テスト直しを「点」でやる家庭は偏差値が上がらない
毎週テストを受けて、毎週直しをして、毎週「分かった」と言う。
それでも偏差値が一向に動かない。
こういう家庭に共通しているのは、テスト直しを「点」で処理しているということだ。間違えた問題をその場で直して、解説を読んで、「理解した」と記録する。見た目は完璧な学習サイクルに見える。実際には穴だらけだ。
僕は神奈川で塾を経営しながら、マナリンク経由で全国のご家庭と授業をしているが、この「点の直し」問題は偏差値40台から抜け出せない家庭の大半に共通する構造的な欠陥だと考えている。今日はその話をしたい。
「点」と「面」の違い
テスト直しには2種類ある。
ひとつは、間違えた問題だけを直す「点の直し」。もうひとつは、間違えた問題を入り口に、その単元全体を引き直す「面の直し」だ。
たとえば、マンスリーテストでつるかめ算を間違えたとする。
点の直しでは、その1問の解き方を確認して終わる。面の直しでは、「自分はつるかめ算という単元を本当に理解しているか」という問いを立て直し、類題を何問か引っ張ってきて解く。それで初めて、つるかめ算という単元に足場が固まる。
点の直しで終わる子は、同じ単元が形を変えて出題された途端に解けなくなる。当たり前だ。その問題の答えは覚えたが、解法の構造を体に入れていないからだ。偏差値が上がらないのは努力が足りないのではなく、努力の方向が間違っている。
なぜ「点の直し」が蔓延しているか
理由は単純で、点の直しの方が圧倒的に楽だからだ。
解説を読んで、同じ手順でなぞって、ノートに赤で書き直す。これで「直した」という達成感が得られる。親も確認しやすい。「ちゃんと直してあるね」と言える。
でもこれは学習ではなく、学習の模倣だ。
塾でもこの構造は変わらない。集団指導の塾では、テスト直しに割ける時間と手間に限界がある。講師は1問1問を丁寧に説明するが、その単元全体を引き直す作業は子どもと家庭に任せられる。結果として、多くの家庭では点の直しで完結してしまう。
サピックスに通っている家庭でこの問題が顕著に出やすいのは、カリキュラムの速度が速すぎるためだ。今週の単元を「何となく分かった」状態で翌週の単元に進む。積み重なると、全部が薄い。偏差値が45から上がらないのはそのためだ。
サピックスの教材をどの順番で使うか
ここで具体的な話をしたい。
サピックスには複数の教材が並走する。デイリーサピックス(DS)、基礎力トレーニングテスト(確認編・習得編)、デイリーチェック。これらをどの優先順位で処理するかを、多くの家庭が整理できていない。
結論から言えば、偏差値50以下の段階では基礎力トレーニングの確認編と習得編を最優先に据えるのが正しい。
理由は問題の構成にある。基礎力トレーニングは実際の受験校の大問1から大問3相当の問題群だ。本番で確実に得点しなければならない領域を、反復できる形式に落とし込んだ教材と言っていい。ここを取りこぼしている限り、偏差値は上がらない。
デイリーサピックスは応用色が強い。後半の問題になると偏差値60以上の子を対象に設計された問題が含まれている。偏差値45の子がこれに時間を溶かすのは、基礎が固まる前に応用に手を出す典型的な失敗パターンだ。
優先順位の目安はこうなる。
基礎力トレーニング(確認編・習得編)
デイリーチェック(毎回の授業内確認テスト)
デイリーサピックス(余力があれば、大問1〜2を中心に)
これはサピックスを否定しているのではない。教材を順番に使えという話だ。
基礎力トレーニングを「ただこなす」問題
ただし、ここにも落とし穴がある。
基礎力トレーニングは毎日1問ずつ解く形式で設計されている。これを機械的にこなすだけでは、点の直しと同じ構造になる。間違えた問題を直して終わりにする家庭は多い。
正しい使い方は、間違えた問題を直すことではなく、その問題が属する単元をその週に引き直すことだ。たとえば速さの問題で間違えたなら、デイリーサピックスや市販の問題集から速さの問題を2〜3問引っ張ってきて解く。これが面の直しだ。
手間がかかる。だから多くの家庭はやらない。だから偏差値が動かない。
シンプルな因果関係だ。
毎週テストがある子の「直しの設計」
整理する。
週単位でテストがある場合、直しには2段階が必要だ。
まず当日か翌日に、間違えた問題の「手順の確認」をする。なぜ間違えたかを特定する。計算ミスなのか、解法を知らないのか、解法は知っているが運用できないのか。この分類をしないと次に何をすべきか分からない。
次に週内のどこかで、間違えた単元の類題を引いて解く。これは塾のテキストでも市販の問題集でも構わない。「同じ問題を解き直す」ではなく「同じ単元の別の問題を解く」という点が重要だ。
この2段階を毎週回し続けた子は、半年後に別人になっている。根拠のある話だ。
親がすべき「非情な決断」
テスト直しのノートを開いて、赤で書き直してある形跡があれば安心する。それが親の自然な反応だ。
ただし冷静に考えてほしい。その「直した」という状態が、次のテストで同じ単元を正解させる力につながっているかどうかを確かめたことがあるか。
多くの場合、ない。
中学受験の算数は偏差値40台の段階では、「知っているか知らないか」より「使えるか使えないか」の差で決まる。使えるようになるには、同じ構造の問題を複数回解いた経験が必要だ。1問直しただけでは足りない。
明日からやることは一つだ。子どもが直しを終えたあと、「同じ単元の別の問題を3問解かせる」という作業を追加する。それだけでいい。
材料がなければ、僕が授業内で選んで渡す。