「今日は授業どころじゃない!」そんな日に、家庭教師とどう向き合う? ――授業前から始まる、親子と先生のサポート
お子さんが「家庭教師したくない!」と気分が乗らない日があるかもしれません。
学校で嫌なことがあった。
部活で疲れた。
友達とのことでモヤモヤしている。
なんとなく気分が落ちている。
お腹が空いている。
疲れている。
いくつかのことが重なって、家に帰ってきた頃にはもう限界。
そして、
「今日は家庭教師の日だよ」
と言われた瞬間、
「いや!」
「やりたくない!」
となってしまう。
なんとかパソコンの前まで来ても、
気分が上がらない。
返事をしない。
先生が話しかけても「……」。
問題を出しても反応がない。
こうなると、先生側がどれだけ楽しい授業を準備していても、なかなか授業が進みません。
人間ですから、そんな日があって当然ですよね。
ましてや小さい子供。
もしくはホルモンバランスが乱れやすい思春期。
その日の心と体の状態によって、自分で気持ちを切り替えることが難しい日があるのも当然です。
今回は、そんな日に、
ご家庭では何をしていただけるか。
先生は何ができるか。
そして何より、
「パソコンの前に座るまで」
をどう考えればよいか、私自身の指導経験をもとに整理してみたいと思います。
「授業を始める」より前に、すでに勝負が始まっている
オンライン授業の場合、
「○時になったらパソコンの前に座ればいい」
と思いがちです。
でも、気持ちが大きく乱れている子にとっては、
「パソコンの前に座る」こと自体が一つのハードル
になっていることがあります。
学校から帰ってきた。
疲れた。
嫌なことがあった。
お腹が空いた。
まだ気持ちが学校から家に戻ってきていない。
思春期ならではのモヤモヤ。
そんな状態で、
「あと10分で家庭教師だから、勉強の準備して!」
と言われても、
頭では分かっていても、気持ちがついてこない。
授業開始時刻だけを見るのではなく、「授業に向かうまでの過程」も大切
なんですよね。
① まずは「今日の状態」を確認する
授業の前に、保護者ができることの一つは、
今日の子どもの状態を把握すること。
例えば、
「今日学校どうだった?」
と聞いて、いろいろ話してくれる日もあれば、
「別に」
で終わる日もあります。
そんなときは、無理に詳しく聞き出さなくてもいいと思います。
「今日は疲れてる?」
「お腹空いてる?」
「ちょっと休みたい?」
くらいの簡単な確認でも十分です。
大切なのは、
「授業があるんだから、早く切り替えて!」
とすぐに勉強モードへ持っていこうとしないこと。
まず、
「今、この子はどんな状態なのか」
を見ることです。
② お腹が空いているなら、まず満たす
意外と大きいのが、
お腹が空いている問題。
学校から帰ってきて、部活までして、そのまま授業。
これでは集中できないことがあります。
もちろん、授業直前に食べすぎれば眠くなることもあるので、家庭ごとに調整が必要です。
でも、
「なんだか機嫌が悪い」
「何を言ってもイライラする」
というとき、
単純にお腹が空いている
という可能性もあります。
「勉強の前に軽く何か食べよう」
というだけで、状態が変わる子もいます。
③ 「あと○分!」ではなく、具体的な行動に分ける
気持ちが乱れているとき、
「もうすぐ授業だから準備して!」
だけでは、何をすればいいのか分からなくなることがあります。
そこで、
行動を小さく分ける。
例えば、
「まず水飲もう」
↓
「トイレ行っておこう」
↓
「テキストと筆箱を持ってこよう」
↓
「パソコンをつけよう」
↓
「先生のところに入ろう」
という具合です。
「授業を受ける」という大きな目標ではなく、
次にすることを一つだけ伝える。
これだけでも動きやすくなることがあります。
④ 「機嫌を直してから授業」ではなく、「機嫌が悪いままでも先生に会える」を目標にする
ここは、とても大切だと思っています。
