合格をほぼ100%約束」してくれます。

以下は、この地域で利用されることが多い「八王子学園八王子高校」の2024年度入試用の要綱の抜粋になります。これを例として見ていきます。


入試相談基準

コース・クラス 併願

文理コース 特選クラス 入試相談なし

特進クラス 9科41 or 5科23 or 3科15

進学クラス 9科37 or 5科21 or 3科13


 八王子高校は、「文理コース」と「総合コース」に分かれ、「文理コース」がさらに3つのコースに分かれています。(同じようにコース分けされている学校は沢山あります)


例えば「進学クラス」の場合、【9科37 or 5科21 or 3科13】と表記されています。

この表記が、併願優遇を受ける場合の基準です。用いるのは中学3年時の2学期の成績(内申)です。

もし学校の成績がオール4だとすると、4×9教科=36 つまり1足りないので併願優遇を受けることが出来ないということになります。

欄外に、加算ポイント【英検・漢検・数検(各3級以上)…9科にのみ最大1ポイント加算】の表記があります。これを加味すると…

内申がオール4、かつ英検3級を持っていれば 4×9教科+1(加算ポイント)=37

となり、「優遇を受けることが出来る」=「八王子高校の進学クラスはほぼ100%合格できる」ということになります。

また、【9科37 or 5科21 or 3科13】の3つの基準が「or」で結ばれています。これは、3つのうちどれかの基準を満たせば優遇措置を受けることが出来るということを意味します。

※学校によっては「and」の表記もあります。この場合、全ての条件を満たす必要があるという意味です。

「英検などの検定を持っていると入試で使える」「部活動などをしっかりやっておくと入試で評価される」という話を聞いたことがあると思います。ここで各種資格などが生きてくることになります。

また、特選クラスには入試相談がありません。これは、「中学校の成績ではなく、本当に学力があり上を目指す生徒」を募集しているというメッセージととらえることが出来そうです。

必要な内申基準や、加点措置などは各私立高校によってことなります。よって、一つ一つ調べていく必要があります。これが高校入試における押さえるべき大きなポイントです。


 「併願優遇制度」については、他にも理解しておくべきポイントがあります。ここをしっかりと理解することで選択肢の幅が広がり、入試制度の活用が出来ます。ちなみに保護者会などでお話しした際、都心に近いエリアと多摩地域で一番反応が違うのがここから説明するお話です。(正直、多摩地域ではあまり聞いて頂けないことが多いです。だからこそ、逆にチャンスと感じています)


■併願優遇は中学校を通じて行われる

⇒中3の12月初旬に中学校で進路相談が実施されます。この時に中学校の先生を通じて手続きしてもらいます。なお、中学3年生は例年、11月末~12月初めに「仮内申」が出ます。これを元に優遇措置の基準に足りているかを確認していきますが、手続きの〆切が12月15日なので非常にタイトなスケジュールになります。近隣中学校の例年の動きの参考例ですが、


11月30日:中学校から仮内申の通知(ここで入試に使う「内申」が判明)

12月1日~10日:中学校での個別面談。ここで希望する学校の併願優遇をお願いする

12月15日:併願優遇手続き〆切


内申の告知から併願優遇手続き〆切まで約2週間となります。この時、希望する学校の内申基準に達していれば良いのですが、もし足りなかった場合、他の併願優遇校を探すことになります。アタフタしないためにも早めに学校情報を集め、事前にいくつかのプランを考えておく必要があります。


■併願優遇を受けても、他の私立(もちろん都立高校も)を受験することが可能

⇒併願優遇をすると、都立高校しか受験できない。つまり、都立高校&併願優遇私立1校しか受験できないと思っている方がいます。実際にはほとんどの場合、他の私立高校を受験することが可能です。つまり、「都立高校&併願優遇私立1校&他の私立高校」というように3校以上受験できるということです。

例えば、内申基準の説明で例に挙げた「八王子高校」の場合、都立・他私立両方受験可能になっています(要は、「八王子高校」は第三志望で構わないということです)

 

具体例としては、

第一志望都立〇、第二志望私立〇、八王子高校(併願優遇)〇:第一志望都立へ進学OK

第一志望都立✕、第二志望私立〇、八王子高校(併願優遇)〇:第二志望私立へ進学OK

第一志望都立〇、第二志望私立✕、八王子高校(併願優遇)〇:第一志望都立へ進学OK

第一志望都立✕、第二志望私立✕、八王子高校(併願優遇)〇:八王子高校へ進学OK


多くの学校が、第三志望での併願優遇を認めていますが、そうでない学校も一部あります。

例えば多摩地域だと「明星高校」の場合「本校が第二志望であること」との条件が付いています。つまり、明星高校を併願優遇した場合、「都立高校を受験するか」または「他私立を1校受験する」かになります。(明星高校+他1校まで)

