あなたはどんな基準で大学を選びますか?

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2022/11/10

季節も冬になり、だんだんと大学受験の日がせまってきました。

受験生の皆さんは、志望校合格を目指して、日々勉強に勤しんでいることと思います。

ですが、志望校がまだ決まっていないという方も、実は結構いるのではないでしょうか?


<ベネッセ教育情報サイト>の調査(2017年3月の記事)によると、高校生が志望する大学を決めた時期は、高1~2が全体の3分の1で、残りの3分の2は高3になってからだそうです。

そして、アンケートに応じた大学生620人中199人(全体の約32%)は、高3の10月以降になってから志望校を決めたとのことでした。

つまり、このブログを読んでくださっている皆さんの中にも、まだ志望校が決まっていない方が、たくさんいらっしゃるということになります。


では、まだ志望校が決まっていない皆さんは、どんな基準で大学を選ぼうとしているでしょうか?

もしかしたら、大学の偏差値やネームバリューだけで、行きたい大学を決めようとしている方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。

確かに、難関大学や有名大学には魅力がありますし、素晴らしい大学も多いとは思いますが、その大学のことをちゃんと調べてみたでしょうか?


例えば、

・あなたが行きたい学部・学科はありますか?

・在職している教員はどんな人たちですか?(教員の数・研究テーマ・業績)

・カリキュラムやシラバスは魅力的ですか?

・図書館などの設備の充実度は?

・就職率と主な就職先は?

・取得できる資格は?

・各大学の個性は、自分に合っていそうですか?

といったことを、大学のホームページなどで調べてみましょう。



まず、あなたが行きたい学部・学科がなければ、その大学に合格できたとしても、不本意な大学生活を送ることになるかもしれません。

そもそも行きたい学部・学科がないという方もいるでしょうし、入学してから、何か面白さを見つけることもできるかもしれませんが、もし興味がある学問分野があるなら、そのことが学べる大学かどうかは最も重要です。


次に、教員についても調べてみましょう。

どんな教員が、どのくらいそろっているでしょうか?

学びたい学問分野の教員が1人なのか3人なのか…

できればたくさんいた方が、研究テーマや性格面で自分に合った先生を見つけられる可能性が高まりますし、組織的に教育する体制が整っているとも考えられます。


さらに、もっと詳しく、教員の研究テーマと業績についても調べてみるとよいでしょう。

著書や論文のタイトルに興味がもてたら、その先生に教わりたい、その大学に合格したいというモチベーションも高まります(大学ホームページ内or「CiNii」で検索)。

研究費の獲得歴も、どれだけ研究に資金をかけられているか、研究費を獲得できる能力やスキルがあるかを知るための材料になります(「KAKEN」で検索)。

文理問わずですが、特に理系では重要だと思います。


ちなみに、大卒の方でさえもよく勘違いされていますが、教員の優秀さと大学の偏差値・有名度には、相関関係があるわけではありません。

地方であれ、偏差値が低い大学であれ、国公立・私立関係なく、優秀な研究者は存在します。

もちろん、旧帝大や上位私大などには、優れた研究者が集まりやすいでしょうが、たとえば地方の私立大学などであっても、「こんな優秀な研究者がなぜこの大学に?」ということは、たくさんあります。

これは、大学業界の就職事情がからむところで、一般社会からはわかりづらいですが、よくある話だと思ってください。

ですから、希望する難関大学に行けず、偏差値的にはそれより低い大学に不本意ながら入学したという方であっても、とても優秀な教員に出会えるという可能性はあります。

また、研究者として優れているかと、教育者として優れているかは別問題ですが、こればかりは実際に入学してみないとわからないところがあります。


教育という面で言うと、教員の資質よりわかりやすいのは、カリキュラム(どんな講義・演習を何年生で学ぶか)や、シラバス(具体的な授業計画)です。

興味がもてそうな授業内容かどうか、調べてみるとよいでしょう。

同じ学部・学科名であっても、大学によって学べる内容には差があります。


上記の教員の研究テーマと業績、カリキュラムやシラバスを調べておくと、入学後のミスマッチを防ぐことができます。

例えば、「中国史」の勉強がしたいといった場合でも、教員の専門が「古代史」なのか「中世史」「近世史」「近現代史」なのかによって、授業の中身は変わってきます。

時代だけではなく、専門とするテーマによっても偏りが生じます。

「政治史」「制度史」「社会史」「経済史」「文化史」「宗教史」「民族史」「考古学」「歴史地理学」「歴史人口学」「簡牘学」などなど、教員が得意とするテーマは多様です。

