AI時代に大学に進学する必要なんてない?
2025/3/20
ホリエモンの大学進学不要論
ホリエモンの大学進学不要論の概要はこうである。
- 大学は頭がいい者が行くところである;大学は研究機関であるから、自学できる能力がない者には適さない
- 頭のよくない者は手に職をつけるなどして収入を確保すべきである(一例として建設現場の測量士を紹介している);大学が専門学校よりも優れているというのは誤った信念である
- IT革命以前は、大学が知的リソースの集積地であったため、頭のいい者も大学に進学する必要があった
- IT革命以降は、情報が民主化されたので、頭のいい者は自ら知的グループに参加すればよい(し、現にそうなっている)
→大学進学は不要である
これらは一読すると、極論のように思われるかもしれないが、私は「正しい極論」であると思う。少なくとも自分が大学進学すべきかということを考える上での参照軸にはなるだろう。
ホリエモンによる〈頭がいい:頭がよくない〉という二項対立は、あまりにも素っ気ないから、もう一つ軸を導入してみたい。みなさんは、〈勉強が好き〉だろうか?〈好き〉だと答えた人にお伺いしたい。単にそれが〈先生への好感度〉に依存してはいないか。特に小中学生であれば、この点を区別していない場合が多い(だからこそ教師の振るまいは重要なのではあるが)。それゆえ、さらに次のように問いたい。その勉強とやらを通じて獲得した能力を活かして飯を喰っていきたいと思うか、その覚悟があるか。
ある程度自信のある子供なら、〈YES〉と答えるであろうから、さらに指摘しておきたい。もしあなたが地元の公立小中学校に所属している(た)のなら、その上位層であっても、ホリエモンの言う「頭のいい人」であるかは未知数である。これは義務教育という制度を考えてみれば分かる。公立小中の9年間のカリキュラムは全体の中央値にあわせてレベルが抑えられている(それでも世界的にはレベルは高いが)。したがって、高校以降、自分の適性がなかった場合に、それを努力によって補う覚悟があるかが問われているのである。
ホリエモンの持論は、結論は性急であるにしても、一面の真理を突いているように思われる。「高等教育機会の喪失」とおっしゃる方もあるだろうが、発達の進度を無視して18歳を一律に大学へ放り込むことに私は懐疑的である(大学だけが教育の場ではないし、基礎教育を充実させるなら、BF大学の実態を踏まえれば、中高での前向きな留年制度を拡充すべきだと思う)。あまり社会経験のないままに、学問の必要性を悟る者はごく少数ではないかと思う。
どうして大学に進学してしまうのか?
ではなぜ、ホリエモンが憂うように「頭のよくない者」が大学に大挙するのだろうか。ホリエモンは手に職をつけるのがよいと言うが、多くの頭のよくない者は、自分がどのような仕事をすべきなのかということについて、願望を抱くことはあっても、そもそも何も考えていないのである(ソースは私見であることは注記しておきたい)。彼らの大学に行く理由は、とどのつまり、「親に言われたから」、「周りが行くから」である。美辞麗句を振り回す者でも、数回、質問を繰り返せば、こうした本音が炙り出る(親は何故大学進学を勧めるのかについては、現代のホワイトカラーのリクルートシステムが根本にあるが、ここでは論じきれない)。彼らは「頭がよくない」からこそ大学へ無目的に進んでしまうのである。ただし、こうした受け身な態度を非難するには、10代は若すぎるようにも思う。むしろ、現代のホワイトカラーのリクルートシステムを踏まえれば、大学進学しないという決断にこそ主体性と勇気がいるだろう。
問う者の必要性
私が個別あるいは少人数教育に期待するのは、自分に主体性が欠けていることを自覚させることである。そして、主体性を獲得するということの理路を提示することである。これは容易なことではないが、カテキズムがキーワードになると思っている。
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