みかんとsatsumaと英会話

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2019/8/28

果物の中で私が好きなものと言えば、一番は桃。二番目はみかん。

どちらも年がら年中食べられるものではない。

特に桃は、梅雨から夏の間のごく短い期間にしか売られていない。

みかんはと言えば、晩秋から早春にかけて、比較的長い間スーパーなどの店頭で販売されている。


みかんが嫌いな日本人はどのくらいいるのだろう。

今まで考えたこともなかったが、おそらくかなり少ないのではないかと想像する。

ともあれ、私はみかんが大好きである。

霜が降り始める初冬になると、だいたいみかんをダンボールで箱買いして、おやつがわりに食べている。

うちの猫はみかんを異様なほど怖がるので、猫に乗られたくないところにもとりあえずみかんを置いている。

(カビが生えるので定期的に食べる)

我が家では、みかんは食べ物として、だけではなく、猫よけとしても重要な役割を果たしているのだ。




ところでこのみかん、英語でなんと言うかご存知だろうか。

私はと言えば、ちょうど看護学校を受験する方向けの一般常識のテストを探していたときに偶然知ったのだが。


みかんを英語で表現するとき、Japanese tangerine、あるいはJapanese mandarin でももちろん伝わるのだが、

英語、とりわけイギリス英語ではsatsuma(サツーマ)と呼ばれる。

もちろん日本語由来の単語である。


疑ってかかる人のために、手持ちの英英辞典の写真を載せよう。

【オックスフォード現代英英辞典:第9版より】



satsuma:a type of small orange without seeds and with loose skin that comes off easily
サツマ:種のない、簡単に皮がむける小さなオレンジの一種



私の英語がいまいち信用できない、という人のために、weblioの該当箇所も示しておくことにする。

satsumaの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

1000万語収録!Weblio辞書 - satsuma とは【意味】ウンシュウミカン,薩摩(さつま)焼き... 【例文】Satsuma tsutsu (gun made in Satsuma)... 「satsuma」の意味・例文・用例ならWeblio英和・和英辞書


ちょっと中学校で日本の地理をかじった経験のある人ならわかるだろう。

みかんの生産地と言えば、和歌山県と愛媛県、静岡県が有名で、

かつて「薩摩」と呼ばれていた鹿児島県はみかんで有名なわけではない、ということが。


農林水産省のデータを見ても、やはり鹿児島県は「みかんの生産がとりわけ多い地域」とは言いがたい。

せいぜい大阪と同じくらいの生産量である。


ではなぜ、みかんが「サツマ」と呼ばれるようになったのか。



話は変わるが、外国人と英語で話していると、

日本のことについて説明をしなければならないことがよく出てくる。


例えば、着物はどのようなときに着るのか、なぜそのときに着るのか。

神社の鳥居はなぜ赤いのか。

おでんに入っているコンニャクとはどういうものか。

(コンニャクは発音の似ているコニャック(酒)とよく間違われる)

七五三はなんのために行われているのか。どんな行事か。


日本に住んでいると、どうしても日本に昔からあるものや行事に関心が向かなくなる。

「そういうものだから」で済ませがちになってしまう。

外国人と話していると、英語でうまく表現できないこと以上に

自分がどれだけ日本について知らないかを思い知らされて愕然とする。


みかんがなぜ英語でsatsumaと呼ばれているのか、というのも同様だ。

ちょっと日本のことを勉強している外国人であれば、薩摩が鹿児島県を指すことくらいは知っている。

ではなぜ、みかんをsatsumaと呼ぶのか。

鹿児島と何か関係があるのだろうか?



英語の4技能化が叫ばれている昨今。

確かに「書くこと」「話すこと」はこれから重要視されていくだろう。


ただ、それよりも重要なのは

海外の人とコミュニケーションを取るためには、

わたしたちはもっと自分の国について、自分の国の文化や慣習について、

正しい知識を持っておかなければならない、ということ。

あらゆることがらに対して、自分の意見を持たなければならない、ということ。

そしてその知識や意見を、きちんとアウトプットするための技術が必要であるということ。


知識がなければ話せないのだ。

意見がなければ話せないのだ。


書いたり、話したりするためのベースとなる知識を身に着けさせるのが、今の教育。



今は梨がスーパーの店頭に大きな顔をして並んでいる。

梨は店頭から消えていく頃、梨の代わりにみかんが台頭するだろう。

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