もちろん、「歴史学科」などと銘打っている学科であれば、古代から近現代までを扱う概説的な授業などは、1~2年生対象のカリキュラムに含まれている可能性が高いです。

ですが、3~4年生になって専門分野を学ぶ際には、教員の専門とする時代やテーマが指導内容にも影響を与えます。

ほとんどの大学教員は、専門とは別の時代やテーマであっても指導しますし、一定程度は指導できますが、あくまでも一定程度までです。

「近現代史」専門の教員は、「古代の簡牘学」を教えてほしいと頼まれても、よい返事はできないでしょう。

逆に「古代史」専門の教員が、「近現代の経済史」を教えてほしいと頼まれても、苦悩することになります。

受験段階では、具体的な時代やテーマが決まっていない場合が多いでしょうが、もしも決まっているならば、こうしたことも事前に調べておいた方がよいでしょう。


それから、図書館などの設備が充実しているかどうかもポイントです。

「〇万冊もありますよ!」と言われると、「すごい!」と感じてしまうのですが、他大学とも比較してみましょう。

蔵書数1位の東大は991万冊、私大トップの早稲田では580万冊超の蔵書があります。

蔵書が100万冊を超える大学は全国で70校だけで、数十万冊でも多い部類に入ります。

最下位の大学図書館の蔵書数は4千冊弱ですから、同じ大学図書館でも、その差はとんでもなく大きいです。

蔵書数の多寡は、大学の規模、総合大学か単科大学か、文系か理系か、伝統校か新設校か、といった諸条件にもよりますし、多いからよい、少ないからダメと、一概に言うことはできませんが、研究機関・教育機関としての力量をはかるための一つの指標にはなるでしょう。

特に文系なら、図書館の充実度は大切です。

大学で本気で勉強しようとしたら、授業よりもむしろ自学自習が重要で、そこには図書館の蔵書の質と量が、大きく影響してくるからです。

理系の場合は、図書館よりも、実験設備がどれだけそろっているかの方が重要かと思います。

実験設備がそろっていないと、在籍する教員が優秀な研究者であったとしても、十分な研究・教育ができないということもあります。

「大学 理系 設備」などのキーワードで検索してみてください。



以上は、研究・教育といった学問に関することでしたが、多くの学生や保護者の方々にとって気になるのは、就職率と主な就職先でしょう。

これについても、たいていはホームページで調べることができます。

ただし、就職率に関しては、就職を望まない学生を分母から除外して計算していないか、アルバイト・フリーターなどを「就職」に数えていないかなど、注意が必要です。

この就職率のトリックは、外からはなかなか見破れないのですが、有名大学でもなく、あるいは就職に強いという定評がある大学でもないのに、なぜか異常に高い就職率になっている場合などは、疑ってかかる必要があるかもしれません。

また、東京や首都圏で就職するのか、地方で就職するのかによって、有利不利が変わる可能性もあります。

「某地域での某職種なら、その地域の某大学が強い」ということもありますので、それなら東京の大学より地元の大学に、という選択肢も出てくるでしょう。


就職に関連していえば、どんな資格が取得できるかということも、一つのポイントになります。

特定の国家資格に強い大学、教員養成に力を入れている大学など、将来の目的が明確で資格が必要な場合は、そういった大学を選ぶとよいでしょう。


大学の個性が自分に合っていそうかということも、大学選びの理由になるかもしれません。

入学後、学生の能力や個性を伸ばしてくれる大学か、面倒見がよい大学か、研究に強い大学か、就職に強い大学か、厳しい大学か否か、他にはない独特なコースを有しているかなど、大学には様々な特徴があります。

また、大学ごとの雰囲気・空気感というものもあるでしょう。

セレブ感やおしゃれ感のあるブランド色の強い大学、質実剛健なイメージの大学、キャンパスの雰囲気が明るい大学、学生が〇〇なイメージの大学、都心部の大学と郊外にある大学など、大学生活を過ごすうえで、こうしたところを気にする学生さんもいると思います。

ホームページやネット検索でも、ある程度わかる部分はありますが、受験までに余裕のある高2の生徒さんであれば、オープンキャンパスに参加して、その大学の雰囲気を肌で感じてもらうのがよいでしょう。


最後に、できれば、大学の財務状況や入試倍率にも注意してみましょう。

財務状況がひっ迫している大学や、継続的に定員割れしているような大学は、今後、どうなるか不安な大学です。

すぐにはつぶれないにしても、近い将来になくなっているかもしれません。

一般的に考えて、そのような大学の教育環境や学生サービスがよいとも思えません。

その大学の教員のなかに教わりたい先生がいる、自宅通学できる大学が条件でそこ以外の選択肢がない、確かにひっ迫しているが実は〇〇な利点がある等の特段の理由がないのであれば、他の大学を探した方が無難です。



大学選びには様々な視点があるでしょうから、このブログに書かれていることが全てではありませんが、少しでも参考になれば幸いです。

大学生活4年間、ひいてはその後の長い人生にも影響することですから、ぜひ、なにかしら納得できる理由に基づいて、志望校を選んでほしいと願っています。

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