受験業界において語られないタブー ~中高生の勉強の要諦とは?~
2025/3/31
大手予備校にしろ、塾にしろ、家庭教師のプロフィールにしろ、「〇〇大学に合格!」という文字が華々しく並んでいます。「今年も東大に〇名、合格しました!」というのは、すでに大手予備校のキャッチフレーズになっている感があります。しかし、本当に大切な情報は、その背景で何人の生徒が東大に落ちたかです。
塾にしろ予備校にしろ、家庭教師にしろ、担当した全員が合格するなんてことは、ほぼありません。合格した人と同数、あるいはそれ以上の人が不合格になっています。そのことを受験業界は語りません。おそらく商売に差しさわるからでしょう。
しかし、私は、三者面談の際にはっきりと言います。例えば、私は昨年度、早稲田大学に2名合格させましたが、その背景で、同数の2名が落ちています。全5回とか全10回という単発受講の生徒さんとは、そこまで深く人間関係を結べないので、私に内緒で早稲田を受けた生徒がいるかもしれません。そういった可能性を考慮すれば、2名以上の人が早稲田に落ちていることになります。その事実を、私は三者面談ではっきり言います。
その理由は1つです。高い緊張感を持って勉強に臨んでほしいからです。
昨今の中高生の傾向として、机に向った時点ですでに疲れているということが挙げられます。特に中高一貫校は、学校から膨大な量の課題を与えられ、食事をしている時間とトイレに行ってる時間以外は全部勉強時間に充てろと言わんばかりの状況になっていますから、疲れて当然だと思います。しかし、そのような状況にあるにせよ、勉強というものは短時間で集中してやるものです。短時間で集中するそのクオリティの高いコンセントレーションを2セット、3セット、4セット・・・・という感じで繋げていくことによって、例えば、医者の国家試験のために16時間勉強して合格した、というようなことになります。16時間だらだらと勉強しているのではありません。質の高い集中力を維持する時間を積み重ねて16時間やってるのです。
ちなみに、受験というのは不思議なもので、意外な人が合格して、意外な人が落ちます。私の経験から言えば、落ちる生徒は生命力が弱い傾向にあります。例えば、親とうまくいってない生徒は生命力が弱い。あるいは、「今のこの自分」が好きではなく、何らか別の自分になりたいと思っている人も、生命力が弱い。言い方を変えれば、運が非常に弱い傾向にあります。
最後に。私は生徒さんのことを生徒と呼びます。さん付けで呼びません。無論、佐藤さん、山田くん、とは言いますが、生徒さんとは言いません。生徒です。その理由は1つです。私は生徒をお客として見ていないからです。これまでも見てこなかったし、この先もお客として見ないと思います。その理由も1つです。生徒は、お客ではなく、同じ目標に向かって走る仲間だからです。
生徒をお客さんにした途端、指導が甘くなります。お客様ですから、お金をいただかなくてはなりませんし、あわよくばお客様から紹介を引き出そうとします。その結果、生徒に好かれる指導になります。生徒は何かが出来ていない、何かが足らないから教えを請うています。つまり未完成かつ未分化な存在です。そういう人に迎合するような教育をすればどうなるのか。当然のように落ちます。
私は毎年、担当した生徒の何人かが志望校に落ちるという、文字通り胸と胃がキリキリと痛む経験をしていますから、生徒のことを絶対にお客様扱いしません。生徒と教員との双方が高い集中力のもと、出来ていないことを、忌憚なく「できてない」と指摘する。できたことは手放しで褒める。そういったいわば本音の教育をした上で、志望校に落ちるのなら、それなりに「納得感」があると思います。ようするに次につながる「落ち方」になります。
しかし、それをせずして「お客様が志望校に落ちた」となったとき、予備校や塾の教員や家庭教師たちは何を思うのでしょう。私はそれを知りたいのですが、語ること自体がタブーみたいになっている業界ですので、いまだ聞いたことがありません。
※本稿は私が主宰する人見読解塾の「合格する勉強法や指導方針」に掲載した原稿の転載です。
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