“思い出す”ことで脳が変わる──アクティブ・リコールの威力
2025/5/4
「いくら勉強しても、なぜか覚えられない…」
学生時代や資格勉強など、多くの人が一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか?一生懸命頑張っているつもりなのに、思うような成果が出ないと自信をなくしてしまいますよね。
実は、その原因はあなたの能力や才能にあるのではなく、「学び方」にあるのかもしれません。
公教育では、「どう学ぶか」を教えてくれる機会はほとんどありません(個人差があるため)。そのため、多くの人が効果の薄い勉強法を続けてしまい、努力が成果に繋がりにくい状況になっています。
最も多くの人が実践しているであろう「繰り返し教科書を読む」という学習法は、実は最も非効率的だと科学的に明らかになっています。教科書を開いて何度も読んだり、ノートにマーカーを引いたりするだけで安心していませんか? ある大規模な分析によると、その効果は限定的だと結論付けられています。これは、情報を受け取るだけで、記憶に定着させる訓練をしていないためです。
では、どうすれば効率よく、忘れにくい記憶を作ることができるのでしょうか?
勉強法の核心!アクティブ・リコールと間隔反復
最も効果的な勉強法の答えは、「アクティブ・リコール(思い出す練習)」と「間隔反復(分散学習)」にあります。
アクティブ・リコールとは、ただ情報をインプットするのではなく、自分の記憶から情報を引き出すアウトプット中心の学習法です。教科書を閉じて、学んだ内容を思い出して書き出してみたり、頭の中で復唱したり、誰かに説明したりする練習です。ある研究では、繰り返し読んだグループよりも、思い出す練習をしたグループの方が、後日のテストで明らかに高い点数を取ったことが示されています。思い出す練習は負荷が大きく、直後は自信がないと感じる人もいるようですが、結果として最も記憶に残るのはこの方法を実践した人たちだったのです。つまり、勉強はどれだけ読んだかではなく、どれだけ思い出したかで決まるのです。
そして、このアクティブ・リコールを最大化させるのが感覚反復(分散学習)です。時間をおいて繰り返し思い出す練習をすることで、記憶は長期保存へと切り替わります。例えば、50個の英単語を覚えるのに、1日で10回復習するよりも、1日1回を10日間続ける方が記憶に残るのです。復習のタイミングは、1日後、1週間後、1ヶ月後など、間隔を徐々に開けていくのがよいとされています。
このアクティブ・リコールと間隔反復を組み合わせるだけで、記憶力に自信がない人でも知識を定着させることができます。
まとめ
多くの人が「才能がないから…」「記憶力が悪いから…」と諦めてしまいがちですが、実はそれほど努力できていないのです。努力できないのは、練習メニューが軽すぎるからです。勉強できない人の勉強法は、100Mを60秒かけて走るようなもので、そんな負荷で足が速くなるわけがありません。
今回ご紹介した、アクティブ・リコールは、「やってみれば」分かりますが、結構疲れます。疲れるからこそ効果があります。
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