私のような“鈍行列車”が、勉強において一番速いのだという話。
2025/8/19
みなさんこんにちは!講師の富岡です◎
日々の勉強はいかがですか?捗っていますか?
思ったように進まない!!という声も聞こえてきますね〜。
ちなみに自慢ですが、私は一度たりとも勉強が思ったよりも進んだことがありません!(笑)
いつも自分の理想からは遠くて、計画したうちの半分も終わりやない(笑)
最初は自分の無力感に苛まれていましたが、直に「ま、自分だしなぁ」なんて開き直るようにさえなっていました。
今もそれは変わりません。
私は自分が思い描く「これくらい進むだろう」の半分も進まないことを受け入れています。
どうしてこんなに進まないのか?
どうしてこんな“鈍行列車”なのだろう?
その答えは、私が“ちゃんと勉強しているから”です。
どういうことだ?!とお思いになった方もおられるでしょう。
いや〜実に勉強というものは「進まない」ものです。
それが“勉強”だとさえ言えると思います。
私は一つの説明に対して「ふーん、そうなんだ、ま、とりあえず覚えるか」がなかなかできないタイプの人間です。
周りがそうやって受け入れて次のステップに進む中、「え、なんで?どうして?理屈は?」と頭の中の小人が騒ぎます(笑)。
みんなの歩みよりも遅い、というか、立ち止まってばかりなのです。
次に進まないとまずいという焦りとの葛藤がここで始まります。
みなさんも経験があると思います。
進めないと、でも、これが理解できていない…
そういう葛藤です。
最初のうちは劣等感しかなかったですよ。
みんなが軽々進めるステップから躓いているのですから。
どうして自分だけこんなにも物分かりが悪いのだろうといつも思っていました。
ですが幸いにも、私は愚直にそれを続けることだけはできたので、立ち止まり立ち止まり勉強をしました。
なんなら途中から「範囲を終わらせることよりも、目の前のこの問題を絶対自分のものにしよう」という意識が芽生えてきました。
今思うと、誰よりも進みの遅い“鈍行列車”な自分の戦い方だったのかもしれません。
気づけば私の総合偏差値は80近くになっていました。
もともと苦手だった国語と数学も、国語は偏差値90(全国1位)、数学も75を超えるところまできました。
あれだけ周りからも「頭硬いね」と言われた私が、あれだけみんなの背中を追いかけていた私が、顔を上げた時には誰よりも前にいた衝撃は今でも忘れません(あ、でも総合偏差値では全国20位だったので19人前にいました…世界は広いなぁ(笑))。
私がやっていたことは、確かに“勉強”だったのだなと思います。
みんなが気にせず飛ばしてしまったステップを言語化しようと奮闘していたのです。
みんなが気にせず踏んづけた砂粒の中から、ひとつまみの砂金を拾い上げる作業をしていたのです。
うん、それが“勉強”なんだと思うのです。
先に進むことが勉強ではないのです。
何度だって立ち止まっていいのです。
立ち止まれることを誇っていいのです。
私の背中を押してくれた人に、理論物理学者でもあり俳人でもある寺田寅彦先生がいます。
氏の「科学者とあたま」には次のような一説があります(青空文庫でも読めます)。
しかしまた、普通にいわゆる常識的にわかりきったと思われることで、そうして、普通の意味でいわゆるあたまの悪い人にでも容易にわかったと思われるような尋常茶飯事の中に、何かしら不可解な疑点を認めそうしてその闡明(せんめい)に苦吟(くぎん)するということが、単なる科学教育者にはとにかく、科学的研究に従事する者にはさらにいっそう重要なことである。この点で科学者は、普通の頭の悪い人よりも、もっともっと物わかりの悪いのみ込みの悪い田舎者であり朴念仁(ぼくねんじん)でなければならない。
(寺田寅彦「科学者とあたま」より引用)
氏は科学者を中心に話していますが、勉強をする人全般に当てはまると思います。
誰もがわかるようなことにさえ、「え?なんで?どうして?」となるくらいでないといけない。
それくらい鈍行列車であれ、と氏は述べています。
寺田寅彦先生の文章は、大学入試の現代文でもよく出題されます。氏は理論物理学者として偉大な功績を残しながらも、夏目漱石の弟子として俳句にも親しんでいた、非常に学問的バランスの取れた人です。
そんな人“だからこそ“の視点なのではないでしょうか?
「誰よりも歩みの遅い自分を大事にしなさい。」
そうやって背中を押してくれているように感じるのです。
結論、逆説的ですが、鈍行列車が勉強においては一番速いのです。
立ち止まる勇気をぜひみなさんも持ってください。
「わからない!」と言えることが勉強です。
その経験を大事に、大事にしてくださいね。
私も時間をかけて日々勉強しています。
そこで拾い上げた砂金を、みなさんに還元していけるように精進します。
一緒に勉強頑張りましょう。
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