#5 文章問題について 続
2022/5/27
前回では文章題で躓くポイントとして①問題文を理解する読解力②四則演算の法則性の理解(立式ができる)③空間認識能力(頭の中でイメージができる)④計算能力を挙げました。
その中で、①問題文を解決する読解力について解説を行いました。
今回では、②~④について解説していきます。
②四則演算の法則性の理解
この能力については、発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の子どもさんにとってはそこまで問題になることが少ないです。どちらかといえば、知的障害をお持ちの子どもさんの方が困る傾向にあるといえます。ASD児では、意味が明確な記号(+や―など)を理解し、使うことは得意といえます。一方で、ここで躓く子どもさんに多いのは概念的な理解が難しいためである、というのが1つです。概念とは大雑把に言うと、+や―といった目には見えないものになります。この部分で躓くと計算などの数の概念が必要なものにも躓いてしまうと考えられます。
この場合の指導に関しては、具体物を用意し、目に見える形で理解を進めていくことが重要であるといえます。
③空間認識能力(頭の中でイメージする力)
この能力では、文章問題の特に図形問題にかかわってくると思われます。文章を読んで理解する能力は重要でありますが、それを図示するといった際にこの空間認識力が必要になってきます。また、頭の中でイメージする力は図形だけでなく文章問題の内容を頭の中でイメージし→理解し→立式する段階を経るため、文章問題を解く際には必要な能力であるといえます。
この場合の指導に対しては、パズルや積み木(ニキーチンなど)といった教材を用いるのがよいでしょう。ただ、パズルを自力でするのを見ているだけでは意味がありません。パズルの解き方を見ていくようにしましょう。通常、パズルを解くには見本を見つつそれに合わせてピースをはめていきますが、そうではなく、ピースの形と絵を合わせるようにしてパズルを解かせていくと効果的であるといえます。
④計算能力
この能力は処理能力と言い換えても差支えありません。ここで必要になってくる能力は記憶と注意力(集中力)になります。記憶の部分は別の機会にしまして、注意力について解説していきます。注意力では選択的注意と分配性注意とに分けることができます。選択的注意とは集中力と言い換えていいでしょう。集中力が足らないと、問題を解いているときに別のことをしてしまい中断し、結果的に解いていた時のことを忘れてしまうためにミスを誘発してしまうことが考えられます。分配性注意では2つ以上のことをする際に必要になってくる能力です。つまり、問題を読みながら立式し、それを記入していくなどがあげられるでしょう。この場合には、①問題を読む→②問題の内容を図示する→③それに応じて立式する→④計算するといったように、1つ1つの過程を区切っていくことで、分配性注意の問題は解決するといえます。
集中力が持続しない場合にはどうしたらいいでしょうか。1つはパズルを行うこと。あるいは、点図などの注目しなければならない課題を行うことなどがあげられます。ただし、この場合でも解決できることができない場合もあるため、相談いただければ対応策を検討しています。
今回は、文章題で問題になる文について解説を行いました。最後までお読みいただきありがとうございます。
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