過去問演習の使い方
本日もよろしくお願いいたします。
志望校が大体固まった受験生にとって行うべきことは過去問です。過去問を解くことで、相手(受験校)の傾向・出題形式などをつかむことはできます。しかし、その中に潜む罠に気付かなければ意味がありません。
今日はそんな話をしていきたいと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
※この記事は2020年8月に公式noteで記事にしたものをマナリンク受講生向けに再編集しております。
※この記事は大学入試向けに書いたものですが、高校入試・中学入試にも通ずるところがあります。
■過去問の中にある合格最低点
赤本などの過去問をやっていくときに気になることがあると思います。それはそのときの平均点や合格最低点です。学校によっては、その年の平均点や合格最低点が書かれているものがあります(学校のパンフレットにある場合も)。
しかし、この合格最低点については騙されないように気を付けてください。指導者の中には、まずは合格最低点を目標に点数を取ること、ということを言われると思います。それはそれで間違いではありません。僕も最初のうちはそういって目標設定を行います。
しかし、大事なのはこのあとです。あくまでもその年の合格最低点がクリアーできたからといって、自分が受ける年の合格最低点が合致するとは限らないからです。これは難易度によって毎年変動します。
難易度は6割設定を行う場合が多いのですが、例えば、300点満点だったとした場合、標準設定が6割なので180点が合格ラインと考えたら、それよりも10点以上上回ってたらその年の問題は易しくなり、逆に下回ってたらその年の問題は難しいことがわかります。
本当に見てほしいのは、合格最低点ではなく、合格者平均点を見てほしいのです(ただし、これについては公表してるところとそうでないところとありますので、過去3年分の合格最低点+10点くらいを目安にするといいでしょう)。
■近年は全体で6割とっても合格はしない!
この話を聞いて、驚く人はいます。予備校バブル時代でよく全体で6割とれば合格する、といわれてたのですが、これは近年では少し通用しなくなってます。中学入試や高校入試においてはまだ通用するところはあります(といっても、上位校や難関校といわれるところはあまり通用しません)。
大学入試では最近は6割でも合格しません。その原因のひとつとしては、早慶レベルの難化にあると言われてます。難化の原因としては、大学側が合格定員を減少させたことです。それを行った理由は、適切な合格定員にしなければ、大学の支援金が国からカットされる恐れがあるからです。
※早慶レベル:早稲田・慶応・上智・関西・関西学院・同志社・立命館レベルの難関大学を指す。
その結果、早慶や関関同立といった難関大学がそれに従い、合格定員を削減したことで、偏差値的にその下であるGMARCHや産近甲龍などといった上位校や中堅校に受験生が流れたのです(合格安全圏の大学に引き下げた)。問題が難化したわけではなく、合格者の厳選により、合格最低点が引き上げられたのでは、と考えられます。
その結果、その改革を行った初年度でGMARCHなどでは本来なら合格してた点数をとってたのに不合格になってしまいました。それを受け、翌年以降から安全思考を行う受験生が増えました(これについては加えて、現役生の現役合格への拘りも起因していると思います)。そうなると今度は中堅校にもその波が来てしまいます。
※近畿大学は受験者が2020年で約14.5万人で日本一の受験者数です(総志願者数は18.6万人です)。学部により異なりますが、倍率は3~10倍になります。
実際、早稲田の2018年の合格最低点は学部によって多少異なりますが、7割を超えなければ合格しなくなってます。しかし、その7割でさえ合格最低点です。ということは、しっかりと稼げるところで稼がないと現在の早稲田などの難関校・上位校は合格しない、ということがわかります。
中央大学の2019年では、合格最低点は6割前後から6.5割くらいが合格最低基準となっています。ですが、2017年から比べるとやや落ち着いた結果にはなっていると思います。もちろん、学部、科目等によってこれらは変わりますので、参考程度までに。
詳しくは各大学の合格最低点で検索してください。
■その上での過去問対策
まずはこのような現状を知った上でやるべき過去問対策とは何か?特に選択科目については確実に8割以上を取れるようにやってください。必修科目では7割から8割を目標にしてください(ここについては合格最低点を気にする必要はあまりないと思います)。
え?選択科目8割以上ですか?といわれますが、これについては大学ごとに基準は異なりますが、選択科目については選択科目の難度によって平均点で差がつきすぎないように、得点調整が行われます。それを加味して8割以上を取る必要があります。同志社で日本史は9割は欲しい、ともいわれてます(以前お世話になった予備校でこの事を教えてもらいました)が、こういうことなんです。なお、中学入試では3科目入試や4科目入試の選択で不利にならないように配慮もされているそうですが、中には4科目入試のほうが有利になる場合もあります。
そして、自分が受ける日程や学部の過去問を行うことに加え、自分が受ける学部や別日程の過去問(同じ大学のもの)もしておくといいでしょう。
過去問を行う時期はよく、内容がまとまった時に行う、のがいいといわれてますが、最初は出題の形式・パターンを掴むのが先です。その時は時間制限も合格最低点なども気にする必要はありません。それらを気にするのは、11月以降で本格的に過去問演習を始めるときです。人によって過去問演習を行う時期は様々です。そこを意識しましょう。
夏場に過去問を行う、という人もいますが、この時に行う必要があるのは、問題を解いて点数を確認する、ということではなく、入試問題の形式とパターンなどを知ることです。そこからどのような学習を進めればいいか、という指針を立てることです。
つまり、「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」なのです。
■正誤問題の解き方や考え方も身に付ける
ここで、もう一つ。正誤問題の解き方や形式別問題の考え方も一緒に身に付けておきましょう。これができていなかったら、たとえ内容をまとめたからといっても、点数に結び付かないことが多いのです。正誤問題が解けない理由についてはいろいろありますが、主観を入れてしまうと正しく解くことはできません。
問題を解くアプローチ法を身に付けてください。そして、正誤問題を解くときに誤文を正文に直すトレーニングをし、周辺知識として加えておくことも忘れないでください。近年は中学入試や高校入試でも大学入試のような罠の作り方をしているところもあります。そのため、正しい知識の定着に加え、関連知識や背景知識の獲得も忘れないようにしましょう。これらの知識は短文記述問題や論述問題を解くうえでも重要な位置づけになります。しっかりと学習しましょう。
今回は、大学受験用の話を中心にしましたが、中学入試・高校入試でも同様のことが言えますので、過去問演習なども正しく行ってください。
残り4か月ほどです。この時期は非常に大変になり、不調に陥ることもあります。そういうときこそ原点に立ち返り、正しい学習習慣を身につけるようにしましょう。
現在苦手な単元があれば、そこは時間をかけてしっかりと復習をしてください。