子どもに、
「機嫌を直してから授業に来てね」
と言ってしまうと、
「機嫌を直さなきゃいけない」
という、さらに一つの課題が増えてしまいます。
でも、
「機嫌が悪くてもいいから、とりあえず先生に会おう」
なら、ハードルが下がります。
「今日は嫌なことがあったんだね。
でも、授業を受けるかどうかを今決めなくていいから、とりあえず先生とつながろう。」
くらいでもいい。
まずは、
「先生のところまで行く」
ことをゴールにします。
⑤ 先生に会ったら、すぐに勉強を始めなくてもいい
そして、ここからは先生の役割です。
画面がつながった瞬間に、
「じゃあ宿題見せて!」
「今日はこの問題からやります!」
と始めるのではなく、
少しだけ「人」として会う時間を作る。
「こんばんは」
「今日どうだった?」
「疲れた?」
「部活あった?」
くらいの会話。
返事をしたくなさそうなら、
無理に話させなくてもいい。
「今日はちょっと疲れてそうだね」
と先生側が状態を受け止めるだけでもいいと思います。
⑥ 「今日は何点くらいの元気?」と聞いてみるのも一つ
言葉で説明するのが難しい子なら、
「今日の元気、10点満点で何点?」
と聞いてみる方法もあります。
「2」
なら、
「そっか、今日は2なんだね。」
それだけ。
「なんで2なの?」
「どうして?」
と必ず掘り下げなくてもいい。
数字にすることで、
自分の状態を先生に伝える
ことが少し楽になる子もいます。
ただし、これも全員に合うわけではありません。
質問されること自体が嫌な日なら、
「今日は先生に話さなくてもいいよ」
としてもいい。
⑦ 無言でも、まずは「つながっている」ことを大切にする
むすっとしていて、
「……」
となっている。
先生が話しかけても返事がない。
そんな日もあります。
ここで、
「返事して」
「ちゃんと話して」
「授業なんだからやろう」
と繰り返すと、さらに険悪になることがあります。
もちろん、ずっと無言では授業が進みません。
でも最初の数分は、
「今は話したくないんだな」
と受け止めて、先生が少し一人で話してみる。
「先生も今日ちょっと疲れたよ~」
「でも、この問題ちょっと面白いから見てみようか」
など、
返事を要求しない会話から始める。
そして、
「答えは言わなくてもいいから、どっちだと思う?」
「指で1か2を出して」
など、
言葉を使わなくても参加できる形
から始める方法もあります。
⑧ 最初の問題は「絶対に解けるもの」にする
気持ちが落ちている日に、
いきなり難しい問題を出すのは避けます。
最初は、
「絶対に分かる」
くらいの問題でいい。
例えば、
「これはbe動詞?一般動詞?」
「この単語、読める?」
「昨日やったこれ、覚えてる?」
など。
正解したら、
「そう、それ!」
「覚えてるじゃん!」
とすぐに返す。
ここで、
「今日はできない日」から「これならできる」へ
少しずつ状態を変えていきます。
⑨ 授業内容を「予定通り全部やる」ことにこだわらない
先生側も、
「今日はこの範囲をやる予定だった」
「宿題も出している」
という計画があります。
でも、その日のコンディションによっては、
予定通り100%進めることが最善とは限りません。
例えば、
普段なら英作文を3問やるところを1問にする。
難しい問題を減らして、復習を多めにする。
読むだけの活動を入れる。
英単語のカードゲームをする。
前にできた問題をもう一度やる。
など、
「学習量を少し下げてでも、授業を成立させる」
という選択肢があります。
⑩ ただし「機嫌が悪ければ何もしなくていい」にもしない
ここはバランスが難しいところです。
子どもの気持ちを尊重することと、
「嫌なことがあれば勉強は全部しなくていい」
を同じにしてしまう必要はありません。
目標は、
「気分が悪くても、少しずつ自分を立て直して、必要なことには向かえるようになる」
こと。
