「せんせいは、どこからきたの?」~ある日の日記より
2019/8/27
私が小学校で教員として勤務していたときのこと。
私は非常勤講師(要はアルバイト先生)で、小学校1年生のクラスに入って学習支援をする立場だった。
小1クラスを受け持っていると毎日のように面白いことが起こる。
そのうちの一つが「せんせいは、どこからきたの?」「せんせいは、にほんじんなの?」という質問。
当時私は2年連続で1年生の担当をしていたが、2年連続で、異なる児童に異なるタイミングで、全く同じ質問をされた。
もちろん最初は面食らった。なぜなら私は生まれも育ちも日本だから。海外に行ったことすらなかった。
ただ、1年生は彼らなりになにか思うところがあって、その質問をしてきたはずである。
その、彼らが「思うところ」をどうにか解明したいと考えた。
当時私が勤務していたのは、千葉県にある小学校。
私は関西で生まれ、関西で育ち、成人してからもしばらく関西に住んでいた。
およそ12年前に仕事の都合で東京に引っ越し、その後転職して茨城に住むようになった。
今では標準語も正しいイントネーションで話すことができるのだが、気が緩むとつい関西弁が出てしまう。
子どもたちは、私が彼らにとって聞き慣れない変な日本語を話していることから、先生は外国人だ、という発想に至ったらしい。
標準語と関西弁との違いはイントネーションだけにとどまらない。
例えば標準語では「疲れる」というところを、関西弁では「しんどい」「えらい」などという。(「えらい」は京都の北部などでよく聞く)
標準語で「直す」と言えば修理することを指すが、関西弁で「直す」は何かを片付ける・収納することを指す。
クラスで日替わりで児童が務める「日直」は、私の生まれ育った神戸では「日番(にちばん)」と言っていたため、
私もしばしば「日直」ではなく「日番」と言ってしまっていたことがあった。
なるほど、私の使う日本語は、千葉県で生まれ育った1年生には奇怪で、時折理解に苦しむ日本語に聞こえたはずである。
日本語に方言があることをまだ知らない彼らが、私を「間違った日本語を話す外国人」だと考えるのも無理はない。
もちろん仕事中は可能な限り標準語で話すよう気をつけているつもりだ。
ただ、ときどき、あえて関西弁を使うこともあった。
なぜなら、彼らは私の話す関西弁に触れることによって、方言が話されている地域があることを知ることができるからだ。
また、方言を知ることによって(必須ではないが)彼らの中の語彙は格段に増える。
出身地に関する話を通して、地方の文化や慣習を知ることもできる。
彼らと一緒にいることができた期間は決して長くはなかったが、
それでも彼らは、日本には方言があること、言葉には様々な意味があることを学んだのではないだろうか。
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I work as a part-time teacher at an elementary school.
I teach 1st-grade students.
At school, my students always ask me if I’m Japanese.
Of course, I’m Japanese and I’ve never been asked that kind of question until I started to work at the elementary school.
I wondered why they thought I was not Japanese.
The school is located in the northern part of the Chiba Prefecture.
The students living there usually speak standard Japanese.
However, I usually speak in the Kansai dialect* because I was born in and grew up near Osaka.
Also, they still don’t know about the many other Japanese dialects.
That’s why they asked me that kind of question.
The students I taught last year also asked me the same question.
I was really surprised when I was asked that for the first time.
It’s interesting for me.
Standard Japanese and the Kansai dialect are quite different,
not only in terms of accent* and words but also with some grammar* rules.
For example, we say “tsukareta” in standard Japanese when we feel tired, but we say “shindoi” in the Kansai dialect.
We also say “naosu” in the standard version of Japanese when we talk about repairing something,
but “naosu” means to put something away in Kansai dialect.
As you can see in those examples, there are a lot of things different between standard Japanese and the Kansai dialect.
The students seem to think that I’m speaking another language because sometimes they can’t understand me.
If I find that the pupils aren’t able to understand what I said, I always reword* what I said in standard Japanese.
There are, however, no rules that prevent teachers from using other Japanese dialects.
Of course, I always try to avoid speaking in my dialect as much as possible,
but I think knowing about these dialects more is a good thing for children.
I say this because discovering these other dialects can help them discover other cultures and customs in their country.
It can also help them widen* their vocabulary.
Sometimes, my students ask me these questions:
“How far is Osaka from here?”, or “What is the meaning of shindoi?”.
Some of them have even said,
“I know Osaka because my grandparents live there!” when they find out I’m Japanese and I lived pretty near Osaka.
I hope that they will acquire a broad range of knowledge by discovering the other Japanese dialects.
dialect*:方言 accent*:アクセント(イントネーション) grammar*:文法
reword*:言い直す widen*:広くする
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