オンライン家庭教師マナリンク

「スライダー」と「カーブ」を区別しない勇気。中学受験・算数を「大枠」で制する合理的思考法

2026/1/14

神奈川の冬の朝は、独特の澄んだ空気感がありますね。塾への道すがら、相模川の向こうに見える丹沢の山々が、妙にクッキリと見える日があります。視界がクリアになるというのは、それだけで少し得をした気分になるものです。

しかし、受験生たちの視界はどうでしょうか。入試が近づくにつれ、「A中学の平面図形は特殊だ」「B中学の論理パズルは対策が難しい」といった、細分化された**「傾向という名の霧」**に視界を遮られてはいないでしょうか。

僕は、神奈川で塾を経営しながらオンラインで全国の生徒を指導していますが、多くの親御さんから「併願校の対策まで手が回らない」という悲鳴に近い相談を受けます。

結論から言いましょう。「特定の学校に特化しすぎる」ことこそが、実は合格から遠ざかる最大の罠です。 今日は、もっと合理的で、かつ再現性の高い「大枠の思考法」についてお話しします。

「専用対策」という名の呪縛が、学習の自由を奪う

受験業界には、特定の学校の名前を冠した「〇〇対策講座」が溢れています。もちろん、敵を知ることは重要です。しかし、その細分化を突き詰めすぎると、大きな副作用が生じます。

それは、「A校専用の回路」を作ってしまうことで、他の可能性を自ら閉ざしてしまうことです。

もしあなたが、一校しか受験せず、その一回に人生のすべてを賭けるという極端な博打に出るなら、その戦略も否定はしません。しかし、現実の受験は併願校を含めたトータルな戦いです。体調や模試の結果次第で、柔軟に志望校を調整しなければならない場面も出てくるでしょう。

特定の学校にしか通用しない「ガラパゴス化したテクニック」ばかりを磨いていると、いざ志望校を変えようとしたときに、全く手も足も出なくなります。これは教育者として、非常に合理的ではない状態だと考えます。

野球のコーチに学ぶ「3つの方向」で整理する思考

ここで、僕の好きな比喩を一つ。野球のピッチングとバッティングの話です。

現代のピッチャーが投げる球種は驚くほど多彩です。フォーク、スライダー、ツーシーム、カットボール……。名前を挙げるだけで一苦労です。もしバッターが、これら数十種類の球種に対して「名前ごとに異なる打ち方」を準備しようとしたらどうなるでしょうか。

おそらく、脳の処理速度が追いつかず、凡退の山を築くことになるでしょう。

ある優秀なバッティングコーチは、選手にこう教えます。

「ボールを球種という名前で分けるな。『落ちる』『右に曲がる』『左に逆方向に曲がる』の3種類だと考えなさい」

実に合理的です。球種の名前という「枝葉」を捨てて、ボールが最終的にどの方向に変化するのかという「本質(大枠)」に集中する。これにより、バッターの準備は劇的にシンプルになり、あらゆるピッチャーに対応できる汎用性が生まれます。

算数の問題を「抽象化」して横に並べる

算数の学習も、これと全く同じです。問題の形式や出題のクセという「球種の名前」に惑わされてはいけません。

僕が指導の際、生徒に徹底させているのは**「複数の学校の問題を横に並べて、共通の構造を見抜く」**ことです。

構造化の具体例

例えば、一見すると全く異なるA中学とB中学の問題があるとします。

  • A中学: 複雑な図形の中に隠れた法則を見つける問題

  • B中学: 長い文章から条件を整理する問題

これらを「図形」「文章題」と分けて考えているうちは、まだ二流です。大枠で捉えれば、どちらも**「提示された膨大な情報の中から、不変の規則性(ルール)を抽出する力」**を問うているに過ぎません。

この共通点さえ掴んでしまえば、A中学の過去問を解く時間は、そのままB中学の対策にも直結します。本質的な大枠を掴んでいれば、一つの学びが蜘蛛の巣のように広がり、併願校すべての合格可能性を同時に引き上げてくれるのです。

今日から家庭でできる「視点を変える」3ステップ

「大枠で捉える」と言われても、すぐには難しいかもしれません。そこで、今日からご家庭で試していただきたい具体的なステップを提案します。

  1. 過去問を「眺める」だけの日を作る 問題を解く必要はありません。数年分の過去問をパラパラとめくり、直感で「この問題は何をさせようとしているのか」を言葉にしてみてください。「手を動かして調べる根性が必要そう」「隠れた図形を見抜く目が必要そう」といった、自分なりの言葉で十分です。

  2. 共通の「動詞」を見つける 書き出した直感の中に、共通するキーワードを探してください。驚くほど多くの学校が、同じ思考プロセスを求めていることに気づくはずです。

  3. 「野球の球種」で分類する癖をつける 新しい問題を解くたびに、「これはどの方向に曲がるボール(どの思考パターン)かな?」と問いかけてみてください。「規則性」という狭い分類ではなく、「情報を整理整頓する問題」という大きな枠組みで捉えるのです。