今日は100点の授業ができなくても、
「パソコンの前に座れた」
「先生と挨拶できた」
「最初の問題を1問解けた」
「最後まで授業を受けられた」
なら、それも十分意味のある一歩です。
家庭と先生で「役割」を分ける
こういう日の対応は、
保護者だけでも、先生だけでも難しい
と思います。
それぞれにできることがあります。
🏠 保護者ができること
学校や部活から帰った直後の状態を見る
空腹や疲れを確認する
必要なら少し休ませる
授業準備を一つずつ促す
「早く機嫌を直して」と迫らない
先生に今日の様子を簡単に伝える
例えば、
「今日は部活で嫌なことがあって、かなり機嫌が悪いです」
「今日はお腹が空いているみたいです」
「今は話しかけると怒りそうなので、先生から様子を見てもらえると助かります」
こうした情報があるだけでも、先生は授業の入り方を変えられます。
👩🏫 先生ができること
先生側は、
「いつもの状態ではない」ことを前提にする。
そして、
最初から勉強を詰め込まない
返事を無理に求めない
簡単な問題から始める
選択式など、答えやすい形にする
できたらすぐに認める
必要なら授業内容を軽くする
「今日は来られた」ことを評価する
という対応ができます。
そして何より、
「機嫌を直させる」のは先生の仕事ではない
ということも大切だと思います。
先生ができるのは、
子どもが少しずつ授業に向かえる環境を作ること。
最終的に気持ちを立て直す力を少しずつ身につけていくのは、長い目で見れば子ども自身です。
🌱「自分で機嫌を取る力」は、すぐには身につかない
「嫌なことがあったなら、自分で気持ちを切り替えなさい」
と言われても、すぐにできる子ばかりではありません。
特に、
学校・部活・友達関係・疲労・空腹など、複数の要因が重なっている日は、
本人もどうしてこんなにイライラしているのか、うまく説明できない
ことがあります。
だから、
「自分で機嫌を直しなさい」
ではなく、
「どうしたら少し楽になるかを一緒に探す」
ところから始めてもいい。
そして少しずつ、
「今日は帰ってきたら先に何か食べたほうがいいな」
「嫌なことがあった日は、授業前に10分休もう」
「先生に『今日はちょっと疲れてます』って言えばいい」
というように、
自分の状態に気づいて、自分で対処する方法
を覚えていければいいと思います。
「授業を受ける」までが、すでに一つの学び
オンライン家庭教師では、
「授業時間になったらパソコンの前に座る」
という行動も、一つの大切な力です。
でも、それは単に「親の言うことを聞いて座る」という意味ではありません。
学校から帰ってきて、
疲れていて、
嫌なことがあって、
今日は勉強したくない。
それでも、
少し休む。
↓
準備する。
↓
先生に会う。
↓
気持ちを少しずつ切り替える。
↓
できることから始める。
この一連の経験を積み重ねることで、
将来的には、
「今日は気分が乗らないけど、やることはやろう」
と自分で動けるようになっていくのだと思います。
完璧な機嫌で授業を始めなくてもいい
家庭教師をしていると、
「今日はどうやっても授業にならないな」
と思う日もあります。
そんな日は
家庭では、
「早く機嫌を直しなさい!」
ではなく、
「今はしんどそうだね。まず何をしたら少し楽になりそう?」
と、一緒に次の一歩を考えていただく。
先生は、
「今日はいつも通りじゃなくていいよ。できるところからやろう」
という姿勢で迎える。
この二つがそろうことで、
子どもが自分一人では立て直せない日に、
大人が「立て直すための足場」を作ってあげられるのではないかと思っています。
毎回うまくいくわけではありません。
それでも、
「気分が悪い日=勉強できない日」
にしてしまうのではなく、
「気分が悪い日でも、少しずつ自分を整えて、できることをやってみる」
という経験を積ませれる機会。と思ってできる事を試行錯誤していきたいです。