「自分流」という名の迷路――なぜ、成績が上がる生徒は「つまらない」ほど素直なのか
相模湾から吹き抜ける風が少しずつ冷たさを帯びてくる季節ですね。横浜駅の雑踏を歩いていると、目的地へ迷わず進む人と、スマートフォンの地図を何度も見返しながら立ち止まる人の差がよく分かります。
受験も同じです。最短距離で合格という目的地に辿り着く人と、わざわざ険しい裏道を選んで迷子になる人がいます。
今日は、多くの受験生が陥りがちな**「独自の勉強法」という名の甘い罠**について、論理的に整理してみようと思います。
「必要ない」という自己判断のコスト
先日、オンライン指導の最中に、ある生徒とこんなやり取りをしました。算数の条件整理が必要な問題で、僕は「必ず表を書いて整理しよう。それがミスを防ぐ唯一の論理的な手段だから」と伝えました。
彼は画面越しに頷き、その場では僕と一緒に表を完成させました。しかし、その後の演習で彼が提出した解答用紙に、表の姿はありませんでした。結果は、見るも無残なケアレスミスのオンパレードです。
なぜ書かなかったのか。彼の答えは非常に興味深いものでした。 「自分には、表を書かなくても解けると思ったからです」
彼はサボりたかったわけではありません。彼なりに「効率」を追求した結果、手順を省くという選択をしたのです。しかし、これは「効率化」ではなく、ただの「手抜き」に過ぎません。
車の運転に例えるなら 目的地(合格)へのルートは自由ですが、赤信号で止まる、左側を通行するといった「交通ルール」を無視しては、目的地に着く前に事故(不合格)を起こします。解法の「型」を守ることは、自由を奪われることではなく、安全に目的地へ着くための最低限のインフラなのです。
成績を急上昇させる「守・破・離」の論理性
指導歴が10年を超えると、成績が伸びる生徒の共通点が明確に見えてきます。それは、驚くほど**「型」に対する忠実さ**を持っていることです。最短ルートで成長するために必要なのは、精神論ではなく、以下の3つの論理的ポイントです。
「再現性」を最優先する 勉強において最も価値があるのは「たまたま正解した」ことではなく、「次も同じように正解できる」という再現性です。独自のやり方を混ぜると、間違えた際に「やり方が悪かったのか」「知識が足りなかったのか」の切り分けができなくなります。
「面倒」の中にこそ正解がある 表を書く、途中式を残す、図を描く。これらは一見すると遠回りに見えます。しかし、人間の脳のワーキングメモリには限界があります。外部メモリ(紙)に情報を書き出すことは、脳の負荷を下げ、正解率を上げるための最も合理的な投資です。
「時間」という資源の有限性を自覚する 僕の娘を見ていても思いますが、子供は試行錯誤が大好きです。しかし、受験生には「入試本番」という厳格な締め切りが存在します。自分一人で車輪の再発明をしている時間は、受験生にはありません。
今日からできる「素直な学び」の3ステップ
もし、あなたが「頑張っているのに結果が出ない」と悩んでいるなら、今日から以下の順序で自分をアップデートしてみてください。
1. 指示の「意図」をセットで理解する
ただ「書きなさい」と言われると反発したくなりますが、その手順が「ミスを防ぎ、見直しの時間を短縮するため」という論理的な意図を理解すれば、納得感を持って取り組めるはずです。
2. 一ミリも変えずに「完全コピー」する
新しい解法を教わったら、その日の演習では自分のアレンジを一切禁止してください。解説に書いてある通りに手を動かし、完璧に真似ができるようになって初めて、その解法の本当の効果が実感できます。
3. 「自己流」に気づいたら、即座に型へ戻す
問題を解き終わった後に「あ、ここは手順を飛ばしてしまった」と気づいたら、たとえ正解していても、改めて指示された手順で解き直してください。この小さな修正の積み重ねが、強固な基礎力を作ります。
結びに:素直さは、才能を凌駕する武器になる
「素直であること」は、決して自分の意見を持たないことではありません。「結果を出すために、自分よりも精度の高いシステム(解法)を優先できる」という、高度に知的な判断のことです。
自分のこだわりを捨て、提示された型を鏡のように映し出す。その先に、今までどれだけ努力しても見えなかった景色が広がっています。
もし、今の学習スタイルに限界を感じていたり、どこを修正すべきか客観的な分析が必要であれば、いつでも頼ってください。神奈川の教室から、あるいはオンラインの画面越しに、あなたの「最短ルート」を一緒に構築できるのを楽しみにしています。