過去問はいつから・どう使うか ― 6年生5月の正しい活用法
「過去問はまだ早い」と言う人がいる。「過去問はもう始めるべき」と言う人もいる。
どちらも間違ってはいないが、どちらも「なぜ過去問をやるのか」という目的から考えていない。
目的を明確にすれば、使い方は自然に決まる。
過去問には、複数の目的がある
過去問を解く目的は、一つじゃない。整理すると、主に三つある。
一つ目は、志望校の難易度を体感すること。「自分が目指している学校の問題は、こういう難しさなんだ」という感覚を入れること。
二つ目は、時間配分の練習をすること。45分や50分という制限時間の中で、どの問題にどれくらい時間を使うかを体得すること。
三つ目は、自信をつけること。「志望校の過去問でも解ける問題がある」という体験を積むこと。
この三つのうち、6年生の5月時点で最も有効なのは、一つ目と三つ目だ。二つ目の時間配分練習は、夏以降でいい。
「タイムを計って全部解く」は、まだ早い
5月の段階で、45分で過去問を全部解く練習をしても、あまり意味がない。
得点にならない問題で詰まり、時間切れになる。「やっぱり難しい」という印象だけが残る。子どもによっては、志望校への苦手意識が生まれてしまう。
今の時期に過去問を使うなら、大問1から3〜4番目くらいの、基本〜標準問題だけを解く。時間を計らなくていい。「解いてみる」という感覚で向き合う。
解けた問題があれば、それが重要だ。「志望校の問題でも解けた」という体験が、今の時期の最大の収穫だ。
偏差値帯を下げた学校の過去問を先に解く
もう一つ有効な使い方がある。
第一志望校の過去問ではなく、偏差値50前後の学校の過去問を先に解くことだ。
その層の学校の問題は、基本的に癖がなくスタンダードな問題が多い。コツコツ取り組む子に合格してほしいという学校側の意図が、問題に表れている。技巧的な難問より、正確に基礎を処理する力を見ている。
こういった問題を解かせると、多くの子が「あ、解ける問題がある」と気づく。この気づきが、第一志望への本格的な勉強に向かうエネルギーになる。最初から難しい問題で心を折るより、解ける体験から入る方が、長期的な成績向上に繋がる。
「過去問を取っておく派」への反論
「過去問は直前まで取っておくべき」という考え方がある。
ある程度は理解できる。本番に近い緊張感の中で解くことに意味があるからだ。ただ、6年生の5月の段階で全部温存する必要はない。
今の目的は「体感を得ること」だ。難易度を肌で感じること。解ける問題を見つけて自信を積むこと。これは早めに経験しても問題ない。本番を想定した時間計測や通し演習は、夏以降に別途設計すればいい。
一冊全部を正式な模擬試験のように使うのは夏以降。今は素材として使う、という使い分けで考えてほしい。
今すぐできること
志望校の過去問を用意して、大問1と大問2だけを解かせてみる。時間は計らなくていい。
解けた問題があれば、それを一緒に喜ぶ。「明大明治の問題が解けた」「この学校の問題、意外といけるね」という体験を作る。
それだけでいい。今月の過去問の使い方は、それだけだ。
難問を「解けなかった」経験を積むより、基本問題を「解けた」経験を積む方が、6年生の今の時期には圧倒的に価値がある。