「やる気のない生徒」との関わり
2025/7/18
やる気のない生徒に対して、私たちはどのように関わるべきなのでしょうか。その答えのひとつは、「生徒と同じ目線に立つこと」だと私は考えます。
やる気があり、比較的成績も良好な生徒に対しては、指導は比較的容易です。彼らには明確な課題と目標がありますので、弱点を見つけ、それに対応する宿題を与えるだけで、自ら真剣に取り組んでくれます。その結果として、自然に成績も向上していきます。
このような生徒が多く集まっている塾は、当然ながら「指導力が高い」という印象を持たれます。しかし実際には、優秀な生徒を集める「集客力」そのものが、合格実績や評判の大きな要因となっていることも見逃せません。
一方で、宿題をやってこなかったり、学習習慣が身についていなかったりする生徒への対応は、そう簡単ではありません。彼らは学習に対して積極的でないため、いくら質の高い授業を提供したとしても、それだけでは成果にはつながりにくいのが現実です。
このような場合、多くの講師は「学力向上」から「退塾の防止」へと目標を切り替え、仲良くすることを優先する「関係性重視」の対応に走りがちです。しかし、私はそうした形であきらめることはしません。「どうすれば生徒が前に進めるのか」を、常に考えるようにしています。
私の考えでは、「勉強しない」という行動は、単なる怠惰ではなく、「心の不調」によるものです。精神的な不調は、何かに取り組むためのエネルギーそのものを奪ってしまいます。具体的には、部活動による疲労、人間関係(友人・家族)でのストレスなどが原因として挙げられます。このような状態の生徒は、何をやっても中途半端になり、自分自身に対しても達成感を持てなくなっていきます。
では、どうすればそのような生徒が回復し、再び学習に向き合えるようになるのでしょうか。私が重視しているのは、「発散」と「有価値観(=自分は役に立つ存在だという感覚)」を取り戻すことです。
こうした生徒たちは、自分の話をしっかりと聞いてもらった経験が少なく、心の中が混乱しています。そのため、まずは「指導すること」を一時的に停止し、本人の発言をすべて受け入れ、肯定する姿勢を取ります。そうすることで、生徒は少しずつ自分の考えを整理し、「今の自分でも大丈夫だ」と受け入れるようになります。この段階を経て初めて、生徒は主体的に勉強に向き合う準備が整ってくるのです。
学習の根本には、常に「自信」が必要です。「生徒に合わせていたら学習は進まない」という意見もありますが、私はそうは思いません。すでに心が限界に達している生徒に対して、無理に勉強を押しつけるようなやり方は、かえって心を壊すリスクを伴います。
実際、不健康なかたちで成績だけを追い求めた生徒が、将来的にうつ病や心の問題を抱えるケースもあります。私はそのような結果を避けるためにも、生徒が健康な心を保ちつつ、「ある程度勉強が好き」になり、自分の好きなことにも前向きに取り組める状態を目指して、日々の指導にあたっています。
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