「すごい」を封印するだけで文章が変わる~作文のちょっとしたコツ

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2019/11/28

私が小学校3年生のときの担任は、山本先生という50代のベテラン先生だった。

山本先生はちょっと変な先生。

「慌てる乞食はもらいが少ない」が彼の口癖。

よく児童に作文を書かせては、児童の目の前で添削をしてくれる先生だった。

その先生が口を酸っぱくするほど言っていたのが

作文から「すごい」を追放しろ、ということ。


小中学生の作文や読書感想文。

彼らが書いた文章を見ていると、必ず1つは「すごい」が入っている。


例えば、

私はこの主人公がすごいと思いました。

この本はすごいです。

私はすごい経験をしました。

などなど。


山本先生は「すごい」を見つけるたびに作文の書き直しをさせた。

「”すごく”どうなんだ」と言って。


子どものころはこれが不満で仕方なかった。

小学生の私にとって「すごい」はとても便利な言葉だったから。

幸せ、悲しい、驚く、感心する、感動する…

ありとあらゆる感情表現を「すごい」というたったの一言で片付けることができるから。

ある意味で、子どもの頃の私にとっては魔法のような言葉だった。

…いや、普段書いたり話したりするときは、今でも「すごい」の恩恵にあずかっているのだけど。


今になって思うのは、

山本先生は「すごい」を子どもから取り上げることによって、

自分の感情を、考えたことを、

もっと適切な言葉で表現できるよう仕向けていたのだということ。


適切な言葉を使えるようになれば、

自分の言いたいことをきちんと人に伝えられる文章を

書くことができるようになるということ。


「すごい」という言葉は、日本の国文法では形容詞だけれど、

英語でいえば very や really に相当する。

「この本はすごい」という文を無理やり英語で書くとするならば、

This book is very.

で終わってしまうということだ。

very で文を終わらせてしまったら、何が言いたいのかわからない。

very の次にはどんな単語が来るんだ、と

つい突っ込みたくなるはず。


日本語でも同じことで、

「すごい」でごまかしてしまうことによって、

interesting なのか、exciting なのか、

funny なのか、moving なのか、

いや、もしかしたら boring かもしれないけれど、

あなたが「どう感じたのか」という、

作文のなかで一番大切なところがぼやけてしまって相手に伝わらない。


だから文章をうまく書けなくて悩んでいる人や、

高校受験で作文課題がある人は、

まずは文章の中にある「すごい」を封印するところから始めてみよう。


「すごい」を封印することによって

読む人に、あなたの感情や考えていることが伝わりやすくなる。


幸せとか、悲しいとか、驚いたとか、

そういう感情を強調するために「すごい」を使いたいときは、

「すごい」のかわりに「とても」「非常に」「きわめて」などの言葉を使ってみよう。


そうすると、あなたの作文は驚くほど変わるはず。

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