構成から始める人が、永遠に“伝わらない理由”
2025/4/8
文章を書くとき、プレゼンを準備するとき、「まず構成を考えよう」と思っていませんか?実は、伝わらない人ほどやっている順番なんじゃないかと最近疑っています。
私もそうなんですが、構成が整っていると「準備ができた気になる」。でも、話してみると響かないし、書いても反応が薄い。(共感してもらえるかな…?)
なぜか?答えはシンプルです。“考えていない言葉”を、いくら整えても届かないんです。
今回は、「伝える」ために、あえて「構成から始めるな」と言いたい理由を、自分の実体験と、思考プロセスの本質からお話しします。
「構成を整えれば伝わる」と信じていた頃
私はずっと、「伝える=構成だ」と思っていました。
マーケティング資料、プレゼン、企画書、ブログ…どんなアウトプットでも、まず「3部構成」を考えるクセがついていました。
①導入(興味をひく)
②本題(課題・解決策)
③まとめ(行動喚起)
この流れに乗せれば、うまくいく。そう信じていたんです。
実際、フォーマット的には“それっぽい”資料や文章ができる。けれど、薄くなりがち。
「で、結局何が言いたいの?」みたいな。
そして私はよく、「うーん…なんかうまくまとまらないんだよな~」と自問自答してました。
でも、あるとき気づきました。「まとまらない」のではなく、そもそも“考えてなかった”、と。
「言葉が詰まる理由」は、構成じゃなく“中身”の不足
伝わらないのは、“考える→言葉にする→構成する”という順番を間違えていたからだったと、気づいたのは、160人の学生に向けた授業の準備をしていたときのことでした。
私は真面目に資料を作るタイプで、その回も、導入・展開・結論まで流れを整え、スライドもそれなりに仕上がっていた。
でも、数日前──ふと手を止めて思ってしまったんです。
「あれ?そもそも、この授業で一番“何を伝えたかった”んだっけ?」
構成はまとまっているのに、肝心の“中身”が自分の中からスッと出てこなかった。
それはつまり、私は考える前にまとめてしまっていたということ。
「これでは伝わらない」と直感的に思い、思い切って、資料をゼロから作り直すことにしました。
まず最初にやったのは、自分に問いかけること。
・なぜこのテーマを選んだのか?
・何に違和感を持っているのか?
・この90分で学生に“どんな問い”を残したいのか?
ぐちゃぐちゃでもいいから、とにかくノートに言葉を吐き出していった。
順番も、ロジックも気にしない。ただ、“自分の考え”を探ることに集中した。
そこから出てきたものを、ようやく「どう話せば伝わるか」に変換し始めた。
そうやって伝えた授業は、自分の中では印象に残る。
話していて、自分の中から“ちゃんと出ている感覚”があった。
学生の表情も良く、目が合う回数が増える気がする。
授業後の感想には、こう書いてあった。
「抽象的なテーマだったが、分かりやすかった」
「伝えたいことがよくわかった」
「先生のなぜ今自分たちにこれを話すのかが理解できた」
私はそのとき初めて、心からこう思った。
「構成だけでは、伝わらない」
むしろ、“伝えたい思い”が先にあって、それをどう形にすれば届くか?という順番じゃないと、言葉には体温が宿らないのだなと。
構成とは「伝え方」であって、「考えた結果」ではない
これは認知科学の観点から見ても理にかなっています。
脳科学者の茂木健一郎氏は、「思考はアウトプットすることで深まる」と言います。
つまり、構成(=整理)しようとする前に、言葉にならない“もやもや”を出す工程こそが重要なんです。
構成は、考えた結果を“わかりやすく伝えるための手段”にすぎない。
構成そのものには「思考」は含まれていません。
これは文章術の本でも同じです。『書くことについて』(スティーブン・キング)でも、
“書くとは、考えることである”と言っています。
「考える → 言葉にする → 構成する」順に変えたら、世界が変わった
じゃあ、どうすれば“伝える言葉”が生まれるのか?
私がたどり着いた順番は下記です。
✅ Step 1:まず「考える」
ノートに、問いを書きます。
とにかく、“構成っぽいこと”を考える前に、自分の思考を掘る。
ここをサボると、絶対に薄っぺらくなる。
✅ Step 2:ぐちゃぐちゃのまま言語化する
これは、「とにかく誰かに話してみる」が一番です。
まとまっていなくても人に話しみると、話の着地点が何か、
構成をどうすべきか、説得力がない部分が何か、など自分で理解できます。
あとはよく、独り言を言ってはセルフでツッコんでみたり、
タイピングで手を止めずに書き殴ってAIになげてみたりします。
文章じゃなくてもいいです。
キーワードだけでも、図でも、マインドマップでも。
“整える前の混沌”が、いちばん大事なんです。
✅ Step 3:最後に構成する
考えたこと、吐き出した言葉をあとから整理するだけ。
・「この話、まずどこから言うと伝わりやすいかな」
・「このパート、順番を変えた方がわかりやすいかも」
・「例え話を入れた方が良さそうだな」
構成は、この段階でやれば、自然に「伝える設計」になります。
この順番に変えてから、明らかに反応が変わりました。
・プレゼン後に「話が刺さった」と言われる・文章に「熱がある」と言われる・「あなた自身の考えが伝わってきた」と言われる
構成を整えるのではなく、考えた跡を見せることのほうが、はるかに人の心を動かすんです。
きれいにまとめる前に、“あなた自身”がいるか?
あなたが今、誰かに何かを伝えたいとき。その言葉の中に、
“あなた自身の思考”はありますか?
伝わらないのは、言葉が足りないからではなく、
“考えた跡”がないからかもしれません。
整ってなくていい。ぐちゃぐちゃでいい。
まずは、自分の中の“もやもや”を出すこと。
その先に、初めて「伝わる構成」が生まれるんです。
まとめようとするな、考えろ。
この順番を変えるだけで、言葉は生きる。
今の時代、情報だけならググれば出てくるし、AIに聞けばすぐに答えてくれます。
それでも、“あなたが”語る意味があるとしたら?
それはきっと、経験に裏打ちされた言葉、価値観がにじむ表現、迷いも含めたリアルな思考にある。そこに共感し、「聞きたい」と思う人が、ちゃんといるんです。
この記事が「自分もそうかも」と思った人は、
ぜひ一度、“構成を捨てて、思考から始める”体験をしてみてください。
拙くってもいいんです。拙い人の方が伝わる、という現象が偶に起こるのは
こういうことですよね。
僕も頑張ります。一緒に頑張りましょう。
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