読むとは精読である
2025/5/5
こんにちは!
みなさんは読書好きですか?私は本好き嫌いです。
たくさんの本を読むことも素晴らしいですが、「読んだのにあまり内容を覚えていない…」「なんとなくは分かるけど、正確な意味は掴めていないかも…」と感じた経験はないでしょうか?
流暢性が言語の最終段階だと一般に認知されていると思いますが、これから重要になるのは「精読」です。精読は、単に文章を読むだけでなく、言語能力を深め、さらには批判的で創造的な思考力伸ばす可能性を秘めた、非常にパワフルな学習法です。
今回は精読の効用についてお話しします。
精読とは?
精読とはどのような読書方法でしょうか?
精読(Close Reading)とは、「文章を一文ずつ丁寧に、深く分析しながら読み進めていく学習法」のことです。分からない単語や文法を一つ一つ丁寧に調べ、文章中の主語や動詞、修飾関係などを分析し、文構造を正確に理解することに焦点を当てます。その上で、同じ文章を繰り返し読むことで、理解を深め、知識を定着させていきます。
これに対し、多読(Extensive Reading)は、辞書を使わずに多くの文章を「広く浅く」読むことで、英語を英語のまま理解する力や読むスピードを養う方法です。速読(Speed Reading)は、文章全体を素早く読み、大意を掴むことに特化した方法です。 多読や速読も英語学習には欠かせませんが、実は精読こそが、多読や速読を効果的に行うための土台となります。精読を通じて正確な英文理解力を鍛えなければ、多読や速読は単なる誤読を繰り返すことになりかねません(裏を返せば、既に知っていることを確認するのが多読や速読です)。
精読で得られる基本的な言語能力の効果 精読を丁寧に行うことで、以下のような言語能力の向上が期待できます。
- 正確な語彙力と文法力の習得: 分からない単語や文法を徹底的に調べるため、正確な知識が身につきます。
- 複雑な英文構造の理解: 文の仕組みを分析する練習をすることで、初めて見る複雑な文章でも構造を正確に捉えられるようになります。
- 読解力の向上: 正確に文章を理解する力がつくことで、より高度な内容の文章も読めるようになります。これはライティングやスピーキングの基礎にもなります。
- 読むスピードの向上(最終的に): 精読を通じて語彙、文法、文構造への理解が深まると、文章の展開を予測できるようになり、結果として速く正確に読めるようになります。
特に、資格試験などでリーディングの点数が伸び悩んでいる方は、精読を通じて文章を正確に理解する力をつけることが非常に効果的です。こういった方は、人の話を聞き流すのと同じくらいのノリで、文章を読んでしまっている。両者は全くスタイルの異なる言語形式であると私は思います。
言語能力だけじゃない?
精読のすごいところは、言語能力の向上だけにとどまらない点です。精読戦略が学習者の様々な能力に有意な影響を与える可能性が示唆されています。 研究(※1)によると、精読戦略は被験者の総合的なライフスキルを顕著に向上させました。具体的には、感情やストレスへの対処、共感と自己認識、意思決定と問題解決、創造的思考と批判的思考、コミュニケーションと対人関係のスキルといった、生きる上で重要な様々な能力が向上したことが示されています。 また、新しいことや変化に対する抵抗が低減するという効果も見られました。
なぜ精読がこれらの能力を伸ばすのか?
精読により、テキストを深く分析し、テキスト中の情報の源や正確性を疑問視するスキルを養われるのではないかと考えられています。この批判的思考や探求心が、学習者の「探求者 (questioner)」や「懐疑者 (skeptic)」としての側面を強めることになるのです。既存の知識を鵜呑みにせず、疑問を持ち、深く掘り下げるプロセスは、まさに新しい考えを生み出すための重要な要素と言えるでしょう。
精読を効果的に行うには?
精読の具体的な方法をいくつかご紹介します。
- ざっと読み、分からない部分を特定する: まずは一度読んでみて、意味が曖昧な箇所や分からない単語、文構造にチェックを入れましょう。
- 分からない語彙や文法を徹底的に調べる: 辞書や参考書を使って、単語の意味や文法を調べます。複数の意味がある単語は文脈に合ったものを選びます。
- 文構造を分析し、正確な理解を目指す: 主語、動詞、目的語、修飾語などを特定し、文がどのように構成されているかを分析します。和訳や解説も参考にしながら、なぜそうなるのかを深く考えます。
- 繰り返し読む・音読する: 理解できた文章を繰り返し読んだり、音読したりすることで、知識を定着させ、スムーズに読めるようにします。一度深く理解した文章は、以前とは違って見えるはずです。
さらに理解を深める方法として、以下もおすすめです。
- 特に気になった箇所を深掘りする: 印象に残った一文や段落について、それが何を伝えたいのか、どうしてそう書かれているのかを徹底的に考え、箇条書きや図などで視覚化してみましょう。
- 他者と議論する、または一人ディベートをする: 同じ本を読んだ人と意見交換をすることで、自分にはなかった視点に気づけます。難しければ、著者の意見に賛成・反対の両方の立場で考えてみる「一人ディベート」も効果的です。
- 関連トピックをさらに調べる: 文章中に登場した事柄やテーマについて、他の本や資料で詳しく調べてみましょう。知識が増えることで、元の文章への理解がより深まります。
精読の際は、自分のレベルより少し難しいくらいの文章を選ぶのが効果的です。ただし、難しすぎると挫折につながるので注意が必要です。また、すぐに答えを見たり、和訳に頼りすぎたりしないことも重要です。自分で推測し、考え抜くプロセスが、深い理解と能力向上につながります。
まとめ
精読は、単に語学力を高めるためだけのものではありません。文章を深く読み解くプロセスを通じて、批判的思考力、問題解決能力、探求心、そして変化への対応力といった、現代社会を生き抜く上で不可欠な能力を育む機会となり得ます。 情報が溢れる今だからこそ、表層的な理解に留まらず、物事の本質を見抜く精読の力がより重要になっている(と私は思います)。
今日から精読をあなたの学習に取り入れてみませんか。
言葉の力を最大限に引き出し、あなた自身の可能性をさらに広げていきましょう!
※1
Baki Y. The Impact of Close Reading Strategies on Individual Innovativeness and Life Skills: Preservice Teachers. Behav Sci (Basel). 2024 Sep 14;14(9):816. doi: 10.3390/bs14090816. PMID: 39336031; PMCID: PMC11429445.
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