【世界を旅した先生が伝えたい!歴史への興味がグッと深まる「旅×学び」のススメ】Vol.8 チェコ編
~美しい街が歩んだ、中世ヨーロッパと冷戦の記憶~
第一部:中世の都とハプスブルクの遺産
「チェコ」と聞いてまず思い浮かぶのは、世界遺産にも登録されたプラハの街並み。赤い屋根と石畳の路地、カレル橋から眺めるヴルタヴァ川の風景は、まさに“ヨーロッパの宝石”と呼ばれるにふさわしいものです。
私はプラハ城を訪れたとき、聖ヴィート大聖堂の荘厳なゴシック建築に圧倒されました。ここは神聖ローマ帝国の皇帝が戴冠した場所であり、チェコがヨーロッパ史の中心にあった証でもあります。
やがて16世紀以降はハプスブルク家の支配下に入り、芸術・学問・宗教改革が交錯する舞台となりました。プロテスタントとカトリックの対立が激化した「三十年戦争」も、このプラハで火蓋を切ったのです。
つまり、プラハは「世界史」と「宗教史」が交わる学びの現場でもあるのです。
第二部:冷戦とプラハの春
20世紀に入ると、チェコスロバキアは第一次世界大戦後に独立を果たしますが、第二次世界大戦ではナチス・ドイツの支配下に置かれました。そして戦後はソ連の影響下に入り、冷戦の東側陣営に組み込まれていきます。
1968年、「プラハの春」と呼ばれる自由化運動が起こりました。アレクサンデル・ドゥプチェクのもと、言論や経済の自由を求めた市民たちの動きは、まさに東欧に春を告げる希望でした。しかし、ソ連軍の侵攻によって弾圧され、自由は再び奪われます。
私はプラハの旧市街広場に立ったとき、華やかな建物の背後に、このような抑圧と抵抗の歴史が刻まれていることを実感しました。1993年の「ビロード離婚」でチェコとスロバキアが平和的に独立したのも、この長い闘いの延長線上にあるのです。
チェコの歴史は「美しい街並み」と「自由への願い」が共存しており、まさに「芸術」「歴史」「政治」が交差する学びのフィールドだといえます。
✈️ 次回予告
Vol.9では、バルカン半島に足を運びます。かつて「ユーゴスラビア」として一つの国を形づくっていた地域を訪ね、民族・宗教・戦争と和平の歴史をたどります。複雑に絡み合うヨーロッパの縮図を、現地の都市と人々の暮らしから考えていきましょう。