#22 共通テスト国語 実用的文章

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2024/12/21

はじめに

この記事では、来年1月18日・19日に実施される新共通テストの国語第三問「実用的文章」について、授業指導を行った所感の一部まとめる。具体的な解説は問題文を伴う必要があるため、ここでは触れないが、学習のポイントを整理する意味で、本年度の受験生、来年度受験の高校二年生の学習の参考にして欲しい。


新共通テスト国語の変化

旧共通テスト(80分)

  1. 評論(50点)
  2. 小説(50点)
  3. 古文(50点)
  4. 漢文(50点)


新共通テスト(90分)

  1. 評論(45点)
  2. 小説(45点)
  3. 実用(20点)
  4. 古文(45点)
  5. 漢文(45点)


時間配分が落とし穴

大問三に実用的文章が増えた結果、もともとあった大問から5点ずつ移動し、解答時間が10分延びた。共通テスト(以下共テ)は個人個人解答が必要な大問に差があるが、現古漢、現古での解答が必要な受験生は、大問三が増えた結果として時間配分で失敗するケースが多かったように思う。


徐々に難しくなる模試

新形式の共テ国語はまだ実施されていないが、文科省が試作問題を発表しているため、年度初めはそれを踏襲する模試が多かった。しかし、模擬試験が回を追うごとに、徐々にアレンジがなされ、制限時間内に解答するにはいささか仕事量が多いな、と感じるものも増えた。


文科省試作問題

模擬試験と共通テスト本試を比較すると、模擬試験の方が難しい事が多い。

本年度途中、実用文で割を食ったと思う受験生は、一度文科省の試作問題に立ち返ってみて欲しい。出題はあくまでも大学入試センターによるものであるからだ。

https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7/r7_kentoujoukyou/r7mondai.html


以下の内容は、一度試作問題に目を通してから見てもらうと効果的だ。


「実用的文章」ってどんなものか

実用的文章とはどんな問題なのか。これから対策を始める高校一年生、二年生にも分かるように少し例えを使って説明したいと思う。


たとえるなら「間違いさがし」

サイゼリヤというファミレスのメニューに「間違いさがし」があるのはご存じだろうか。右と左に似たようなイラストが並び、その二つの「差異」を発見するお遊びである。誰でもどこかで一度はやったことがあるはずだ。これを「イラスト」ではなく「文章(選択肢)」と「資料」とでやろうと言うのが「実用的文章」だ。


やることは「見比べる」作業

つまり受験生の仕事は『見比べる』ということになる。


右と左のイラストをそれぞれ、以下のように考える。

  • 「文章」と「図表やイメージ等、資料」
  • 「選択肢」と「図表やイメージ等、資料」
  • 「文章」と「選択肢」


見比べた結果左右同じなら「正しい」、左右で違っていたら「誤っている」となる。

実用文に特有の「判断できない」という選択肢もあるが、これは解答の裏付けとなるような「見比べる対象が問題内に無い」ということなので、間違い探しのイラストがどちらか隠されているような状態と思えばよい。これでは、正とも誤とも言えない。


よく考えると特殊なテストではない

このように「文章」や「選択肢」と「図表やイメージ等、資料」を見比べるという、非常に単純な問題なのだが、もともと記号解答の国語はどれも「本文内容」と「選択肢」を見比べる作業なのであり、実は特殊なことではない。



では正答率を改善するには?

失敗の原因

作業は非常に単純なはずなのに、得点できない原因は「時間制限」である。実用文の問題が難しく、失敗してしまう場合には、以下のようなことが問題だった。


  1. 見比べる部分の特定に時間がかかる
  2. 見比べる作業が複雑で時間がかかる


模試や問題集の見直しをするときのポイントは、このどちらでつまづいているか自己分析し、問題点の切り分けをすることだろう。


[1.]の原因なら、文章や資料の「タイトル」や「内容と形式」について全体をざっと把握すべきだ。例えば「1960年代から1970年代初頭にかけて」と選択肢にあるなら、「年度別に変化を示した資料」がないか確認する。なければ判断できないし、あれば、あとはきちんと見比べるだけだ。


[2.]の原因が、2024年後半の模試では多かった。例えば、見比べる資料は特定したが、その資料内の情報量が過多で、その資料内のどこを見るかさらに検討しなければならないもの。または、資料に対して「変化の比率を読む」等、大雑把ではあるものの数的な処理が必要なもの等だ。


実用文の構成要素

少し話が細かくなるが、実用文の問題に含まれる要素は概ね以下に分類できる。

  1. 文章(メインテクスト)
  2. 図解
  3. 目次やレポート、ノート
  4. グラフ・統計情報
  5. 記事引用


メインテクストとサブテクスト

国語読解の問題であるから【文章】は読まざるを得ない。中には【文章】を読まなくても解答できる問題もあっただろうが、常にそうではない以上【文章】は読むべきだ。これを【メインテクスト】とする。そこに2~5の【サブテクスト】が加わるが、この時「文章を読みやすくフォローする資料」「何を読み取るか決めてから読む資料」に分けて考えるのが望ましい。


サブテクストを分解

通常は図解や目次、生徒が作成したレポート等は、文章の展開や小見出し、因果関係の整理をしてくれて、受験者に都合が良い。一方、グラフや統計情報は「何を確認したいのか」が明確でないと、情報過多で的が絞れず、単に眺めるだけになってしまうだろう。共テ実用文の問題は「グラフや統計情報の特徴的な部分に着眼せよ」という意図ではなく、「選択肢の情報が正しいか否かを判断できる部分に着眼せよ」という意図なので、特殊なグラフの読み方を学ぶ必要はない。もし、それが必要となればもはやそれは国語科ではないからだ。


大切なのは、文章や資料を冗長に読解するのではなく、問題を解くことに軸足を置き「どの資料のどこを、どんな観点で確認すればいいか」を設問から読み取ったうえで、解答の根拠を捜索することである。これが[2.]の対策になるだろう。


最後は国語総体での得点を増やす

と、ここまで実用文についてあらまし、対策の観点を示したが、実際に時間配分に失敗した受験生の失敗とは「実用文で得点できなかった」というよりも「実用文に時間を使いすぎて、読めば得点できるはずの、現・古・漢が解ききれず終わった」というものだ。


もともと共通テストは時間との戦いなのであり、評論・小説・古文・漢文の四つにも余裕があったわけではない。重要なのはこの点で、実用文の解答に10分を大幅に超える時間を使ってはならない。実用文の解答時、特に時間経過に気を遣おう。時間を気にしすぎて内容に集中できない場合は、解答順を工夫し実用文は最後にもっていくのが良いのではないだろうか。


  • *古文→漢文→評論→小説→実用文
  • 評論→小説→*古文→漢文→実用文


解答順があまりにも複雑だとマークミスを誘発するので、実用文を最後にもっていく場合には*を付した古文の解答時、解答番号にずれが無いかきちんと確認してもらいたい。また、実用文に十分時間が使えなかったとしても、必ず解答を書くこと。


直前期を迎え、準備も追い込み。

時間配分を制し、国語を制して欲しい。

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