 このように、併願優遇措置をする学校によって基準が定められています。


■併願優遇の学校は入試当日に試験を受ける必要がある

⇒これも意外と勘違いされる方がいますが、併願優遇を受けた学校は実際に入試を受けに行きます。

 つまり、「試験を受ける前に既に合格はほぼ約束されているが、それでも他の受験生と一緒に試験は受ける」ということです。仮にそこで一般受験生の合格点に達しなかったとしても、優遇措置があるため合格となります。


(併願優遇制度まとめ)

・必ず1校は併願優遇を取る⇒多くの学校で、他校を複数校受験することも可能

・内申基準が設けられている(学校ごとに設定)

・特記事項には「英検などの検定」や「部活動や生徒会活動」などの加点要素

・試験当日に受験をする

・12月の中学校での面談で併願優遇校を決定する⇒日程がタイトなので事前準備が必要


(b)フリー受験について

 「3教科(英数国)の得点が合格ラインを越えれば合格」という最もシンプルな受験形態です。

基本的には、内申点は関係なく、当日の得点のみが合否判定に用いられます。つまり、オール3の生徒もオール5の生徒も同じ土俵での勝負になると言えます(学校によって例外あり)。

 目指す学校や、進学先として考えられない学校を無理に受験する必要はありませんが、このフリー受験をすることで選択肢の幅が広がる可能性は大いにあります。同時に、フリー受験を組み込むと、受験日程の戦略が必要となってきます。押さえておくべきポイントを3つ挙げます。


■同じ日程で複数校の受験は出来ない(1日あたり受験できるのは1校)

■併願優遇(保険)さえしっかりしていれば、不合格で失うものは無い(受験費用と悔しさはありますが…)

■フリー受験校を選択肢に入れても、都立対策に大きな支障は無い(むしろプラスに働くことも多々ある)


 よく頂く質問で「都立に絞った方が都立の合格可能性が高まるのでは?」というものがあります。私の経験上、多くの場合は「むしろ都立受験にも良い影響があることが多い」です。というのも、都立高校受験前に本番を経験しておくことは価値があるし、私立高校受験の合格を目指して勉強をすることが都立高校の3教科にも良い刺激になるからです。(都立高校の合否は目安ラインしか分かりませんが、私立高校の場合は合否ラインが明確なことが多いので、よりシビアな得点感覚を養えます)


(私立高校フリー受験まとめ)

・当日の得点が合格ラインを超えれば合格

・内申基準なども基本的に無し



【都立高校入試制度について】

都立高校の入試制度は、複雑に見えて実はシンプルと私は考えています。その理由は

・入試日程が1つしかない⇒受験できる学校は最終的に1校

・自校作成校の3教科を除き、全員同じ共通問題⇒どこを目指しても、やるべき勉強は同じ

・出願までの日程⇒入試に用いる内申が出るのは12月、出願は2月初旬(差し替えもある)

都立高校受験の制度(内申点の換算方法など)については、様々なサイトや資料に説明があります。よって、ここでは制度説明は簡素にし、上記3点を踏まえながら以下、私の主観的意見を説明していきます。

この資料は、私立高校入試をメインの切り口としているので、都立高入試を違った視点から見てみます。

※まれに「先生は都立より私立推しなのですか?」という趣旨のご質問を受けますが、そういうつもりはありません。むしろ私立の入試を知ることで、都立の見方が広がりチャンスが増えると思っています。


《都立高校入試》 ~基本的にはどの高校も制度は同じ~

■日程・選抜方法

①推薦入試:1月26,27日

⇒調査書(内申)+作文+面接+(集団討論)

②一般入試:2月21日

⇒内申点(300点換算)+当日得点(700点換算)+スピーキングテスト(20点分)



【各選抜方法についての説明】

①推薦入試:1月26,27日⇒調査書(内申)+作文+面接+(集団討論)

都立推薦入試は制度上で言えば、誰でもどの高校にも出願することが出来ます。高倍率の学校が多いため、合格率が高いとは言えません。合否の現状について塾や学校は過去のデータを持っています。以前と比べ、面接や作文などで逆転できる幅は広がっているものの、目安となる内申点に届いていないと厳しいのが現状です。