知的好奇心が、最強の対策になる

志望校対策において最も大切なのは、不安に駆られて細かなテクニックを詰め込むことではありません。物事を大きな視点で捉え、一見バラバラに見える情報の間に繋がりを見出す楽しさを知ることです。

この「大枠を掴む力」は、中学受験というハードルを越えるための道具に留まりません。将来、僕の娘が大きくなって、あるいは皆さんが社会に出て、正解のない複雑な問題に直面したとき、必ず皆さんを助けてくれる「一生モノの知性」になります。

細かな違いに目を向けすぎて疲れてしまったときは、ぜひ一度立ち止まって、あの野球の球種の話を思い出してみてください。視点を少し引くだけで、目の前の景色は驚くほどクリアになります。

誰でも、視点一つで成長できる。僕はそう信じて、今日も神奈川の教室から、そして画面越しに、皆さんの歩みを応援しています。

今回の内容が、皆さんの学習のヒントになれば幸いです。もし「視点が変わった」と感じていただけたら、ぜひシェアをお願いします。

このブログを書いた先生

このブログに関連するオンライン家庭教師はこちら

中学受験におすすめの指導コース

20,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学4〜6年生
  • 特殊算を基礎から勉強したい方
  • 特殊算が理解出来ていないまま暗記してしまっている方
  • 特殊算の中に理解出来ていない単元がある方
コースの詳細を見る
算数月額コース
【中学受験】つまずきを絵で解決する理科
タイプ別
無料体験あり
【中学受験】つまずきを絵で解決する理科
27,000/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学1〜6年生
  • 塾の授業が分かりきらなくなってきた
  • 塾なしでマイペースに受験したい
  • 理科の計算チンプンカンプン?
コースの詳細を見る
28,000
60(全4回)
小学4〜6年生
  • 入試で問われる思考力や記述力を身につけたい
  • 時事問題を押さえた入試対策をしたい
  • 実用的な文章を理解し、論理的に書くコツを身につけたい
コースの詳細を見る
理科(中学生)月額コース
【理科】SAPIX生向け マンスリー組分けテスト対策講座
三者面談あり
無料体験あり
【理科】SAPIX生向け マンスリー組分けテスト対策講座
33,000/月
1回45(月4回(週1回目安))
小学4〜6年生
  • マンスリーテストで思うように得点できなくてお悩みの生徒さん
  • プラス30点を目標としている生徒さん
  • わかりやすく丁寧に教えて欲しい生徒さん
コースの詳細を見る
社会(中学生)月額コース
【サピックス組分けテスト対策】慶應卒講師と苦手克服!社会編
三者面談あり
タイプ別
無料体験あり
【サピックス組分けテスト対策】慶應卒講師と苦手克服!社会編
22,500/月
1回60(月4回(週1回目安))
小学1〜6年生
  • サピックスに通塾中で、組分けテストで成績アップしたいお子様
  • 中学受験でよく出るポイントを理解して、成績アップしたいお子様
  • サピックスのテキスト課題量が多過ぎて、どこから手をつけていいか分からないお子様
コースの詳細を見る

この先生の他のブログ

ヒロユキの写真

中学受験で宿題をやらない子の「一応やった」の正体

2026/7/18
中学受験で宿題をやらない子は、宿題をやっていないとは言いません。「一応やった」と言います。この一語が出た時点で、その日の学習はほぼ成立していないと考えて、まず間違いありません。僕は毎週、いろんな家庭の子と画面越しに向き合っています。そこで何百回と聞いてきた言葉が、これです。一応。とりあえず。だいたい...
続きを読む
ヒロユキの写真

中学受験の算数で点数が安定しない理由|解き方がバラバラだから

2026/7/18
中学受験の算数で点数が安定しない。偏差値が55と45を行ったり来たりする。この相談を受けたとき、僕はまず、お子さんの実力を疑いません。疑うのは、解き方に型があるかどうかです。同じ単元、同じレベルの問題で、取れる日と取れない日がある。これは実力の波ではありません。毎回ちがうやり方で解いているから、毎回...
続きを読む
ヒロユキの写真

作文の文字数が足りない|伸ばすな、3個書いて1個捨てろ

2026/7/18
作文の文字数が足りないという相談を受けるたびに、僕は同じことを言います。伸ばそうとしているから足りないんです、と。三百六十字以上四百字以内。この手の指定に対して、子どもは書きたいことを一つ思いついて、書き始めて、二百五十字あたりで止まる。そこから絞り出すように、無理やり百字を足す。この足された百字が...
続きを読む
ヒロユキの写真

国語の選択肢の選び方|迷ったら言い過ぎと書いてないを疑う

2026/7/18
国語の選択肢の選び方で迷うお子さんは、消去法を「感覚」でやっています。なんとなく違う気がする、なんとなく合っている気がする。この状態のまま六年生になると、記述は書けるのに選択肢だけ落とす、という不思議な成績表ができあがります。コツは二つだけです。言い過ぎと、書いてない。この二つを疑う。それだけで正答...
続きを読む