私が考える発達特性の学習支援②~「怒ってはいけない」とは?~

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2025/6/30

今回のお話は、前回の投稿の続きになります。


https://manalink.jp/teacher/16173/blog/3465私が考える発達特性の学習支援①


私は確かに前回「その先の支援がある」と書きましたが、それを例えば「タイプAならば支援a」というふうに体系的にまとめる事は残念ながらできません。


『自閉スペクトラム症』の「スペクトラム」とは、連続的で幅広い範囲、あるいは連続体という意味がありますが、まさしくそれゆえに体系的に説明できるものではないのです。


体系的に説明はできませんが、例を挙げて私の対応を挙げる事はできます。

今日はその一つ「怒ってはいけない」とはどういう事か?について書きます。


例えば、私の息子はADHD(=注意欠如、多動性等)の診断を受けています。

それは、学習においては集中力を維持する事が困難であったり、注意散漫なために計算ミスが多くなったりする事に繋がります。

「集中力を維持する事が困難」な理由は、自分がたった今思いついた事、注意が向いた事を「今はそのタイミングではない」と抑制する事が難しいためであり、その結果、今現在取り組んでいる内容がおろそかになりがちです。

本人もコントロールできないほど別の事に興味関心が向いているため、今目の前にある課題に注意を向けるのに多大なエネルギーを使います。


そう。当の本人は、実はとても困っているのです。


極端ですが「今はこれを考えなければいけない」が、様々な思考過程によって「かき消される」と想像して問題ないと思います。

そして意外かもしれませんが、それを解消する手段に「歩き回る」「じっとしていられない」「今頭の中にある事を先に言葉にする」といった言動が挙げられる場合があります。

その行動は、知識がない人にとっては「考えずに動き回っている」「集中しない子だ」と見えます。


自我が育ち、ある程度経験を積むと「今は歩き回ってはいけないのだ」と本人も学ぶようになりますから、その症状は一見落ち着いたように見えますが、実は強制的に興味関心が向く事から自分を切り替えねばならず(あるいは同時進行で考えている可能性もあり)、脳の疲労度は「普通の人が考える」以上である…そのことを、支援者は推察できなければいけません。

※年齢によって、またその時々の環境・ストレス等によって抑制しなければいけない事には波があると言われています。


私が、集中力が続かないところを決して咎めず、ある程度のおしゃべりを許容する理由がここにあります。

こういった背景を考えながら、問題を考えてもらう時間とそうでない時間の切り替えをこまめに行います。

特に「そうではない時間」に交わす会話に本気で向き合い、本気で耳を傾ける事を心がけています。そうする事が、次の切り替えをスムースに運ぶ可能性を知っているからです。

時には「今何するんだっけ?」「5分経ったね。」と切り替えやすくなるような声替えもします。

※どんな声かけが「切り替えやすいか」もまた、お一人おひとりで異なります。


息子の場合はまだ小学生なのでこの切り替えがうまく行かない場合が多いですし経験も少ないですが、学習支援において、考慮すべきその背景には共通点があると考えています。


現在お子様が中学生、高校生なら、きっとご本人が「わざとではない」ところでたくさん怒られてきていると思います。普通の感覚では分かりにくい「困難」をたくさん乗り越えて、今の学習に取り組んでいると思います。

どうかそのことを忘れずに、こんなにもエネルギーを使いながら、ここまで大きくなったのか!と受け止めてあげてください。

「できるようになった」事の多さに目を向けてあげてください。


(※ 私は発達特性のすべてにおいて、専門的に学んできてわけではありません。

常に学び、試行錯誤を繰り返しながらお一人おひとりに最適な学習支援の在り方を考え続けております。)

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