成績が上がらない原因はこれ ~夏期講習をより有効に活用するために必要なこと~
2025/6/25
だれしも能力の限界をもって生まれてきていますから、どんなに頑張っても成績が頭打ちになることはあります。しかし、多くの生徒は、希望する大学と自分の能力の限界との関連をなんとなくであっても理解しているように、私には見受けられます。
例えば、香川大学に行きたいという人は、「私には東大は無理だ」ということを知っているように見えます。それはそれでいいことだと私は思います。斎藤環氏によると、ひきこもりの生徒の中には、「なにがなんでも東大」とか「絶対に医者になる」と言う人もいるそうです。もちろん自分の能力の限界を考慮することなく、です。そういう人は外部から入ってくる情報が少ないので自分というものがよくわかっていないゆえにそう言ってるのだから、なによりも対話することが大切だと、斎藤氏は説きます(『オープンダイアローグとは何か』(医学書院))。
さて、志望校のレベルまで成績が上がらない人は、端的に言って、主体性がありません。生命力が弱い。主体的に学んでいないから成績が上がらない。このことは中学生を見ればよく分かります。
特に中学生の英語は、サラリーマン並みの情報処理を求められることが多いわけですが、実はそこに頭の良し悪しはさほど関係ないように私には見えます。
たとえば、不定詞の働きを理解して問題演習を繰り返す中で、不定詞がなんであるのかを、おそらくほとんどの人が理解できるでしょう。それができないとか、中学の教科書レベルの英文が読めないというのは、私の経験から言えば、主体的に勉強していない生徒にみられる現象です。
簡単に言えば、やればできることをやっていないだけということです。子供が大学受験生になると「よくわからない」ということで、家庭教師や塾に子供の勉強を一任する親御さんもいらっしゃいますが、原理は中学英語と全く同じです。主体的に学べば、ある程度、自分が希望する大学のレベルまでは到達します。到達しないのは、単純に勉強のやり方を間違えているだけです。
アメリカ現代思想の源流にエマソンという哲学者がいます。彼は次のように言います。
思想と行動はたがいを表現しあいます。……考えることは行動の一部分です。
つまり、エマソンは、勉強というものは生活に深く根を下していると言います。したがって、勉強したことが生活に還元される、あるいは生活の中でなんらかを考えたことが勉強に還元されるという、生活と勉強の往復運動の重要さを説きました。
これは中学生や高校生の勉強にも言えることです。簡単に言えば、自ら主体的に勉強するようになれば、自分の生活=人生と勉強がシンクロしあって、生きざまが生れます。中学生には中学生の生きざまがありますし、高校生には高校生の生きざまがあります。生きざまというのは大人だけのものではありません。
よく分からないけど、とりあえず手を動かしてみる。頭を動かしてみる。そういったところから、主体的に勉強する姿勢は生まれます。
勉強するとは、自分の人生を自らの手で切り開いていくことです。私も同じです。私はいまだに、大学の先生にお月謝を払って哲学を学んでいますが、私は哲学の勉強を通して学んだことが生活に還元されないと学んだ意味がないと考えています。学んだことが生活に還元されてはじめて、「勉強した」と言えると考えています。
私にはマナリンクと人見読解塾あわせて、常に25人ほどの生徒さんがいますが、毎年25名ほどの生徒さんを見ながら、以上のようなことを思います。どんなに能力が低くても、自ら主体的に学ぶ、すなわち、とりあえず分からないなりに手を動かしてみる生徒は、毎年合格しています。それで落ちるのは、繰り返しになりますが、勉強のやり方を間違えているのです。
※参考 『プラグマティズムの思想』魚津邦夫(筑摩書房)
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