②一般入試:2月21日⇒内申点(300点換算)+当日得点(700点換算)+スピーキングテスト(20点分)


 よく「都立はどこが良いでしょう?」という相談を頂きます。もちろん、最終的にはその生徒の学力、内申など総合的に考えて判断するのですが、どの都立高校を受験しても、基本的にやるべき学習は変わりません。内申点と学力点の合計で決まる以上「内申対策⇒定期テスト&日頃の授業」「入試問題対策⇒共通問題なので同じ」ということです。(自校作成校の3教科は変わります)。もちろん、入試直前になれば、各自の必要得点に合わせ細かい対策を行います。ですが、それは十分に学習が進んでからのこと。都立を悩む前に、「私立高校の併願優遇をどうするか?」「私立フリー受験を含めた受験日程化」を考えるくらいで良いと個人的には思っています。

■内申点1=当日点5点分程度(これは正確には主要5教科なのか実技教科なのかでも変わってきますの

であくまで目安です)とすると、内申の重要性とともに当日点を上げる重要性も見えてきます。

■自校作成校は3教科が独自問題のため難易度が高く、平均点も低くなります。


【都立高校入試の少し異なった視点からの見方】~テクニカルな面を交え~

《日程》

毎年、都立高校入試で最も気にしているのは「願書取り下げ」の日程です。

都立高校は一度だけ「願書取り下げ⇒再提出」が出来ます。これは、2月初旬に自分が願書を出した高校から、一度だけ志願変更できるという制度です。ちなみに、2023年度受験では、2月13日が取り下げ日でした。つまり、この制度を用いると「都立高校の最終決定は2月13日」と言い換えることも出来ます(日程は年度によって変わります)。では、この制度をどのような場合に使うのか?以下の2つが考えられます。


①応募倍率を見て、倍率の低いところに変更する(一昔前のこの地域では、日野・松ケ谷・富士森の間で、倍率を確認してからの差し替えが良く見られました。)

②私立高校の結果を見て受験する都立高校を変更する


①については、この地域ではよく見られた一般的な用いられ方です。倍率次第では裏目に出る(低倍率の学校に差し替えたら、かえって高倍率になってしまった)こともあります。

②は少しテクニカルな動きになります。現在、多くの私立高校は、入試当日あるいは翌日に合否が発表されることが多いです。2023年度を例で言えば「2月13日までに判明した私立高校の合否(=12日までに受験したほとんどの私立高校)を見て都立高校を最終決定できる」ということになります。

 イメージが湧かないと思いますので、過去にあった具体例を挙げます。


■内申オール4。都立自校作成校(八王子東)を受験しようか共通問題校(日野台)悩んでいたA君

 A君は中3から塾に通い始め、急激に学力も内申も伸びました。当初は考えていなかった都立「自校作成校」も視野に入ってきました。しかし、あと一歩成績が足りない状況。そこで、私立入試の日程を都立への試金石と位置づけ作戦を考えました。

2月10日:桐朋高校(多摩地域男子トップ) をフリー受験で挑戦

2月11日:八王子高校(併願優遇) を併願優遇で保険

その上で、桐朋高校〇⇒都立八王子東(自校作成) / 桐朋高校×⇒都立日野台高校(共通問題)

と決めました。

これは、願書取り下げの日程までを考慮すると可能な作戦となります。

ちなみに結果は桐朋高校〇、八王子東高校〇でした。(もちろん併願優遇の八王子高校は〇)


私立の制度を知り、都立の願書取り下げ再提出までを視野に含め、フリー受験で選択の幅を広げることでこのような受験をすることが出来ました。

 このようなテクニカルな受験をし推奨するわけではありませんが、入試を知っていることで選択肢の幅が広がる一例として理解頂ければと思っています。


【塾(私)からの少し特殊な視点】

《都立高校入試は果たして内申の不足分を学力で克服できるのか?》

 内申は足りないが学力はあるという生徒が内申の不足分を当日点(学力)でひっくり返そうというケースがあります。可能かどうかを問われれば「Yes」ですが、それには飛びぬけた学力が必要です。以下は完全に私個人の視点と経験になります。

 内申の不足分を学力で補うためには当然、その学校の受験者の中でも飛びぬけた実力を付ける必要があります。少しの内申差なら埋めることも見えてきますが、大きく差が付くと当然苦しくなります。

