AI時代の総合型選抜──AIに勝てるのは、「問いの起点を語る人」
2025/3/29
GPTが「正しそうな志望理由書」を量産している現実
今、ChatGPTやClaudeを使えば、「志望理由書っぽい文章」は5分で完成する。
試しに「グローバルに活躍したい高校生の志望理由書を書いて」と入力してみると、こんな感じになる👇
「貴学の国際的な教育環境に魅力を感じ、世界で活躍するための視野を広げたいと考えています。」
整ってる。けど、個人が消えてる。
これは今、総合型選抜の現場で実際に起きている問題だ。
「GPTに書かせた志望理由書がバレるって本当ですか?」
これは、実際に高校生から受けた質問だ。
「ChatGPTで志望理由書を整えたら、めっちゃそれっぽい文章になったんです。でも先生に見せたら、“あんたの言葉じゃないね”って言われて…」
同じような話、面接官サイドからも聞く。
「最近、やけに整った書類が増えてる」
「でも話し出すと、あっ、この子は“言わされてるだけ”だって分かる」
GPTは、文脈の筋は通せても、「体温」を持てない。
つまり、“熱のない正論”はすぐに見抜かれる時代になった。
教育現場・大学側も「AI生成文の急増」に気づいている
慶應義塾大学SFCの入試委員はこう語る(2023年・講演会にて)
「形式として整っていても、“その問いがなぜ生まれたか”を語れない受験生が増えている。
AIの進化と共に、“問いの個人性”が最重要になっている。」
さらに、2023年に発表された「大学入試改革におけるAI利用とリスク」報告書(文科省内研究会)では、以下のような指摘がある。
- 生成AIによる出願書類の“質的画一化”が進行中
- 今後、評価軸は「独自の経験→問い→接続性」へと移行せざるを得ない
つまり、大学側も「見た目が整ったAI文」ではなく、“人間の背景”がにじむ表現を求め始めている。
GPTが書いた志望理由 vs 人間が書いた志望理由
教育系YouTubeチャンネル「EduLog」で行われた検証実験
- ChatGPTが書いた志望理由書
- 実在の高校生が書いた志望理由書
この2つを大学生100人に見せて「どちらに共感したか?」を聞いたところ――
- ChatGPT文に共感:12%
- 高校生のリアル文に共感:88%
コメントの多くがこうだった。
「AIの文章は整いすぎていて、気持ちが動かなかった」
「後者は感情の動きがあって、応援したくなった」
この実験が示すのは、“整ってる=評価される”ではない時代が来ているということ。
AIは「正確性」は得意でも「起点」はつくれない
OpenAIの公式ドキュメントでは、こう明記されている。
「ChatGPTは“信頼性の高い情報の提示”はできるが、
“ユーザーの個人的な体験や背景に基づいた創造性”は出力できない。」
つまり、志望理由書においてAIが不得意なのは、
✔️ あなたの過去と
✔️ あなたの違和感と
✔️ あなたの問いが
どうつながったかという「人生の因果構造」。
評価されるのは「思考のオリジナリティ」
2022年のSFC AO入試合格者データ
✅ 合格者に共通していたキーワード:「自分にしかない問い」「違和感から出発」
✅ 不合格者に多かった特徴:「語彙は整っているが背景が薄い」「志望動機が抽象的」
要するに、言語の完成度より、“問いの起点”を語れる人が受かっている。
これって、AIでは再現できない“人間の痕跡”なんですよね。
✅AI時代の総合型選抜で評価される3条件
評価ポイント AIができる? 人間だけの強み
情報の整理 ◎ 〇
論理の構成 ◎ ◎
自分の問いの起点を語る ✖ ◎
AIの整った文章はもう“普通”。誰でも書ける。
あなたが何を感じ、どう問いに変えたか。そこにしか勝負の余地はない。
じゃあ今、私たちが鍛えるべき力って何?
AIができない、人間だけができる力。
それは「違和感を言語化する力」と「問いを育てる力」。
つまり、志望理由書や面接、小論文においても――
- 自分だけの問いを立てる
- その問いに至った経緯を語れる
- 社会や学問とどう接続させたいかを示せる
この「問い→背景→接続」の構造を、自分の言葉で語れる人が評価される。
AIで差がつかない時代、「問い」でしか人は選べなくなる
あなたが「なぜそれを学びたいのか?」という問いに、
AIがどんなに整った文章を生成しても、そこに“意味のにおい”がなければ通じない。
だから、これからの総合型選抜では
- 見た目の完成度より、「問いの必然性」
- 情報の網羅性より、「あなたの視点」
- 論理性より、「不完全でも熱がある言葉」
が評価されていく。
AIが“正しさ”を書くなら、人間は“納得”を書け。
これが、AI時代の総合型選抜の本質だ。
「問いの起点」を語るテンプレ
「私は〇〇という体験から、“なぜ△△なんだろう”という問いを持つようになりました。その問いを、大学では□□という学びに接続して深めたいと考えています。」
この一文を、自分の人生の文脈で埋められるか?それが、今後の受験の分水嶺になる。
AI時代の総合型選抜は、“うまく書いた人”が受かる時代ではない。“自分にしか持てない問い”を、どれだけ本気で育ててきたか?
そのプロセスごと見せることが、最強の武器になる。
ご興味のある方には問いの起点テンプレートも配布します。
お気軽にご連絡ください!
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