【中学受験】 6〜7月は「見えない努力の季節」 ~不安と向き合う時間の使い方~

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2025/6/15

中学受験に挑む小学6年生にとって、6月から7月にかけての時期は「勝負の夏」の入り口となる時期です。

しかしこの時期、多くの受験生や保護者が焦りや不安を感じるのも事実です。今回は、6月から7月にかけて、特に多くのご家庭で見られるお悩みと、その具体的な対処法について考えてみたいと思います。


◆ 悩み1:模試の結果が思うように出ない

:「夏前の模試で偏差値が思うように伸びないし、志望校の判定が良くありません。このままで間に合うのか不安です」といった不安を感じることもあるのではないかと思います。

以前のブログ記事(模試と「五喜一憂」)にもお書きしましたが、模試の偏差値や判定はあくまでも「目安」であり、戦略を決める「材料」にすぎません。模試で本当に大切なのは「結果」より「中身」です。模試での間違いを「宝物」と感じてそれとどれだけ真摯に向き合えるかで今後の学力の伸びが変わってきます。


【お悩み解決のポイント】

:模試は「結果を見る」のではなく、「課題を発見するツール」として使いましょう。


① 全体の正答率が高い問題で、間違えている場合には優先的に見直す

解き直しノートを作って、「次に同じ問題が出たら解ける」状態を作っておきましょう。


② 志望校の過去問に一度触れてみる

意外に、模試の問題と志望校の問題には差があるかもしれません。特に、中堅校の問題には模試よりも易しい問題が出題されていることもしばしば。模試との出題傾向の違いに気づくことで、気持ちが切り替わりますし、時期的にも志望校の出題傾向を意識し始めて良い時期です。


③ 点数よりも「解き方」や「時間配分」の反省を重視する

「どの問題から解くか」、「時間配分をどうするか」、「解くべき問題がしっかり解けているか」などの試験テクニックについて、再度確認してみましょう。こうした技術の向上が秋以降の成績の伸びにつながるかもしれません。「試験慣れ」というのは、ただ試験の回数を受ければ良いというわけではありません。どれだけ意識的に試験と向き合うかで「慣れ」の深度が変わってきます。


④ 夏の総復習の計画と準備を立てる

夏休みはこれまでの復習に向けてまとまった時間をとれる大きなチャンスです。これまでに受けた模試や組み分けテストなどの中から、自分にとって特に課題としたいテーマや問題を見定めて、夏休みに計画的に解き直しを進める準備を整えておくのも良いでしょう。「前半の基本問題を確実に解きたい」、「苦手単元に絞って模試の問題を解きなおす」、「後半の難問を中心にチャレンジする」など、それぞれの学力や状況に合わせた目的を定めると良いかと思います。また、解き直しをして「以前よりも解けるようになっていた」、「点数が上がった」ということを確認できれば、それが自信につながるかもしれません。


◆   悩み2:勉強の量が多くて、子どもが疲れている

:塾、宿題、自宅学習…毎日が勉強尽くしで、精神的にも体力的にも受験生には疲れが見え始める頃です。また、梅雨の時期から夏場にかけては気候的にも体調を崩しやすい時期。集中して学習に臨めるこの時期に、体調を崩してしまってはもったいないですよね。


【お悩み解決のポイント】

① 「何をやらないか」を決める勇気を持つ

あれもこれもとすべてを完璧にやるのではなく、場合によっては「捨てる単元」や「後回しにする単元」を明確にすることも必要です。日々の学習の中で「これは外せない」学習は何かを整理してみましょう。志望校の出題傾向などを意識すると、重視すべき単元が何かが見えてきます。


② 曜日ごとの集中ローテーションを作る

学習の基本は、「内容を理解・暗記する→解く→答え合わせと見直し→解き直し」です。事前に何を学習するか決めていないと、学習の切り替えで集中が途切れたり、気持ちの切り替えに時間がかかったりして、時間のロスにつながるとともに精神的にも疲弊します。曜日ごとに「どの教科を集中的に学習するか」や「演習と見直しのバランスをどうするか」など、おおまかなローテーションを作っておくと良いでしょう。


③ 学習内容の見直し

生徒一人一人に合わせた完全個別指導の場合には、先生がきちんと対応してくれている限りそこまでの心配はありませんが、集団塾などの場合には、課題の設定や授業の進度などが本当にお子様に合っているか考える必要があるかもしれません。何も塾を変更したりする必要まではありませんが、お子様の学力や状況を考えて現状の学習量や生活リズムが適切なのかをチェックすることは、考えても良いかと思います。見直しをする場合、極端に学習量を減らすのではなく、上記で示した通り、質と量のバランスを再考しましょう。


(例)

これまでは膨大な量の基礎計算を毎日して疲弊していたが、計算問題の質とレベルを上げて問題量は絞り、制限時間を決め、見直しも含めて〇〇分で終えることができるようにした。


④ 自由時間やリフレッシュの時間を用意する

「受験生に夏休みはない!」というのは簡単ですが、大人が仕事をするにも気分転換やリフレッシュは必要です。自然に触れに大きな公園にいくとか、美味しいものを食べにいくとか、夏らしいちょっとした思い出作りが1つあるだけでも受験生の心は元気を取り戻すものです。遊びに夢中になって勉強がおろそかにならない程度には、自由時間やリフレッシュの時間を用意しても良いのではないでしょうか。その際、はしゃぎすぎてケガや体調を崩すことだけはないように注意しましょう。


