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なぜ「解くだけ」ではダメなのか? 1回目と2回目以降は「別のスポーツ」です

2025/11/5

過去問演習で最も重要な大前提。 それは、1回目の演習と、2回目以降の演習は、まったく別のスポーツであると認識することです。

ここを混同してしまうと、「解いた回数」という自己満足、あるいは「上がった点数」という偽りの安心感に陥ります。Aくんのように。

それぞれの「回」で何をすべきか。目的を整理してみましょう。

1回目の目的:【知る】現状把握と「初見」体験

1回目。これは、その学校との「初対面」です。 入試本番までに、その年度の問題とは一度きりしか体験できない、非常に貴重な時間ですね。

目的は「知る」こと。点数ではありません。

  1. 傾向と難易度の「体感」 これは、その学校がどんな「料理」を出すのかを分析する感覚です。大問の数、難易度、分野の偏り(計算が多いのか、図形が複雑なのか)、解答用紙の形式まで。「なるほど、こういう問題で構成されているのか」と、まずは冷静に分析します。

  2. 時間配分と「捨てる」感覚 制限時間内に、このボリュームをどう処理するか。このリアルなプレッシャーの中で、「この問題は難しそうだ」「後回しにしよう」「これは解かない」という**「戦略的撤退」**の訓練を積む、第一歩です。

  3. 本当の「初見力」の測定 塾のテストとも違う、入試本番の形式で「初めて見る問題」にどう立ち向かうか。自分の本当の実力、現在地を冷徹に測定します。

ですから、1回目の点数が30点だったとしても、落ち込む必要は一切ありません。 むしろ、「どの問題が解けなかったのか」「なぜ解けなかったのか(時間が足りない? 解法を知らない?)」を分析するための、最高のサンプル(データ)を手に入れた、と考えるべきです。

2回目・3回目の目的:【固める】解法の定着と戦略の構築

1回目で分析材料(データ)を手に入れたら、2回目以降はフェーズが変わります。 目的は**「固める」**こと。合格点を取るための「訓練」です。

  1. 「解けるべき問題」の完答 多くの学校では、大問1や2のような基礎・標準問題が合否を分けます。ここは絶対に落とせない。2回目以降は、これらの問題を「速く」「正確に」解き切る精度を100%に近づける。これは反復練習が有効です。

  2. 時間配分の「戦略」を立てる 1回目で体感した時間感覚をもとに、「大問1と2は15分で通過する」「残りの時間で、大問3と4の(1)と(2)を確実に取りに行く」といった、自分なりの「型」を構築し、体に染み込ませる練習です。

  3. 解法の定着と「弱点」の克服 1回目で解けなかった問題を、解説を読んで理解し、「なぜ、そうなるのか」という原理原則を自分の言葉で説明できるレベルまで落とし込む。そして、「自力で解き直せる」状態にする。これが本当の「解き直し」であり、学力の向上です。

Aくんの悲劇は、1回目も2回目も3回目も、すべて「初見」のつもりで点数だけを追いかけてしまったことにありました。3回目に90点取れても、それは解法を「暗記」しただけ。本番では通用しないのです。

「初見力」を鍛える、本当の訓練とは

ここまで読んで、賢明なあなたはお気づきかもしれません。 過去問演習の最大のジレンマは、**「一度解いたら、二度と『初見』ではなくなる」**ことです。

では、2回目以降で「解法の定着」と「戦略の構築」を進めつつ、入試本M番で最も必要な「初めて見る問題に対応する力(初見力)」は、どうやって鍛えればよいのでしょうか。

そこで、Bくんが実践していた、非常に合理的な戦略が活きてきます。

それが、**「志望校と傾向が似た、他の学校の過去問を解く」**という方法です。

僕はこれを「アウェーでの練習試合」と呼んでいます。 ホーム(志望校)の過去問で戦術を固めたら、次はよそのグラウンド(他校)で、その戦術(解法や時間配分戦略)が通用するかを試すのです。

これは、最高の「初見問題」の演習材料となります。

今日からできる「初見力」実践ステップ

もし、あなたが「過去問を解く作業」に陥っていると感じたら、次の2つのステップを試してみてください。

ステップ1:志望校の「出題傾向」を分析する まずは1回目の演習(または塾のS先生のアドバイス)をもとに、志望校の「クセ」を言語化します。

  • 「計算が非常に複雑で、処理能力が問われる学校」

  • 「思考力を問う、長い文章題や会話文問題が出る学校」

  • 「図形の難易度が極めて高く、ひらめきが必要な学校」

ステップ2:「似た傾向」の他校の過去問を「初見」で解く 志望校と同じレベルか、少し下のレベルの学校で構いません。ステップ1で分析した「クセ」が似ている学校の過去問を、本番さながらに「1回目」として解いてみるのです。

これは、志望校の過去問で身につけたはずの「解法」や「時間配分戦略」が、本当に自分の力になっているかを試す、最高のシミュレーションになります。

過去問は、ただ解く「ドリル」ではありません

過去問の点数が上がらない、と嘆く必要はありません。大切なのは、点数ではなく「目的」です。

  • 1回目は、点数を気にせず「知る」ため。(初見の体感・傾向把握)

  • 2回目以降は、合格戦略を「固める」ため。(時間配分・解法の定着)

  • 初見力は、「他校の過去問」という練習試合で鍛える。

過去問は、解いた回数を競う「ドリル」ではなく、ましてや点数に一喜一憂するための「儀式」でもありません。 自らの弱点をあぶり出し、志望校との距離を測り、合格への戦略を練るための「戦略シミュレーション」なのです。

Aくんのように「3回やった」という事実に満足するのではなく、Bくんのように「力を試した」という手応えを掴んでほしいと、僕は思っています。

もし、具体的な併願校の選び方(練習試合の相手)や、お子さん専用の「戦略マップ」の作り方について個別に相談したい、と思っていただけましたら、僕もオンラインで指導を行っております。

あなたの合理的な努力を応援しています。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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