【世界を旅した先生が伝えたい!歴史への興味がグッと深まる「旅×学び」のススメ】Vol.12 クロアチア編 “アドリア海の真珠”が語る旧ユーゴの記憶――戦火を越えて甦った街、ドゥブロヴニクへ
アドリア海に面したクロアチア。
その美しさから「アドリア海の真珠」と呼ばれる街――ドゥブロヴニクは、ヨーロッパでも屈指の観光地として知られています。
しかし、この赤い屋根の街並みは、決して「平穏」だけで出来上がったわけではありません。
■ 壁に残る傷跡が語るもの
ドゥブロヴニク旧市街の城壁を歩いていると、観光ガイドブックには載らない“違和感”に気づきます。
赤い屋根の中に、ところどころ色の違う瓦が混ざっているのです。
それは、1991年に起きたクロアチア紛争で破壊され、
戦後の修復で新しく葺き替えられた屋根。
世界遺産の街が砲撃を受けたという事実だけでも、紛争の激しさが伝わってきます。
真っ青なアドリア海とまぶしい石畳。
その美しさの中に、「戦争は遠い過去ではない」という現実が静かに息づいています。

■ ユーゴスラビアという“たった一つの国”からの分岐
クロアチアもまた、かつてユーゴスラビア連邦を構成していた国の一つです。
指導者チトーのもとで、民族の違いを超えて一つの国家を維持してきました。
しかし、冷戦の終結とチトーの死後、
・民族
・宗教
・経済格差
・政治的対立
これらが一気に表面化し、
ユーゴスラビアは6つの主権国家へと分かれていきます。
クロアチアはその“最初の独立”の一つであり、
その過程でドゥブロヴニクも戦火に巻きこまれました。
この「一つの国から六つの国へ」の動きは、
現代史でもっとも重要なテーマの一つです。
■ 街に息づく「復興」の物語
戦後、クロアチアの人々は街を元の姿へと戻すために力を尽くしました。
それは単なる“修復”ではなく、文化を取り戻す行為でもありました。
瓦一枚、石畳一つ、一つずつ積み直すその作業は、
「この街を未来につなぐ」という祈りそのものでした。
いま、ドゥブロヴニクは世界中から観光客を迎え入れ、
海外ドラマのロケ地にもなるほど復活しています。
しかし、街角の新しい屋根瓦や、歴史博物館に残された当時の写真が、
「平和の価値」をそっと教えてくれるのです。

■ 学びとしての“旧ユーゴ”――現代史の核心部分
クロアチア・ボスニア・コソボ……これら旧ユーゴの歴史は、
現代史の中でもとくに複雑ですが学校の授業では早足で説明されがちな分野です。
理由は明確で、
・冷戦
・民族問題
・宗教
・国際法
・NATOやEUの関与
・独立と国家承認
と、社会・倫理・地理・政治経済など複数教科が絡む総合テーマだからです。
そして入試では、
「なぜ紛争が起きたのか?」
「国際社会はどう動いたのか?」
といった本質的な問いが出されやすい。
つまり、
早めに触れておくほど大きな差になる分野です。
早めの対策や演習をおススメする分野でもあります!!
(私の冬季講習でもしっかり対策しております。)

■ 世界を知ることは、受験力にもつながる
旅や写真から入る「旧ユーゴの物語」は、
生徒にとって“遠い世界の話”だったものを、
“自分ごととして理解できる歴史”へ変えてくれます。
そしてそれは、
・世界史の得点力
・現代社会の理解
・倫理の背景知識
・政治経済の国際関係問題
にそのままつながります。
感情を伴って理解した歴史は、忘れません。
だからこそ、今のうちに触れる価値があります。
🌏 次回予告
Vol.13は、旧ユーゴの中でも“文化と宗教の交差点”――北マケドニア編へ。
オスマン、ギリシャ、スラヴ……文明が重なり合う都市スコピエで、「アイデンティティとは何か」を探ります。