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「学力神話の解体 ガラパゴス化する中学受験・大学受験での「実力」の育て方」加藤 文元 (著), 竹内 薫 (著)を読んでみた。

2026/3/18

「学力神話の解体 ガラパゴス化する中学受験・大学受験での「実力」の育て方」加藤 文元 (著), 竹内 薫 (著)を読んでみた。

 タイトルからも読み取れるように、現在の入試に関する問題点と、その打開策の提言をしています。著者の加藤 文元 氏はN校の先生もやられており、竹内 薫氏は、フリースクールの創設させています。そこでは、好きなものを集中して勉強して子どもの能力を引き出していこうという方針で、大学で学年が上がって研究に勤しむようになるとわかるでしょうが、問題を解く前に、問題を見つけることが重要になってきます。そういうことを受験勉強に費やす無駄な時間を極力減らして、その時間を、好きなことの勉強、そしてそこから出てくる問題を自分で見つけて探求していこうというものです。

 しかし、現状の入試制度をがすぐに変わるわけではありません。この本を読んでいて、私が高校生の時に読んだ「小田実の受験教育」 (講談社文庫)を思い出しました。(興味のある方は、アマゾンのKindle版 (電子書籍)Kindle Unlimitedにありますから読むことができます。この本については、またあとで書いてみたいと思います。)

 じゃ、どうすればいいのかっていうと、現状、受験生は、勉強しないといけないんですよ。効率的な勉強法って、あるのでしょうが、それは人それぞれ違います。数学に関しては、以下の方法が一つの提案として挙げられます。

1. 「定義」に立ち返る習慣(数学的思考の基礎)

「公式を覚えて数値を当てはめる」学習からの脱却を目指します。

「なぜ?」の言語化: 新しい概念に出会った際、その定義を自分の言葉で説明できるようにします。例えば「関数とは何か」「ベクトルとは何を表現しているのか」を、数式を使わずに説明する訓練です。

記述の論理性: 答えの数値だけでなく、「……ゆえに」「したがって」といった論理の接続が正しいかを重視します。これは、単なる計算ミスを防ぐだけでなく、思考の構造を可視化する作業です。

2. 「抽象化」と「具体化」の往復

未知の問題を解くための、科学的なアプローチを養います。

パターンの抽出: 複数の類似問題から「共通する構造」を見つけ出します。これが「抽象化」です。

モデル化の訓練: 日常の事象を数式や図形に置き換えて考えることで、教科書の中だけの知識を「使える道具」へと変えていきます。

3. 「答えのない問い」への耐性を高める

ガラパゴス化した入試問題は「短時間で正解を出す」ことに特化していますが、実社会では「問いを立てる」力が求められます。

試行錯誤のプロセスを評価: すぐに解答を見ず、30分、1時間と一つの問題に対して「仮説→検証」を繰り返す時間を確保します。

「分からなさ」を楽しむ: 著者は、分からない状態を不快に思うのではなく、それを探究の出発点と捉えるマインドセットの重要性を説いています。

4. リベラルアーツとしての学び

専門分野に閉じこもらず、幅広い知的好奇心を持つことが、結果として専門性を深めます。

歴史的背景の理解: その定理がなぜ発見されたのか、当時の数学者がどのような問題に直面していたのかという「ストーリー」と共に学ぶことで、記憶ではなく「知識の血肉化」を促します。

もう少し具体的に体的に書くと

1. 「実験」による具体化(手を動かす)方針が立たないのは、問題文が「記号の羅列」に見えているからです。まずは特殊な値を代入して、規則性を見つける「実験」を促します。具体的な数値の代入: $n$ を含む問題なら $n=1, 2, 3$ を試す、関数なら特定の値を代入してグラフの概形を点描してみる。図示と可視化: 言葉や数式だけの情報を、あえて泥臭く図に書き起こさせます。「何が分かっていて、何が未知なのか」を視覚化するプロセス自体が、論理の出発点になります。

2. 「定義」の再確認と接続解けない問題の多くは、単元の「定義」を独自の解釈や曖昧な記憶で扱っている場合に起こります。「この言葉の定義は何?」と問う: 例えば「接する」という条件に対し、判別式 $D=0$ しか浮かばない生徒には、「グラフの共有概念としての定義」に立ち返らせます。条件の言い換え: 問題文にある条件 $A$ を、別の表現 $A'$ に翻訳する作業(同値変形)を並走させます。

3. 「逆算」と「断片化」ゴールから逆算して、必要な「部品」を特定させます。「何が分かれば解けるか」を逆走する: 「面積を求めるには、交点の座標が必要だ」「交点を出すには、この連立方程式を解く必要がある」と、ゴールから一歩手前の状態へ遡らせます。部分的な論理構築: 全体の方針が見えなくても、「ここまでは確実に言える」という断片的な論理を書かせます。加藤氏が重視する「論理の筋道」を、部分的にでも構築する経験が自信に繋がります。

4. 「メタ認知」を促す問いかけ「解き方」ではなく「自分の頭の状態」に注目させます。「どこで止まっているのか」を特定させる: 「問題文の意味が分からない」のか、「道具(公式)が足りない」のか、「計算が複雑すぎて嫌になった」のか。止まっている箇所を言語化させるだけで、脳のフリーズが解けることがあります。

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