過去問の解説を聞くだけの授業で算数が伸びない理由

過去問の解説を聞くだけの授業で、算数が伸びない。週に1回、過去問を解いて持っていき、先生に解説してもらう。その問題はわかるようになるのに、次の年度の過去問ではまた同じように点が取れない。この形の授業が伸びない理由は、先生の腕ではなく、授業の設計にあります。解説には再現性がないのです。
解説を聞いて「わかった」は、できるようになったとは違う
極端な例で考えてみます。小学6年生に、東京大学の数学の入試問題を丁寧に解説したとします。上手な先生が順を追って説明すれば、その場では、なるほど、と思わせることはできるでしょう。
では、1週間後に同じタイプの別の問題を解かせたら、解けるでしょうか。まず無理です。東大の問題を解くには、その手前に積み重ねてきた知識や解き方がいくつも必要で、それがないまま一つの問題の解説だけを聞いても、自分の力で再現できないからです。
過去問の解説授業で起きているのは、これの小さい版です。過去問の後半の問題は、いくつもの単元の基本が組み合わさってできています。基本に穴がある子が解説を聞くと、わかった気にはなります。しかし、その理解は解説を聞いているその場限りで、次の問題で自分の手から出てきません。わかった気にさせることは、教える側にとって一番簡単で、受ける側にとって一番高くつく仕事です。
過去問の解説授業になってしまう構造
念のため言っておくと、過去問の解説授業そのものが悪いわけではありません。6年の秋は、総合問題を解かないとどうにもならない時期です。先生が過去問を優先するのは、判断としてはむしろ正しい。生徒に問いかけながら気づかせる対話形式の解説なら、教え方としても上等です。
問題は、週1回1時間という枠の中で、過去問の解説だけで時間が埋まってしまうことです。苦手な単元を教わる時間がない。宿題もほとんど出ない。子どもは、自分が苦手なところを教えてもらえない、と感じています。その感覚はたぶん正しい。
ここで、授業を週2回に増やせば解決すると考える家庭が多いのですが、それも危うい。先生と方針を話し合わずに回数だけ増やすと、じゃあもう1年分過去問をやろう、となる可能性が高いからです。解説を聞く時間が倍になるだけで、再現性のなさは何も変わりません。
解説を「再現できる力」に変える3つの手順
過去問の授業を伸びる授業に変えるには、解説の後ろに、自分で再現する手順をつける必要があります。
解説を聞いた問題を、数日後に白紙から解き直す。図と式を自分で書いて、答えまでたどり着けるかを確かめる
解き直せなかった問題は、その問題に含まれる単元を予習シリーズで特定し、基本問題に戻る
基本問題を解いたら、もう一度元の過去問を白紙から解く
この往復を入れると、1年分の過去問にかかる時間は倍以上になります。それで構いません。10年分の解説を聞いて何も残らないより、3年分を再現できるまでやり切るほうが、本番の点数は確実に上がります。
先生と話すべきこと
今の授業に不満があるなら、先生を替える前に、一度先生と話してください。聞くべきことは次の3つです。
1つ目は、解説した問題を自力で解き直せているかを、どう確認しているか。2つ目は、過去問で崩れた単元の基本を、いつどこで埋める計画か。3つ目は、今のやり方で、志望校の合格ラインにどのくらいの見込みで届くと考えているか。
この3つに具体的な答えが返ってくるなら、任せていい。返ってこないなら、授業の中身を変えてもらう必要があります。先生を信用できないまま授業を続けるのが、一番健全ではありません。
親が明日からすべき非情な決断
解説を聞いて、わかった、と言う子どもの言葉を、そのまま信じるのをやめてください。
わかったかどうかは、本人の感想ではなく、数日後に白紙で解けたかどうかで判断する。解けなければ、わかっていなかったということです。冷たく聞こえるかもしれませんが、本番の入試会場には解説してくれる先生はいません。白紙から自分で再現できたものだけが、2月に持っていける力です。
まとめ
過去問の解説授業で算数が伸びないのは、解説を聞いただけの理解には再現性がないからです。解説の後に、白紙から解き直す、崩れた単元の基本に戻る、もう一度元の問題を解く、という往復をつける。そして先生と、確認方法と基本の埋め方と見込みについて話す。これで、同じ過去問の時間が伸びる時間に変わります。
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