◆   悩み3:苦手分野が克服できず、正直焦ります

:「理科の電気の単元がいつまでも理解できていない」、「算数の図形が苦手なまま」など苦手単元がはっきりしてきて、固定化しやすい時期でもあります。それをそばでご覧になっている保護者の方も正直焦りを感じる時期かもしれません。


【お悩み解決のポイント】

① 親が焦っても仕方がない

お子様が苦手単元をなかなか克服できないと、それをそばで一番見ている保護者の方はどうしても焦りを感じてしまいがちです。ですが、焦りは逆効果になることもしばしば。親の焦りを敏感に感じる受験生は「ぼくはこれが苦手なんだ」、「わたしがこれをできないと、またがっかりさせちゃうかも」と委縮して、苦手単元に取り組むこと自体を避けたがるようになるかもしれません。少なくとも、「焦りが学力向上につながることはない」ということをあらためて確認して、「何をすれば学力向上につながるか」の方に意識を向けるようにしましょう。


② 苦手単元についてのポイントノート作成や反復練習

苦手単元が苦手になるにはそれなりの理由があります。公式を覚えられない、計算力不足、解法を理解できていないなど、「ここができれば、ワンステップ前に進めるはず」というポイントをおさえて、それらのポイントをまとめて後で見直せるノート作りや、ポイントを活用して解く反復練習を日々の学習の中に盛り込んでみましょう。


例:電気回路の基礎知識を確認した後で、基礎問題を毎日5問だけ解く習慣をつける、など


③ 克服すべき苦手単元をしぼる

夏の間の勉強では、あれもこれもと手をつけて、結局何も残らなかったというのが一番怖いことです。一つの単元でも確実にできるものが増えれば、それは後で大きな武器となって帰ってきます。欲張っていろいろなところに手を付けるのではなく、最初は「確実にこれだけは」というものや「これは集中して学習すればできるようになる」と思える単元に的を絞って学習を進めるようにし、夏の後半に余裕があれば「追加でもう一つ」くらいの意識にしておきましょう。メンタル的にも、「あれもこれもそれもできなかった!」と思うより、「あれとこれはできるようになったし、もしかしたらこれも追加でできるかも!」と思えた方が、はるかに良いと思います。


④ わからない問題は早めに第三者に聞く

:受験生自身や保護者の方で手に負えない場合には、塾の先生や家庭教師の先生などに相談して質問するなど、早めの対応をしましょう。先生方も夏の終わりに急に言われても「もっと早く言ってくれれば夏の時間を使ってこういう対策がたてられたのに」となってしまうかもしれません。先を見越して対処しておくことも時には必要です。


◆   悩み4:モチベーションが下がってきた

:夏の時期は中だるみが出やすい時期でもあります。特に「周りはできているのに自分はどうして…」、「クラスがなかなか上がらない…」と自信をなくしている受験生も出てくることかと思います。ところが、これを気にしすぎてしまうと、「一緒のクラスだったあの子より下のクラスになってやる気がなくなっちゃったな…」、「どうせやってもできないよ…」など、モチベーションを下げる大きな原因につながってしまいます。


【お悩み解決のポイント】

① 他の人と比べない

「受験は競争」と言われがちですが、実は競争ではありません。毎年の各校の合格ラインは大きく変わりません。よく、「倍率」というものが注目されがちですが、より肝心なのは合格最低点、合格最低ラインです。このラインを越えれば、それより100点多くても1点多くても合格できるので、実は競争というよりは棒高跳びに似ています。周りが自分よりできるからとか、クラスが上がらないからということを気に病むのではなく、「自分が行きたいところに行くには、これをできるようにすれば行ける」という目標を持たせてあげることが大切です。


② 「できること」に注目して可視化し、達成感を持つ

日々の学習の中に、あえて易しめの問題をいくつか入れることで「今日もこれだけできた!」という自己肯定感を高めてあげたり、1週間の学習を通して「今週中にこの理科の単元をマスター」するなどの短期目標を定めるなど、「これだけのものができるようになったね!」ということをできる限り可視化して、自信につなげていきましょう。


③ 子どものことを「丸ごと」認める

どうしても受験の時期は「成績」や「できるかできないか」に注目して評価してしまいがちですが、子どもが求めているのは、保護者の方からの全面的な承認です。時には、「自分で起きられるなんてすごい」、「あなたは優しいっていうだけで素敵なのよ」、「いわれる前に答え合わせができていて偉いね」など、子どもの行動や性格など、勉強以外のことも含めて「丸ごと認めているよ」ということを伝える機会を持ちましょう。「誰かが自分を認めてくれている」という気持ちを持てることは大きな心の支えになります。また、それは少しづつ伝えていかないと、忘れがちになったり、見失ってしまうことがあるものです。保護者の方は子どもにとって最初から最後まで寄り添う最大の応援団です。保護者だからこそ、子どもに伝えられることを、ぜひ伝えてあげてください。


◆   おわりに:6月~7月は「下積み」の時期、ここで焦らないことが何より大事

:6月~7月は、真剣に勉強に取り組み始める受験生の数も増えてくるため、相対的に模試の結果も伸びにくく、学習の手応えも薄くなりがちな「見えない努力の時期」です。ですが、この時期にへこたれることなく、粘り強く基礎を積み上げた子が、秋以降、場合によっては冬の直前の時期に急成長することがよくあります。

ぜひ、焦らずに「一歩ずつ確実に」、「できることを着実に」を意識して学習を進めていきましょう。目的意識を持った着実な一歩は、必ず後になって大きな力と支えになってくれるはずです!


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