 まずは共通問題の学校ですが、特に近年の上位校、近隣の具体例で言えば「日野台、昭和、町田、小金井北、調布北」などは内申ギャップを埋めるのはかなり難しいです。というのも、これらの学校は「内申点&当日点ともに高得点勝負=他の受験生も高得点を取るのでギャップを埋められない」からです。

 これらの学校の一つの目安として「オール4・400点」(小金井北や武蔵野北だと、これでも足りないように感じる)というラインがあります。当日点で400点以上(8割以上)をコンスタントに取るのは、かなりの学力上位であってもなかなか難しいと思います。ちなみに、過去、ほぼオール3で町田や小金井北に合格した生徒が居ました。それらの生徒は本番で450点以上取ってきました。オール3で都立駒場を受験した生徒は430点ほど取りましたが不合格でした。

 もう少し難易度が下の学校になると、内申ギャップを埋めるチャンスとなります。というのも、都立中堅ラインは、入試データを見ると合否ラインにかなり幅がある学校が多くあります。つまり、少なくない割合の生徒が、当日点を上手く取れていない(それでも合格することもある)ので、内申ギャップを埋められる可能性があるということだと感じています。

 自校作成校は3教科の難易度が高く、平均点も低くなります。理屈で言えば「他の受験生が解けない問題を解ければ、差を埋めることができる」ということになりますが、各中学校のツワモノが集まる入試において頭一つ抜けることは並大抵ではありません。ですが、不可能でもありません。

 過去の例で言えば、近隣高校ですと、「オール3八王子東合格」「オール4未満で都立国立や立川合格」は何度も経験しています。(ちなみに、オール4未満で国立に合格した生徒はそのまま東大に合格でした)

 突き抜けた学力で内申ギャップを埋めるためには「何としても合格したい」という意思が重要になります。「同級生で同じ高校を受ける〇〇は~」というレベルを超える必要があります(そういう受験生たちより一歩抜きんでた学力が必要な訳なので…)


《私立高校のフリー受験は受かるものなのか?》

 この質問も良く頂きますが、ごく簡素にまとめると、「大学付属や難関上位校は簡単には合格できません。しかし、中堅校や進学校タイプは大きくチャンスがあります」「それは、倍率を見れば明らかです。前者は2~3倍(あるいはそれ以上)近い倍率なのに対して、後者は1倍台がほとんどです」とお答えしています。また、難関上位校受験者は学校情報や入試制度なども詳しいことが多いですが、中堅校受験者は比較して入試制度に対しての知識が浅い(失礼な言い方になりますが…)ことも多いので、逆にこちらが学ぶことでチャンスを広げることにも直結します。



【私立で勝負をかけた生徒たちの受験パターン例】

ここからは、過去に実際あった入試例を、具体的に紹介します。今回のテーマは私立高校入試をメインに据えているので、変則的、挑戦的な受験パターンを中心に紹介します。何かの参考になれば幸いです。


(難関上位校受験の王道) Sくん 偏差値70・素内申44

日程  1月  2/1   2/10  2/12   2/13  都立

学校  拓大一 立教新座 桐朋 明大明治 慶應義塾 国立

合否   〇   〇   〇   〇   〇   ◎

まずは、この地域の上位校受験の王道パターンと言える例です。もう20年近く前の生徒になります。

部活を一生懸命にやっていた生徒だったので、本格的受験勉強のスタートは遅かったですが、驚異的な伸びを見せてくれました。自己管理と目標設定能力が非常に高く、保護者の方も高校入試を通過点として捉えており、自信を付けさせたい(あるいは悔しい思いをさせたい)という考えもありました。

 1月の拓大一高は今でいう併願優遇の学校ですが、今の入試制度にはありません(1月入試は廃止されました)。また、慶應義塾も現在は2/10が試験日です。「時代とともに入試制度は変化する」の例として捉えてください。

 色々なこと(入試直前に入院、拓大の入試では名前を書き忘れる、桐朋の入試では文章題を丸丸読み違える、慶應の一次合格証(二次試験受験票)を受け取り忘れる)がありましたが、結果全勝し、都立高校に進学しました。


(MARCH付属狙い) Fくん 偏差値60・素内申5科22、9科35

日程  1月(推薦)   2/1   2/10   2/11    2/12    書類(併願) 都立

学校  明中八王子 立教新座 中大付属 明中八王子 明大明治   桐蔭   無し

合否        〇    ×    ◎     ×     〇

 MARCH付属、特に明治大学の付属にあこがれている生徒でした。ただ、しょうしょうヤンチャタイプで、学校の成績が取れる気配は無く、一般入試での勝負となることは明らかでした。受験勉強には真剣に取り組む様子も見られ、中3始めの偏差値は50~55程度でしたが、60前後まで辿り着きました。

