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「叱らない塾」に通わせた親が、半年後に後悔する理由

2026/5/27

「怒鳴ったりしない、子供のペースを大切にする指導をしています」

塾のホームページや体験授業でこういう説明を受けると、多くの保護者は安心する。うちの子は繊細だから、怒られると傷つくから、と。その安心感はよく分かる。ただ僕は、このフレーズを聞くたびに少し身構える。

叱らない塾には、叱らない理由がある。

「優しい」は方針ではなく、結果だ

まず整理しておきたいのだが、叱らないこと自体が問題なわけではない。問題は、叱らないことが指導の「哲学」ではなく、「楽さ」から来ている場合だ。

子供を叱ることは、エネルギーがいる。叱り方を間違えれば保護者からクレームが来る。だから叱らない方が、塾の運営として都合がいい。「子供のペースを大切に」という言葉が、実態として「何も言わない」と同義になっているケースが存在する。

本当の意味で子供に向き合う指導者は、必要な時に必要なことをはっきり言う。褒めることも叱ることも、どちらも相手への本気の関与だ。どちらもしないことは、関与していないことと同じだ。

言い訳を許された子供はどうなるか

宿題をやってこなかった時、何が起きるか。

叱らない塾では「じゃあ一緒にやろうか」になる。その瞬間は温かい空間だ。ただ、子供の中に何が残るかを考えてほしい。やってこなくてもなんとかなった、という経験が積み上がる。

次の週もやってこない。また一緒にやる。その繰り返しの中で、子供は確実に「宿題はやらなくていいもの」という学習をしていく。これは怠惰ではなく、合理的な適応だ。罰がないなら、やらない方が楽だ。子供は正直だ。

宿題の未提出を叱ること、言い訳を許さないことは、子供を傷つけるためではない。「この水準を下回ることは許されない」という基準を、外側から入れてやることだ。自己管理がまだできない年齢の子供に、内側からの自律を期待するのは間違いだ。

9割の子供は、やりたくて勉強していない

中学受験をしている小学生の9割以上は、自分から「勉強したい」と思って始めたわけではない。親が動かし、塾が動かし、環境が動かしている。

この前提に立てば、叱らない指導の限界が見えてくる。

内側にエンジンがない子を動かすには、外側からの力が必要だ。その力の一つが、プロによる適切な叱責と要求だ。「ここまでやってきてくれるよね」「これができないのは困るよね」という言葉を、親ではなくプロから言ってもらうことで、子供の認識が変わる。

親が同じことを言っても動かない子が、塾や家庭教師の先生に言われると動く。これはよくある話だ。権威の場所が違うからだ。プロから言われた言葉の重さは、親の言葉とは種類が違う。叱らない塾は、この力を自ら放棄している。

「仏」と「鬼」の本質的な違い

僕は生徒を持つ時、保護者に必ず聞く。仏コースがいいか、鬼コースがいいか、と。

仏コースは褒めて伸ばす。できたことを認め、次への意欲を作る。ただし、これが機能するのは、ある程度自己管理ができていて、内側にエンジンがある生徒に限られる。

鬼コースは要求水準を下げない。宿題の未提出を許さない。できていないことをはっきり指摘する。怒鳴らない、人格を否定しない。ただし妥協もしない。

大事なのは、鬼コースが怖いということではない。要求し続けることだ。「君ならここまでできるはずだ」という前提で関わることだ。これは子供への侮辱ではなく、信頼の表れだ。

叱らない塾が実質的に子供に送っているメッセージは何か。「あなたにはそこまで求めない」だ。

本物の優しさがどこにあるか

叱ることと傷つけることは、別のことだ。ここを混同している保護者が多い。

怒鳴る、人格を否定する、比較して貶める。これは傷つけることだ。プロがやることではない。

一方で、基準を下げない、言い訳を聞かない、できていないことを正確に伝える。これは叱ることだ。相手を本気で動かそうとしているから生まれる行為だ。

子供に媚びない大人が、子供を育てる。受験という短い期間の中で、本当の意味で子供に向き合える指導者を選んでほしい。

6年生の2月に、あの時叱ってもらって良かった、と思える場所が、今の子供に必要な場所だ。

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