勉強法マニアは、根性なしである。
2022/8/19
受験業界には一定数の根性論者がいる。
彼らは、陸で船を漕ぐような非効率な勉強法を推進しますが、騙されないように。
・効率のいい勉強法
・受験のヤマハリ
・科学的根拠に基づいた記憶術
これらはぼくのツイートで紹介中です!
とある現代文講師Ⅰまるで一冊の参考書のようなツイート集(2022/8/15)より。引用は青字。
1.ツイッターは流通しやすい御意見の見本市である。
人間は避けがたく「自分にとって都合のいい意見」に付和雷同しがちである。
「#◯◯首相の退陣を求めます」などというツイッターデモが起きやすいのも、この傾向性に由来している。左派にとって◯民党は忌まわしきものであるから、一つの不祥事を理由に退陣すべきであると考えても無理はない。しかし、「#◯◯首相は退陣すべきである」ではないのである。おそらくこれでは刺激が足りないのであろう、民主主義の結果を覆すような「要求」を堂々主張するのでなければ、大衆を扇動するに心もとないのであろう。◯民党に違和感や若干の嫌悪感をもっている人を焚きつけるには、「べき論」では弱い、「堂々たる要求」でなければならないのである。だが、燃え広がった意見が正しいとは限らない。
以上は政治活動としてのSNS利用であるが、受験業界においても同様のマーケティングが行われている。
2.軽薄な学習コンサル―合理主義者の誘惑
だいたいの図式はこうである。
「従来は〜だったが、〜は非合理(非科学的)である。正しいのは、私の言う…である。」
「〜」には評判の悪い旧態依然とした勉強法が挙げられる。
「…」には合理性に訴えかけるような文句が謳われる。
「明白な非合理」はキャッチーで、読み手の賛同を得やすい。しかし、注意すべきは「〜」という【非合理な勉強法】が、今現在、自分自身の前に立ちはだかっているのか、ということである。安易に焚き付けられないよう、本当にそういった勉強法を押し付ける教師に自分が囲まれているのか再考すべきである。ともすれば人間は自分にとって都合の悪いことを、「不必要・非合理」と烙印を押して遠ざけがちであるからである。
【効率の良い勉強】という言葉は学習者を惑わせる。
3.単細胞な根性論者
ただし、いつの時代にも旧態依然とした人間は存在する。「とにかく〜しなさい」と言って生徒の話を聞かない単細胞な教師も探せば存在するかもしれない。私は単細胞生物を擁護するつもりはないが、こういった教師は「根は真面目で良い人」ではないかと思っている。「とにかく生徒の成績をあげたい!」と考えているからである。
しかし根は良いのだが、幹や枝葉が残念で、成績を上げるための適切な方法を組み立てることができないのである。こうした教師は確かに権威的だが、自発性や合理性など皆無といってよい小さな子どもにとっては、有り難い側面もあるのかもしれない。
4.或る根性論者の信仰告白―情念は合理性の源泉である
軽薄な合理主義者も単細胞な根性論者も、バランスを失している。
学習を成功させて志望校に合格するには、根性・努力と合理・方法との両方が必要なのである。最近流通している意見を通覧するに、どうも学習指導が「合理・方法」に偏りすぎているきらいがある。
小綺麗に組み上げられた方法論を拝んだところで、それを実行する意志がなければ、絵に描いた餅である。大抵の学生は、「これこれこういう理由があるから、自分は勉強する!」といった自分を突き動かす情念(信念)をもっていない。だから、勉強できないのである(翻って、或る情念に従って勉強以外のことに打ち込むとしたら、それは素晴らしいことである)。
自分が今このようにして生きている、その根本的理由、少し大袈裟だが、これを自覚することなしには、方法論も空回りするだろう。世に言う「勉強法マニア」である。自らの情念を自覚すれば、何をどう努力すべきかという方法論は後から付いてくる(はずである)。
例えば、「単語の勉強法」について考えてみよう。
ここに「或る理由があって、何が何でも◯◯大学に合格したい人」がいるとしよう。
その人は単語の暗記を始めたが、どうも覚えられない。しかし、ただ眺めているから覚えられないのだと悟って、書いて覚えることにした。しかし、それでも覚えられないので、ネットで検索して、書かずに音読しながら覚えるようにすると、見違えるように暗記できるようになった。
この人は何故うまくいったのだろう。それは方法が正しかったからではない。信念を全うしようとして、トライ・アンド・エラーを繰り返したからである。試行錯誤をやめない根性があったからである。
他人の勉強法は参考程度に留めておくべき理由は此処にある。重要なのは、方法ではない。方法を生み出す「或る情念」なのである。
「勉強法マニア」は実行する勇気のない「根性なし」なのである。
5.教師はどう振る舞うべきか―長期的なカウンセリングマインド
「根性なし」に対して、教師は人間としての根っこを育てるよう支援しなければならない。教師は、学生のブライベートな実存に切り込んで、それと対決しなければならない。人間のコンプレックスが暴露される現場に立ち会わなければならない。「しんどい」「だるい」「きらい」「いや」などなど。
根っこから育てるのであるから、すぐに花開くわけではない。もしかしたら、枯れてしまうかもしれない。そういった不確実性の中で、来たるべき開花を期待して、人間の世話をし続けることが教師の役目なのかもしれない。
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