夏期講習で「伸びる子」と「消耗する子」を分ける、たった2つの差
夏期講習で「伸びる子」と「消耗する子」を分ける、たった2つの差
夏期講習に期待している保護者に、少し冷たい話をする。
夏期講習は、実力をつける場所ではない。
正確に言えば、すでに土台がある子の実力を加速させる場所だ。土台のない子が夏期講習に飛び込んでも、膨大な問題量に飲み込まれて消耗するだけで終わる。講習が終わった後、何となく頑張った気はするが、偏差値は大して動いていない。そういう子を何人も見てきた。
差はすでに、夏が始まる前についている。
夏期講習で何が起きているか
難関校を目指す子たちが通う塾の夏期講習は、1日に何時間も算数だけをやり続けるような日程が組まれている。1コマで解く問題数は通常の授業の比ではない。
この環境で何が起きるか。計算が速い子は、制限時間内に問題を解き切る。見直しの時間まで確保できる。計算が遅い子は、問題を解き終わる前に時間が来る。焦る。ミスが増える。見直せない。
図形も同じだ。パターンを頭に入れている子は、問題を見た瞬間に「このタイプだ」と判断して手を動かせる。入っていない子は、補助線をどこに引くか、面積比をどう使うか、毎回ゼロから考え始める。同じ1時間で解ける問題数が、根本的に違う。
夏期講習とは、準備した子がさらに伸びる場所だ。準備していない子がいくら通っても、その差は縮まらない。
土台1:計算力
算数の計算は、すべて整数の計算に行き着く。
分数の計算も、小数の計算も、比の計算も、突き詰めれば整数同士の足し算・引き算・掛け算・割り算だ。整数計算が遅ければ、上に乗っているすべての計算が遅くなる。当然、図形の面積を出す計算も、食塩水の濃度を出す計算も遅くなる。
処方箋はシンプルだ。
2桁×2桁の整数計算を、暗算でこなせるようになるまでやり込む。毎日10問でいい。1日2〜5分しかかからない。これを夏まで続けるだけだ。
13 × 27
48 × 36
24 × 75
こういった計算を紙に書かずに、頭の中で処理できるレベルが目標だ。「暗算なんて無理」と思う保護者もいるかもしれないが、毎日積み上げれば3ヶ月で変わる。夏まで時間はある。
計算力は、すぐには上がらない。だからこそ今から始める必要がある。夏が来てから「計算練習しておけばよかった」と後悔しても遅い。
土台2:図形のパターン暗記
中学受験の算数で出題される図形問題のうち、7〜8割はすでにどこかの学校で出題された問題だ。補助線の引き方、面積比の使い方、台形の対角線で分割したときの面積比の公式。これらはすでに解法が確立している。
それを知っているかどうかだけの話だ。
「図形は考える力が必要」という言説が世の中に溢れているが、正確ではない。まず覚える。覚えた後から考える。この順番が正しい。
開成中学校の先生がかつて生徒に言った言葉を教えてもらったことがある。「図形を考える問題だと思っているなら100年早い。まず何百個もあるパターンを全部覚えろ。覚えた後から考えるんだ」。
中学受験算数の最高峰を目指す子たちに向けた言葉だ。偏差値60を目指している子なら、なおさら素直に受け取っていい。
塾から配られている図形特訓のプリントがあるなら、使い方を見直す必要がある。「解けた・合ってた」で終わらせるのは、プリントを無駄にしていると思っていい。同じプリントを繰り返し解き、解法のパターンを丸ごと頭に入れる。問題を見た瞬間に手が動くようになるまでやり込む。それが正しい使い方だ。
夏に伸びる子の共通点
夏期講習で大きく伸びる子には共通点がある。
初見の問題には必ずしも強くないが、2回目は確実に解ける。先週解けなかった問題を今週やり直したら9割以上できている。こういう子だ。
これを「復習ができている」と片付けてしまうと本質を見逃す。この特性を持つ子は、夏期講習で大量の問題に触れたとき、「初見」だった問題が「2回目」に変わっていく。それが積み重なって、秋以降の偏差値を押し上げる。
逆に、計算が遅くて図形パターンが入っていない子は、夏期講習の問題が全部「初見」のまま終わる。量だけ消化して、定着しない。
夏の成果は夏前に決まる。これは誇張ではない。
今から夏まで、やることは2つだけ
6月から夏期講習が始まるまでの期間に、やることを絞る。
毎日10問、2桁×2桁の整数計算を暗算でこなす練習
図形特訓プリントの典型問題を、解法ごと覚えるまで繰り返す
この2つだけだ。
欲張って色々手を出す必要はない。毎日の塾の宿題で手一杯なら、この2つを宿題の隙間に差し込む。計算練習は本当に数分で終わる。図形の反復は、慣れてくれば問題1問あたりの時間が短くなっていく。
夏期講習は、この準備ができている子にとって追い風になる。準備がない子にとっては、疲労と消耗だけが残る体験になる。
どちらの夏にするかは、今決まり始めている。