#3 「認知の歪み」とは?②

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2022/4/12

前回は、「認知の歪み」について概要の説明と自閉症スペクトラムにおける「こだわり」との関連性について考察してきました。今回は、具体的な例と対応策について考察したいと思います。

皆さんは自分にとって嫌なことがあったときに、どのように感じるでしょうか。

「どうしてこんなことするの?ムカつく」と思う方が大半であると思います。一方で嫌なこと自体が実際は「怒るまでもない些細な出来事」であったことに後々気づく方も多いのではないかと思います。さらには、冷静になって考えると「何でここまで怒ってしまったんだろう」と思う方もいるかもしれません。

例えば

例1) 自分が考えている通りの行動を相手がしないケース

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 AさんがBさんという人にlineやメールで約束の日時や場所を相談するメールを送ったとしましょう。送り主のAさんは予定を考えたり服装を考えたりするので、すぐに返事が来ると考えます。Bさんは忙しくてそのうち返事をしようと思ってメッセージを受け取った後には返事をしませんでした。こうした間にAさんはどんどんと自分で考えていた約束の日時が近づくにつれてBさんの返事が来ないことにイライラしてきます。そして、許せないと思うことがあるかもしれません。

例2) 予定外の人の登場

 AさんとBさん二人でご飯を食べに行く約束をしていました。しかし行ってみると、偶然会ったからとBさんが共通の友人Cさんを誘ってつれてきていました。Aさんは予定にないCさんの登場に戸惑います。とりあえず一緒に食事はしてやりすごしますが、食事が終わると早々に帰ってしまうのです。場合によってはお金だけをおいて途中で帰ってしまうこともあります。このケースでもAさんは実は不安定な気持ちになっています。

認知の歪みが大きいと「~であるべきはずなのに」といった思考になりがちです。そして、「こんなことがあったら嫌だ」と思い込んでAさんとBさんは疎遠になっていくかもしれません。元々持っている性格や特性によりこうした認知の歪みが起きやすい人に自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった診断を下される人も多くいます。一昔前では自閉症は言語発達の遅れや自己表現ができない、知能指数も低めといった印象であったかもしれませんが現在では言語の遅れがない・知的の遅れがない方も多く存在し、対人面や社会面において困難さを感じる方も多くいます。

こうした、いわゆる「発達障害」と言われる障害は一括りにされることが多いですが、平均的な性格から少し逸脱したケースから、専門的なカウンセリング・ハビリテーションが必要なケースまで多彩であります。言い換えると、グラデーションのように特性の発現の仕方に濃淡があります。理想を言えば、「違って当たり前」の世界になれば、こういった方々の困難さは軽減されるものの、実際は学生時代からのカリキュラムのように画一性や同一性が求められる、他の人に対する心の余裕が持ちにくい社会構造になっているのが現在の日本ともいえます。

では、こういった「認知の歪み」で困っている、困っている人が周りにいる時にどうすればよいのでしょうか。

①認知行動療法を検討する

 認知行動療法は行動を1つ1つ分析し、どういった行動をするのか好ましいかを考えていく行動変容プログラムです。(プロの人が見たらざっくりしすぎているかもしれませんが)認知行動療法を専門にしている心理士さんがいたり書籍もあったりするのでご覧になってもいいかもしれません。

②就労系の福祉サービスを利用する

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 成人期であれば、制約があるものの障害福祉サービスにおける就労系サービスを利用するのも一つです。就労継続A型事業所や就労移行サービスがこれに当てはまります。ここでは、事業所によって変わってくるものの、心理士さんが常駐している事業所もあり、就労を目指しつつ日常生活や就業で必要なスキルを身に付ける場所であり、その中で行動変容であったり悩みを相談できることもあります。

③児童であれば児童発達支援・放課後等デイサービスを利用する

 子どもさんの中で小学校など学年が上がるにつれて周囲のお友達や集団生活で困る場面もあるかもしれません。そういった場合には、児童発達支援・放課後等デイサービス(以下、児発・放デイ)を利用することも検討してもいいでしょう。こういった事業所の利点は①学校や家ではない緊急避難的なくつろげる場所になりうる②専門家がいれば専門的な介入を行い、相談にも乗ってもらえる。こういった利点が考えられます。

④心理士さんやカウンセラーに相談する

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 心理士さんやカウンセラーは精神科や心療内科・メンタルクリニックにいるだけでなくカウンセリングルームなるものを運営していらっしゃるケースもあります。こういった場所では自費では少し高価になるものの相談に乗ってもらえます。

大事なことは、一人で悩まずに周りの人や専門家に相談をすることであり、くつろげる場や人がいると心も軽くなると思います。世の中は常に流動的でありますが皆さんが皆さんのペースで歩まれることが大事なのだと思います。

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