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講師はいつまで、自転車を支え続けるべきか。

2025/11/18

こんにちは。神奈川で塾の運営に携わりつつ、オンラインで個別指導をしています、ヒロユキです。

さて、保護者の方が授業を見学されたり、あるいは生徒さん自身が体験授業を受けたりする時、「良い授業」の基準はどこにあるでしょうか。

「テキパキと、たくさんのことを、わかりやすく説明してくれる先生」。 多くの場合、これが「良い先生」のイメージかもしれません。「うちの子は、あの先生の説明がわかりやすいと言っています」というお話も、本当によく耳にします。

しかし、僕は約10年間、大手の中学受験塾で最上位クラスも担当しながら、集団指導も個別指導も経験してきましたが、少し違う光景も見てきました。

「阿吽の呼吸」と「わかりやすさ」の罠

本当に良い生徒と、良い講師の関係という時、指導の最中の会話は、驚くほど少ないことがあります。 いわゆる「阿吽の呼吸」のようなもので、講師が少しヒントを出すと、生徒が考え始める。詰まったところで、講師が次のプロセスを問いかける。生徒が、また考え始める。

それを見ている保護者の方などは、「あの先生、ちゃんと教えてくれているのかしら」と、ご不安になるかもしれません。

しかし、ご心配には及びません。 必要なことは、伝えています。ただ、その「必要なこと」が、世間で思われているほど多くない、というだけなのです。だから、必然的に口数が少なくなる。

よく、「たくさん説明してくれて、わかりやすい先生がいい」という話があります。 もし、それが絶対的な真実であるならば。

例えば、テレビでご活躍されている池上彰さん。あの方の説明は、非常にわかりやすい。僕もよく拝見します。 では、あの方の番組を見た人が、全員、経済や政治の専門家になれるでしょうか。

残念ながら、現実にはなれていません。ここに、指導における大きな問題が隠れています。

説明が多すぎると、生徒は「空っぽ」になる

「わかりやすい説明」というのは、それ自体が目的ではありません。 あくまでも、教える側というのは、生徒への「きっかけ」や「気づき」、あるいは「進むべき方向性」を示すものです。

最終的に、その道を「進む」のは、生徒自身です。 「変わる」のも、「気づく」のも、生徒自身でなくてはならない。

講師が一方的に、懇切丁寧に、すべてを「わかりやすく」説明し続けること。 それは、一見すると親切ですが、裏を返せば、その生徒から「自分で考える機会」を奪い、「わかったつもり」にさせてしまう行為でもあります。 言葉を選ばずに言えば、生徒を「空っぽ」にしてしまうようなものです。

自転車の例え

僕は、指導をするとき、よく自転車の乗り方を教えることに例えます。

子どもに自転車の乗り方を教える時、親や指導者はどうするでしょうか。 最初は、後ろでそっとサドルを支えてあげますね。ふらついたら、立て直してあげる。 あるいは、最初の一漕ぎだけ、そっと背中を押してあげるかもしれません。

しかし、考えてみてください。 その子が乗れるようになるまで、延々と、ずっと自転車を支え続け、押し続けたら、どうなるでしょう。

おそらく、その子はいつまでたっても、補助なしで自転車に乗ることはできません。 自力でバランスを取る感覚、ペダルを漕ぐタイミング、転びそうになった時の立て直し方。それらを学ぶ機会を、すべて奪われてしまうからです。

残念ながら、「過干渉」の先生、あるいは「教えすぎ」の先生というのは、これと全く同じ行為を、学習指導の場で無意識に行っている可能性があります。

僕たちの仕事は、突き詰めれば、「生徒が、講師なしで自力で問題を解決できる状態」にすることだと考えています。

そのためには、講師が一方的に答え(=わかりやすい説明)を与えるのではなく、問いかけを通じて、生徒自身に思考させ、答えへの道筋を辿らせる必要があります。なぜそうなるのか、という原理原則を理解してもらう必要があります。

僕が指導中に口数が少なくなり、静かに生徒の思考を「待つ」時間があるのは、そのためです。 それは、「教えていない」のではなく、生徒がまさに今、自力でペダルを漕ぎ出そうとする瞬間を、転ばないように見守り、支えている時間なのです。

もちろん、どの方向に進むべきか、という最初の地図の渡し方や、コンパスの使い方は、丁寧にお伝えした上での話ですが。

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