MARCH付属のチャンスを掴むための戦略は主に3つでした。

①明大中野八王子の推薦基準を取る(9科34)⇒明八は出願基準型のため、基準ギリギリの生徒はまず不合格だが、一般入試に再度挑む際に加点措置がつくため。

②日程を出来る限りフルに使う⇒数打つことで合格可能性を上げる。日程を横に見て広げる。

③桐蔭の併願優遇を取る⇒桐蔭学園は書類選考入試(基準に達すれば無試験で合格)があり、これが取れれば、MARCH付属に充てる日程を確保できる。9科基準は厳しいので、5科基準+英検準2加点狙い

 学力的には粗さがあるものの、上位校の問題にも対応していける力を秘めているとは当初から感じていました。期末テスト後は理科社会の勉強を止め、その時間を3教科(特に数学)に振り分け、退路を断って勉強しました。早い段階で立教の合格が取れたのが大きく、あまり気負わずに2月10日~の受験に臨めました。


(大幅に内申は足りないけど…) Mくん 偏差値58・素内申29

日程     2/10       2/11    2/12    都立

学校   杉並学院(併願優遇) 八王子(選抜) 明大中野   西

合否      〇        〇     ◎     ×

Mくんは内申が取れず、中3二学期の内申は9科29(オール3+4が2つ)でした。定期テストの得点もそこまでひどくなく、素行もまじめな生徒でしたが、あまり積極的とは評価されないタイプで、内申はずっと上がりませんでした。模試の結果も悪くはなかったのですが、飛びぬけた数字とは言えません。ただ、指導していてキラリと光るセンスを感じてはいました。この生徒なら、難関校の問題も対応できるようになるんじゃないか…という思いがずっとあり、面談で何度か私立一般入試でチャンスを広げようという話をしていました。

 ただ、保護者の方は「都立志望なので」ということでなかなか取り合ってもらえず(というより「私立一般受験で挑戦してもまず受からない」と思っていたと思います)、最終内申が決まってから「やるだけやってみるか」と親子ともに腹をくくった感がありました。

 10日は内申基準に届く杉並学院を併願優遇、11日は八王子高校をフリー受験、12日は明大中野をチャレンジしました。「ホップ・ステップ・ジャンプ」のイメージです。

 結果は見事私立全勝。明大中野は男子校的な出題傾向(単語や数字が難しい。記述少な目など)で平均点が低いことも多く、ハマればチャンスがあるとは思っていましたが、合格出来て嬉しそうでした。

 余談ですが、保護者の方は明大中野合格時点で十分すぎる結果として受験終了の意志でしたが、本人は都立西高を受験しました(もちろん不合格です)。本人曰く「西高校以外の都立なら受かってもいかないけど、西に合格出来たら行く」とのことだったので、気持ちよくチャレンジして終了です。


(併願優遇無し) Sさん 偏差値70 内申参考値

日程   2/10    2/11   2/12   2/13

学校   桐光   桐光     筑波大付属

合否    〇    受験せず      ◎

中高一貫私立の学校などから外部受験をする際には制約があることもあります。特殊例であまり参考になりませんが、こちらは併願優遇無しの受験パターンです。ただ、相当の力を持っている生徒なら優遇が無くてもフリーで合格できると踏んで受験パターンを組むこともあります。(本当にトップ校レベルになると、併願優遇制度はあまり…となりがち)その一例です。



(多摩地域の王道パターン) Kさん 偏差値68・素内申39

日程    2/10   2/11      2/12    2/13    都立

学校  早稲田実業 帝京大学(併願) 明大明治  学芸大附属  国立

合否    〇     〇     受験せず   ×     ◎

多摩地域の私立高校のトップの一つ「早稲田実業」を組み込むと、このような形の受験になるケースが多くあります。付属を考えるなら、早慶付属、明大明治や青山学院を組み込む。進学校を考えるなら、桐朋、国学院久我山などを組み込む形が多いかと思います。また、13日は国立の学校の入試です。国立(こくりつ)高校はまた一味難易度が違う、まさに最難関です。

 ちなみに、国立高校の入試は5教科です。英数国はもちろん、理社も都立高校より高度なものが出題されます。国立高校の対策をすることで、都立高校の合格率も上がる(自然と必要学力を越える)ことが多いように感じます(元々力のある生徒たちが挑戦する学校なので、当たり前のことでもありますが)

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