慶應SFCの小論文が難しいと言われる5つの理由と「採点基準」
2025/1/18
今日は全国各地で共通テストが実施され、
受験生の皆さんは長時間の試験でお疲れのことと思います。
お疲れ様でした。
そして同時に、慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の個別選抜試験まであと1か月となりました。「SFCの小論文は難しい」という声をよく耳にしますが、その「難しさ」の本質はどこにあるのでしょうか?
見えない採点基準という不安
これまで多くの受験生に関わってきましたが、いつも感じるのは「採点基準が見えない」ことへの不安です。個人的に、採点基準(=ゴール)が明確でない中で進むことには大きなリスクがあると考えています。これは小論文に限らず、何事においても同じです。
なぜなら、根拠のないままにガムシャラに進めても、なぜ上手くいったのか、あるいはなぜ失敗したのかという原因が蔑ろになり、本質的な実力向上が難しくなるためです。もちろん、時間に余裕があって小論文だけに集中できる環境であれば、試行錯誤も可能かもしれません。しかし受験期の限られた時間の中では、それは現実的ではありません。
SFCの場合、この「見えない採点基準」という課題が特に顕著です。そのため、私の授業では独自に作成した回答例と採点基準を示しながら、指導を進めています。では、どのような特徴があるのか、順番に見ていきましょう。
一般的な小論文との違い
まず小論文試験は通常、以下の3つのパターンに大別されます。
①テーマ型:与えられたテーマについて自由に論じる
②課題文読解型:提示された文章を読解し、それに対する考察を展開する
③資料解釈型:図表やデータを解釈し、それに基づいて論述する
しかし、SFCの小論文はこれらのいずれとも一線を画しています。強いて言えば課題文読解型に近い要素を持っていますが、その本質は大きく異なります。
SFCの小論文が「難しい」理由
1. 独自性の際立つ問題設計
SFCの小論文は、独自の問題設計と採点基準に基づいています。これは単なる「難しい」というレベルではなく、「異質な」という表現が適切かもしれません。従来の受験勉強の延長線上だけでは対応が難しい所以です。
2. 総合的な学力と個性の重視
一般的な入試では「正解」を求めることが多いのですが、SFCでは受験生の総合的な学力や個性を評価することに重点が置かれています。これは、SFCが掲げる「問題発見・解決型」の人材育成という理念と直結しています。
3. 幅広いテーマと複雑な出題形式
試験では、環境問題から最新のテクノロジー、社会問題まで、実に多様なテーマが扱われます。しかも、5種類以上の資料(文章、図表、データなど)を組み合わせた複合的な出題が特徴です。これらの資料から共通するテーマを見出し、問題の本質を把握する力が問われます。
4. 高度な思考力への要求
単なる文章作成能力だけでなく、以下のような複合的なスキルが要求されます。
・多角的な視点からの分析力
・データの適切な解釈能力
・論理的な思考力
・創造的な問題解決能力
・豊かで明確な表現力
5. 時間配分の重要性
120分という比較的長い試験時間が設定されていますが、これは決して余裕があるわけではありません。むしろ、この時間をいかに効率的に使うかという「時間管理能力」も試されているといえます。
①資料読解:約40分
②問題の本質理解と構想:約30分
③論述:約40分
④見直し:約10分
といった配分が一般的ですが、問題の特性に応じて柔軟にバランスを調整する必要があります。
効果的な対策アプローチ
ここで重要なのは、「見えない採点基準」に対して、どのようにアプローチするかです。私の経験から、以下のような準備が効果的だと考えています。
過去問の徹底分析
・出題パターンの把握
・要求されている思考プロセスの理解
・時間配分の検討
多角的な視点の養成
・時事問題への積極的な関心
・様々な立場からの考察習慣
・データ分析スキルの向上
論理的思考力の強化
・問題発見→分析→解決提案のプロセス訓練
・根拠に基づく主張の組み立て
・具体例を用いた説得力の向上
おわりに
確かにSFCの小論文は「難しい」試験です。しかし、その「難しさ」を理解し、適切な準備を行えば、決して越えられない壁ではありません。
むしろ、この「見えない採点基準」という特徴は、SFCが求める「自ら課題を発見し、解決策を見出せる人材」という理念の表れとも言えます。実社会では、正解が明確に示されることは稀です。その意味で、この小論文試験は、すでにSFCでの学びの第一歩と捉えることができるのではないでしょうか。
残り1ヶ月、この試験の本質を理解した上で、自分なりの準備を進めていってください。皆さんの健闘を祈っています。